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ABEJA Tech Blog

ABEJA、追加学習なしで動くロボットアーム制御を実証 高速判定AI「openjev」を活用

要点

  • ABEJAが、VLMと高速判定モデル「openjev」を組み合わせ、追加学習やマーカーなしでロボットアームを動作させる実験結果を公開した。

  • 「オレンジのキューブをビンに入れて」という音声指示に対し、アームが自ら対象を探索・把持し、約30秒でビンへ収納した。

  • 作業途中で対象物を動かされた場合でも、アームが即座に位置を探し直してタスクを完遂する適応性を示した。

  • 米TypeSafeの高速判定モデル「Jev」のAPI仕様に基づき、画像入力に対応したオープン再実装「openjev」を採用して高速な状況判断を実現した。

  • 株式会社ABEJAは2026年10月14日、視覚言語モデル(VLM:画像とテキストを同時に扱うAI)と高速判定モデルを組み合わせ、追加学習なしでロボットアームに物体把持(pick & place)を実行させた実験結果を公式テックブログで公開した。同社プロジェクトマネージャーの服部氏によると、音声指示に応じてアームが自律的にキューブを探して把持し、約30秒でビンへ収納したという。ロボット操作データの収集や追加学習の負担を回避しつつ、従来の大規模言語モデル(LLM)を用いる制御よりも高速な動作を実現したとしている。

追加学習や位置マーカーを排した自律ピッキング

ロボット制御の分野では、視覚・言語情報から直接動作を生成するVLA(Vision-Language-Action)モデルの研究が進む一方、実機動作データの不足やテレオペレーション(遠隔操作)によるデータ収集の負担が課題となっていた。また、一般的なLLMを制御ループに組み込むと、推論に数秒を要するため円滑な動作が難しくなるという問題もあった。

今回の実験では、物体の認識や把持に関する追加学習を一切行わず、汎用VLMが備える既存の認識能力をそのまま活用した。さらにマーカーによる位置同定も行わず、ルールベース制御と高速判定モデルを組み合わせている。

実証結果によると、音声で「オレンジのキューブをビンに入れて」と指示すると、アームが自らキューブを探して掴み、ビンへ入れて初期姿勢に戻った。続けて青いキューブの指示を出した場合も同様に動作した。動作途中で人間がキューブを動かした場合でも、即座に対象を探し直してタスクを完了した。単一タスクの所要時間は約30秒を記録したという。

高速推論モデル「Jev」の特性と画像入力の課題

状況判断を担う「openjev」は、米TypeSafe社が2026年9月15日に発表した高速判定モデル「Jev」のオープンな再実装だ。

Jevは人間の直感的な思考になぞらえて「System One Model(速い思考モデル)」と呼ばれ、文章を生成する代わりに、事前に定めた型に沿って回答と確率を返す。質問形式には、選択肢から選ぶ「Choice」、数値評価の「Score」、真偽確率を返す「Noul」の3種がある。複数質問を1回で処理でき、応答速度は70〜500ミリ秒と極めて高速だ。LLMに位置を尋ねてJSON形式で返答を得る処理に数秒かかるのに対し、1秒未満で判定できる。

ただし、公式Jevは現状テキストとJSONの入力にしか対応しておらず、画像はサポートされていない。そのため先行のロボット事例では、シミュレータ内の座標をJSON化して渡す手法が主だった。しかし座標が既知であれば、逆運動学(IK:手先位置から関節角度を計算する手法)で直接動かせば足りるため、AI介入の意義が薄かった。そこでABEJAは、直接画像を入力可能なオープン再実装「openjev」を判断役に組み込んだ。

「Jev」のアーキテクチャをめぐる技術的推測

Jevの内部構造は非公開で、公式情報では「並列サンプラー」の採用や「単一クエリで全出力を生成する」という点のみが明かされている。同社CEOのDiogo Almeida氏は、順次生成するデータ構造を出力に使わないことで全出力を並列計算可能にしていると説明しており、モデルの差別化は構造よりも学習データやRLCD(AIによるフィードバックを用いた強化学習)による較正にあると述べている。

コミュニティの分析では、共有コンテキストを1回処理した後に各質問の確率を専用ヘッドで並列に読み出すCausal Transformer説が有力視されている。外部からの検証調査でも、質問を1,500問、選択肢を255個に増やしても応答時間がほぼ変わらないことが確認されている。なお、拡散言語モデルによる手法も存在するが、これは公式Jev本体というよりも、openjevやdjevといったオープンな再実装の手法として主に使われているという。

補足

本実証は、ロボット専用の追加学習や大規模なデータ収集を行わずとも、汎用VLMと軽量・高速な判定モデルを組み合わせることで、実環境での機敏なロボット操作が可能になることを示す事例となっている。

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