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ABEJA Tech Blog

ABEJA、Physical AI開発における産業用ネットワーク「フィールドバス」の基本と重要性を解説

要点

  • ABEJAの共通基盤グループに所属する内田氏が、Physical AI(物理的な世界で動作するAI)の実装に不可欠な産業用ネットワーク「フィールドバス」の解説記事を公開した。
  • フィールドバスは単なるデータ送受信の仕組みではなく、ロボットや製造ラインにおけるリアルタイムな分散制御のための通信基盤として設計されている。
  • 制御通信では、決められた周期での通信完了、遅延のばらつき(ジッタ)、異常時の安全な停止といった要素が、実機の動作に直接影響を与える。
  • Web系通信と異なり、フィールドバスでは物理層やデータリンク層といった低レイヤーの性質(配線、終端、ノイズ、IDによる優先度など)が制御品質に直結する。

リード文

株式会社ABEJAの共通基盤グループに所属する内田氏は2026年7月15日、同社のテックブログにおいて、Physical AI(物理的な世界で動作するAI)の実装で効果を発揮する産業用ネットワーク「フィールドバス」の基本的な考え方を説明する解説記事を公開した。記事では、オープンソースのヒューマノイドロボットアームである「OpenArm」における「CAN FD」(産業機器向けの高速な通信規格)を用いたモータ制御の事例などを視野に入れつつ、制御通信の仕様を見極める際のポイントを解説している。

本文

Physical AI開発で重要となる「フィールドバス」とは

内田氏によると、Physical AIの開発現場ではデータセットやAIモデル自体に注目が集まりやすいが、実機を安定して制御する上で「フィールドバス」を含む産業用ネットワークの知識が非常に重要になるという。

フィールドバスとは、PLC(工場の設備などを自動制御するための機器)やモーションコントローラ(モータの動作を制御する専用装置)といった上位の制御装置と、サーボドライブ、センサ、アクチュエータ(電気信号を物理的な動作に変換する駆動装置)などの現場機器を相互に接続するためのリアルタイムな分散制御用の通信基盤である。

工場の製造ラインやロボットなどのシステムでは、多数の機器が協調して動作する必要がある。例えばロボットアームの場合、複数のモータやセンサを制御装置に接続し、モータの状態やセンサ値の取得、制御演算、次の指令値の送信といった一連の処理を一定周期で繰り返す「閉ループ制御」(出力を入力側にフィードバックして目標値に近づける制御方式)を行う。この閉ループ制御を安定して動作させるためには、単にデータが届くかどうかだけでなく、定められた周期内に確実に届くか、遅延やそのばらつきである「ジッタ」が許容範囲に収まるか、そして複数の装置が必要な精度で同期して動くかといった点が極めて重要になる。

そのため、フィールドバスの設計や仕様選定においては、一般的なWeb系の通信とは異なり、主に以下の5つのポイントが関心の対象になると説明されている。

  1. リアルタイム性:決められた周期内に確実に通信を完了できるか、およびジッタを評価できるか
  2. 同期機構:複数の機器を同一の時間基準に基づいて動作させられるか
  3. 優先度制御:制御ループに影響する重要なデータを優先して通信できるか
  4. 物理層の安定性:配線、終端、ノイズ対策、通信距離、トポロジ(接続形態)が適切に設計されているか
  5. 異常時の振る舞い:通信断や遅延を検知した際に、システムを安全側に停止(フェイルセーフ)できるか

また、多くの産業用ネットワークでは、通信を「周期的な通信」と「非周期的な通信」に明確に切り分けて設計する。周期的な通信は、モータへの指令値やセンサ値、I/O状態など、制御ループで毎周期必要となる「プロセスデータ」のやり取りに使用される。一方、非周期的な通信は、機器の設定変更、パラメータ調整、診断情報の読み出し、アラーム通知といった、特定のタイミングでのみ発生するデータに用いられる。異なる産業用ネットワークを比較・理解する上では、これら2つの通信をどのように分けて扱うかという視点が共通して重要になると指摘している。

Web系通信とフィールドバスにおける設計対象の違い

記事では、Web系のエンジニアにとって馴染み深いHTTP、gRPC、MQTT、WebSocketなどの通信プロトコルと、フィールドバスの特徴が比較されている。

Web系通信では、TCP/IPなどのプロトコルスタックをベースとし、主にアプリケーション層(L7)からトランスポート層(L4)付近が設計の対象となる。EthernetやWi-Fiなどの物理層(L1)やデータリンク層(L2)は抽象化されているため、アプリケーションの開発者がこれらを意識することは少ない。

これに対して、フィールドバスでは物理層(L1)やデータリンク層(L2)の性質が、実機の制御品質に直接的な影響を与える。例えば、自動車や産業機器で広く使われている通信規格「CAN」では、その上位で「CANopen」などのプロトコルや装置独自のプロトコルが動作するが、実際の設計においては「CAN ID」(データの種類や優先度を識別するコード)、ビットレート、フレーム長、バス負荷、さらには物理的な配線や終端抵抗、ノイズ耐性などを具体的に意識しなければならない。CANでは、送信されるCAN IDの数値が小さいほどバス上で高い優先度を持つ仕様となっており、低レイヤーの仕組みがそのまま通信の優先制御に直結している。

制御通信の仕様を見極めるアプローチ

内田氏は、実機制御の領域に初めて取り組むAIエンジニアやWeb系エンジニアに向けて、産業用ネットワークにはCANのほか、EtherCAT、PROFINET、EtherNet/IP、Modbusといった様々な代表的規格が存在するものの、通信周期や優先度、配線、終端、ノイズといった要素が実機の動作に直接影響を与えるという共通の本質があるとまとめている。

記事は、こうした異なるネットワーク規格を比較する際にも、制御に必要な周期通信と、設定や診断に用いる非周期通信の切り分けという視点を持つことが、実機制御における通信仕様を理解するための有効な入口になると結んでいる。

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