Abnormal AI、Amazon Bedrockのコード実行環境を採用しメール脅威検知の大規模自律運用を実現
要点
- 行動型セキュリティ企業のAbnormal AIが、リアルタイムの電子メール脅威検知基盤に「Amazon Bedrock AgentCore Code Interpreter」を導入した。
- 毎日数十億件規模のメール通信において、AIエージェントが隔離環境でリアルタイムにコードを実行し、受信トレイ到達前に脅威を遮断している。
- 採用された実行環境は、ホストOSレベルで完全分離されたMicroVMサンドボックスや最長8時間のセッション維持、柔軟なネットワーク設定を備える。
- Abnormal AIでは社内コード変更の40%をAIが完全自律で作成しており、開発から本番運用までAIネイティブなアプローチを一貫させている。
リアルタイム脅威検知にコード実行環境を統合
クラウド大手のAWS(Amazon Web Services)は2026年9月14日、セキュリティ企業の米Abnormal AIが、インライン電子メール脅威検知システムの運用基盤として「Amazon Bedrock AgentCore Code Interpreter」を本番環境に導入したことを公式ブログで公表した。
Abnormal AIは、米Fortune 500に名を連ねる企業の25%以上を保護する行動型セキュリティサービスを提供している。同社は現在、毎日数十億件に達するメッセージをリアルタイムで処理し、メールが受信者の手元に届く前に脅威を検知・遮断するシステムを本番稼働させているという。今回明らかになったのは、その検知処理を担う自律型AIエージェントの基盤として、AWSのマネージドなコード実行サンドボックスが組み込まれたことだ。
AIエージェントに求められる「計算領域」の役割
元記事によると、AIエージェントが1日数十億件の規模で実運用される中で、意味論的な推論だけでなく「計算用の一時作業領域(スクラッチパッド)」を必要とするアーキテクチャ上のパターンが顕在化しているという。
大規模言語モデル(LLM)は文脈の理解や自然な言語生成に長けているものの、現実世界の運用には言語生成だけでは処理しきれないタスクが数多く存在する。例えば「過去1時間に検知されたフィッシングメールの件数集計」といった基本的な計算やカウント処理は、言語モデルによる推論ではなく厳密なプログラム処理を必要とする。データの集計、分析、検証などのワークフローを確実に行うためには、エージェント自身が動的にコードを生成し、それを安全に実行して結果を取得できる仕組みが不可欠となっている。
Amazon Bedrock AgentCore Code Interpreterの主要仕様
Abnormal AIが導入した「Amazon Bedrock AgentCore Code Interpreter」は、AIエージェントが動的にコードを実行するための完全マネージドなサーバーレス実行環境である。公表された主な技術仕様および特徴は以下のとおりだ。
- エフェメラルなMicroVMセッション: 軽量仮想マシン(MicroVM)を用いた一時的なセッションとして提供される。有効期間(TTL)は標準の15分から最長8時間まで設定でき、長時間のタスクにも対応する。
- ホストOSレベルの堅牢な隔離: セッションはホストOSレベルで完全に分離された安全なサンドボックス(隔離空間)で動作し、異なるセッション間での意図しない情報漏洩を防止する設計となっている。
- 柔軟なネットワーク接続: 閉域のサンドボックスVPC(仮想プライベートクラウド)モード、またはパブリックインターネット接続モードのいずれかに環境を設定できる。
- データ・ファイル連携: API経由で直接最大100MBのファイルを送受信できるほか、大容量データセットを扱う場合はAmazon S3(Simple Storage Service)との連携が可能となっている。
- プリロード済みの言語ランタイム: PythonおよびNode.jsの実行環境が用意されており、データ処理、統計、データ可視化に必要な一般的なライブラリがあらかじめ組み込まれている。
- 統合された運用監視: 実行ログは運用監視サービスのAmazon CloudWatchおよび監査ログサービスのAWS CloudTrailへ自動的に送信される。
本機能は独立したAPIとして提供されているため、特定のエージェントフレームワークやワークフローを強制しない点が特徴だ。エージェントがコードを実行し、ファイルをアップロードして結果を受け取るための独立したコンテナとして機能するため、既存のエージェントインフラを持つ開発チームでも容易に組み込むことができるという。
社内開発から本番環境まで広がるAIネイティブ運用
Abnormal AIにおけるコード実行環境の採用は、同社のソフトウェア開発体制とも密接に連動している。同社では現在、コード変更全体の80%に何らかの形でAIエージェントが活用されており、全体の40%はバックグラウンドで動作する自律型エージェントによってエンドツーエンドで(AIの支援ではなく完全にAI自身の手によって)作成されているという。
同社は社内のソフトウェア開発で培ったAIネイティブな手法を、本番環境の脅威検知ランタイムにもそのまま適用している。数十億件のメッセージをミリ秒単位で精査するインライン検知において、エージェント駆動のコード実行を大規模にスケールさせることで、高度化する電子メール攻撃へのリアルタイムな対処を実現していると説明されている。