ABEJAの新卒エンジニア、モブプログラミングでの「何も分からない」を共有しチーム開発環境を改善
要点
- ABEJAの新卒エンジニアが、実業務のモブプログラミングにおいて、経験不足から議論についていけず質問も躊躇する課題に直面していた。
- 定期的な振り返り会議(レトロスペクティブ)で本人が悩みを打ち明けた結果、チームメンバーとの間で「質問は歓迎されている」という認識のずれが解消された。
- チームは改善策として、新卒エンジニアが実際にコードを書く「ドライバー」の役割を担当する機会を増やし、立ち止まりやすい環境を作った。
- さらに開発のタスク見積もり(ストーリーポイント)を決定する際、新卒の技術習熟にかかる時間をあらかじめ計画に含める運用を開始した。
- これらの施策により、質問への心理的ハードルが下がり、新卒であっても学びやすい環境をチームと協力して構築できることが示された。
リード文
AIの社会実装を手がける株式会社ABEJAのテックブログにおいて、2026年8月4日、新卒エンジニアがチーム開発手法「モブプログラミング(モブプロ)」の中で抱えていた悩みと、その解決に向けたチームの取り組みが公開された。今年4月に入社した堂浦氏は、配属後に技術不足から議論に追いつけず質問を遠慮していたが、振り返り会議を通じて課題を共有した。これにより、チーム全体で開発プロセスや見積もりの仕組みを見直し、質問しやすい環境を構築したという。
本文
開発経験の浅い新卒が直面した、モブプロでの壁
堂浦氏は2026年4月に同社へ入社し、店舗向け解析サービス「ABEJA Insight for Retail」の開発や運用に携わるアプリケーションGに配属された。同氏はReactやGoの経験がほぼない状態で開発業務に取り組むことになったが、配属後に直面したのがチーム開発手法である「モブプログラミング(モブプロ)」での壁だった。モブプロとは、1人が画面を共有してコードを書く「ドライバー」を務め、他のメンバーが「ナビゲーター」として指示を出しながら共同で開発を進める手法である。
先輩たちの思考プロセスを近くで見られるメリットがある一方で、堂浦氏は画面に映るコードや先輩たちの議論についていけない状態が続いたという。分からない用語について考えている間に次のファイルへと進んでしまい、自分がドライバーを担当する際もナビゲーターから指示された操作をそのまま実行するだけだった。形だけ参加しているものの、主体的に開発に関われている実感が得られない日々が続いたと振り返っている。
「開発を止めてしまう」遠慮と質問の悪循環
同氏は、分からない箇所を質問すれば良いと理解しつつも、周囲がスムーズに開発を進めている中で基本的な質問を挟むと、チーム全員の作業を止めてしまうのではないかと躊躇していた。この遠慮により疑問が蓄積し、さらに質問しづらくなるという悪循環に陥っていたという。
レトロスペクティブでの告白と、発覚した認識のずれ
そこで堂浦氏は、チームで定期的に実施されている「レトロスペクティブ(開発の進め方を振り返り、改善策を話し合う会議)」で、この悩みをありのままに伝えた。
打ち明けた結果、先輩エンジニアたちは新卒からの質問を歓迎しており、むしろ積極的に尋ねてほしいと考えていたことが判明した。本人が悩みを口にしなかったため先輩側も遠慮に気づけず、一方で先輩の歓迎姿勢も新卒側には伝わっていなかったという、お互いの認識のズレが浮き彫りになった。
チーム全体で取り組んだ2つの具体的な改善策
レトロスペクティブを通じて、チームは堂浦氏が質問しやすくなるための具体的なルール(TRY)を決定した。
1つ目の改善策は、堂浦氏がドライバーを務める機会を増やすことである。新卒がコードを書くことで全体の開発ペースはゆっくりになるが、その分、分からない部分で立ち止まりやすくなった。自分の手でコードを入力しながら質問を重ねることで、指示された操作を行うだけでなく、なぜその操作が必要なのかを確認できる時間が増えたという。
2つ目の改善策は、タスクの難易度や作業量を示す「ストーリーポイント(開発規模を見積もる相対的な指標)」を決定する際、堂浦氏の技術的な習熟に必要な時間もあらかじめ含めて見積もる運用にしたことである。質問をする時間を計画の範囲内と定義したことで、チームの時間を余分に奪っているという負い目が解消され、質問に対する精神的なハードルが大きく下がったと説明している。
主体的な環境づくりへの変化
これらの施策により、堂浦氏は分からないことをその場で声に出せるようになり、質問できないまま流れていく時間が減少した。同氏は、知識不足を打ち明けてチーム全体で解決を図ること自体が、チーム開発に貢献する行動であると実感したという。新卒の立場であっても、与えられた環境で学ぶだけでなく、自分が学びやすい環境をチームと一緒に作ることができるという気づきを得たと結んでいる。