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OpenAI Blog

1Password、OpenAI「Codex」導入で開発生産性21%向上——障害調査時間を9割削減しセキュリティも両立

要点

  • 1Passwordがソフトウェア開発ライフサイクルの全工程にOpenAIのAIツール「Codex」を導入し、開発生産性が20.9%向上した。

  • プルリクエストの処理時間中央値が10.9%短縮したほか、10以上のサービスにまたがる障害調査時間が約2時間から最速5分へと大幅削減された。

  • 認証情報の平文をAIに入力しない「シークレット参照」を採用し、同社が掲げるゼロ知識アーキテクチャを維持したまま開発を高速化した。

  • フロントエンドデザインシステム「Knox」などを社内で構築し、今後はマーケティングや財務など非エンジニア層へも活用を広げる方針を明らかにした。

  • 米OpenAIは2026年9月8日、パスワード管理サービスなどを提供する米1PasswordにおけるAI支援ツール「Codex」の導入成果を公式ブログで公開した。1Passwordは企画から本番リリースに至るソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の全工程にCodexを組み込み、主要な開発者層における生産性を20.9%向上させたという。厳格なセキュリティ基準を維持しながら開発期間を圧縮し、機能開発の効率化と社内イノベーションを進めていることが明らかになった。

開発プロセス全体への適用と「ワンショット」開発

1Passwordでは、アイデアの具体化から本番実装までの期間を短縮するためにCodexを活用している。従来の開発手法では、プロジェクトを複数のスプリント(短期間の開発サイクル単位)に分割し、それぞれのスクラムチームに割り振るのが通例だった。しかし同社CTO(最高技術責任者)のナンシー・ワン(Nancy Wang)氏によると、Codexの導入によって、ユーザーストーリーや求める体験指示を与えるだけで、アイデアからプロトタイプ、本番動作する機能までを一気に構築する「ワンショット(One-shotting)」が可能になったという。

Codexはソフトウェア開発ライフサイクルの各段階に組み込まれている。

  • 企画・技術設計: 要望を仕様書や依存関係のチェック項目、作業タスクへと自動分解する。
  • 実装: CLI(コマンドライン操作画面)を通じて不慣れなRustやTypeScriptのコード作成を支援し、並列ワークツリーで複数タスクを同時進行させる。
  • コードレビュー: 人間が確認する前にプルリクエスト(コード変更のレビューと統合を依頼する仕組み)を精査し、論理エラーやコンテキストの不足を検出する。
  • テスト・リリース: 受入基準の検証や自動テストを他の作業と並行して実行する。
  • 障害調査: インシデント管理システムやテレメトリ、ソースコード管理、フィーチャーフラグなど複数システムから横断的に証拠を収集する。

この運用体制から複数の新機能が生まれており、社内のUI作成を支援するエージェント型フロントエンドデザインシステム「Knox」のほか、社内向けAI SRE(システムの安定性と信頼性を維持・向上させる運用手法)エージェントやAI支出管理ツールなどが実用化されている。

測定された生産性向上と障害調査時間の大幅削減

1Passwordが測定したデータによると、Codexを継続利用するエンジニア層において20.9%の生産性向上が確認され、プルリクエストの処理時間(中央値)は10.9%短縮した。普段扱わない技術スタックを担当したエンジニアが通常3日要していたコードマージを1日に短縮できた事例や、ベータ版の公開期限が迫るなかで通常2件程度と見込まれていた重要チケットを4件完了させた事例なども報告されている。

本番環境のトラブル対応においても顕著な効果が現れている。10個以上のマイクロサービスにまたがる複雑な不具合の調査では、従来約2時間かかっていた調査時間が5〜20分へと短縮され、約90%の時間削減を記録した。

同社の試算モデルによると、50名のアクティブ開発者が利用した場合、年間で約78万4000ドル(約783,750ドル)相当のエンジニアリング能力が創出され、投資対効果(ROI)は553%に達するという。さらに一貫した利用者が100名に拡大した場合には、年間創出価値が約310万ドルに達すると試算している。

ゼロ知識アーキテクチャを損なわないセキュリティ設計

セキュリティ製品を手がける1Passwordにとって、安全性の確保はツール導入における必須要件と位置づけられている。同社は、サービス提供者側でも顧客データの中身を閲覧・復号できない「ゼロ知識アーキテクチャ」を設計原則として維持している。

この原則をCodexの運用でも徹底するため、リポジトリ内にはAPIキーやパスワードなどの平文認証情報を直接保持せず、「シークレット参照」と呼ばれる識別子のみを配置している。Codexが承認された社内ツールを呼び出す際に、実行ポイントで認証情報を動的に解決・注入する仕組みを採用した。これにより、平文の機密データがAIモデルのコンテキスト(入力情報)に一切読み込まれない設計を実現している。さらに、社内のセキュリティポリシーを再利用可能な「AppSecスキル」としてCodexに組み込み、開発フロー全体にセキュリティ基準を浸透させている。

非エンジニア層への展開と「開発の民主化」

1Passwordでは現在、エンジニアリング部門での成果を受け、財務やマーケティングといった他部門へのツール展開を進めている。チャット形式のインターフェースを通じて、非技術部門の担当者自身が業務に必要なツールや機能を構築する動きが広がりつつあるという。

ナンシー・ワンCTOは、現在の状況について「エンジニアがAI支援を受ける第1の波」から「あらゆる職種がビルダー(作り手)になる第2の波」へと移行していると述べている。プロダクトマネージャー(PM)が製品をリリースし、デザイナーがフロントエンドコードを出荷し始めるなど、今後12か月で従来コードを書かなかった層がAIを活用してソフトウェア構築に携わる「開発の民主化」が企業全体で進むとの見通しを示した。

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