Ai2、地球観測モデルプラットフォーム「OlmoEarth Studio」でカスタム埋め込みベクトルの出力機能を提供開始
要点
- 米アレン人工知能研究所(Ai2)は、地球観測モデル構築プラットフォーム「OlmoEarth Studio」において、オープンソース基盤モデル「OlmoEarth」による埋め込みベクトルの計算および書き出し機能の提供を開始した。
- 出力される埋め込みベクトルは、地理空間データを効率的に扱えるCloud-Optimized GeoTIFF(COG)形式かつint8(符号付き8ビット整数)形式で提供され、軽量なデータ共有や高速な下流タスク処理を可能にしている。
- ユーザーは関心領域や期間(1〜12か月)、エンコーダー規模(Nano/Tiny/Baseの3種)、空間解像度(10m〜80m)、衛星データソース(Sentinel-1/Sentinel-2)を自由に設定してオンデマンドで生成できる。
- ラベル付けなしでの類似検索やセグメンテーション、変化検知など多様な分析タスクに対応し、モデル重みやコードもオープンソースとして公開されている。
米アレン人工知能研究所(Ai2)は2026年8月12日、地球観測AIモデルの構築プラットフォーム「OlmoEarth Studio」において、独自の埋め込みベクトル(Embeddings)をオンデマンドで生成・エクスポートできる新機能を発表した。
この機能は、Ai2がオープンソースで提供している地球観測向け基盤モデル「OlmoEarth」を活用し、衛星画像などの観測データをコンパクトな数値ベクトルへ変換して出力するものだ。すでにモデルの重みやソースコード、技術論文が一般公開されており、今回のアップデートにより、StudioのUIやAPIを通じて誰でも手軽に高度な地理空間分析データを入手できるようになったという。
埋め込みベクトルの概要と特徴
埋め込みベクトルとは、地表面の観測データの特徴を数値の並びとして圧縮・表現したものである。地表の特性が似ている地点同士は数値的に近いベクトルとなり、性質が異なる地点は遠く離れたベクトルとして表現される。
Ai2によると、この埋め込みベクトルは類似検索から領域分割(セグメンテーション)、教師なし探索まで幅広い下流タスクにおいて、迅速かつ費用対効果の高いエントリーポイントになるという。自社のベンチマークテストだけでなく、外部の独立した評価においても高い性能が確認されていると説明している。
また、出力形式には地理空間データをクラウド上で効率的に扱える「Cloud-Optimized GeoTIFF(COG)」を採用している。ベクトルデータは符号付き8ビット整数(int8:-127から+127の範囲、-128は欠損値用)として格納されており、データの軽量化と共有のしやすさを両立している。なお、浮動小数点ベクトルへの復元(逆量子化)を行うためのコードも、GitHub上のリポジトリ「olmoearth_pretrain」にて公開されている。
柔軟なカスタマイズとオンデマンド処理
従来の事前計算されたグローバルアーカイブからデータを取得する方式とは異なり、OlmoEarth Studioではユーザーの要求に応じてオンデマンドでベクトルを計算する仕組みを採用している。これにより、年単位のスナップショットにとどまらず、季節ごとの変化を捉える月次データなど、分析対象に合わせた正確な条件での出力が可能となっている。
Studio上で埋め込みベクトルを生成する際には、以下の項目を柔軟に指定できる。
- 関心領域(Area of interest): 画面上でのポリゴン描画またはファイルアップロードに対応。衛星画像の取得やタイリング処理はStudio側が自動で処理する。
- 期間(Time span): 1か月から12か月までの月次期間を指定可能。
- エンコーダーのバリアント: 用途や計算リソースに応じて、Nano(128次元、パラメータ数140万)、Tiny(192次元、パラメータ数620万)、Base(768次元、パラメータ数8900万)の3種類から選択できる。
- 空間解像度: 1ピクセルあたり10メートル、20メートル、40メートル、80メートルの4段階から選択可能。
- 衛星データソース: 光学衛星「Sentinel-2 L2A」、合成開口レーダー「Sentinel-1 RTC」、あるいはその両方を組み合わせて利用できる。
ユースケースと類似検索の実例
ブログ内では、軽量モデルである「OlmoEarth-v1-Tiny(192次元)」と40メートル解像度のSentinel-2データを用いた類似検索の具体例が紹介されている。
特定地点のクエリピクセル(検索基準点)の埋め込みベクトルを抽出し、対象領域内のすべてのピクセルとのコサイン類似度を計算することで、類似度に応じたヒートマップを生成できる。例として提示された米カリフォルニア州マーセド周辺の解析では、市街地付近のピクセルを指定すると、道路や都市インフラ部分が鮮明に反応する一方で、周辺の農地は明確に区別された。人手による事前のラベル付けを一切行わずに、モデルが自律的に市街地と農地を高精度に見分けている様子が示されている。
さらに、小規模な農業区画をウィンドウで囲んで平均ベクトルを算出し、特定の農地パターンを広域から抽出するといった応用も可能だという。
提供状況と今後の利用方法
カスタム計算による埋め込みベクトル出力機能は、現在「OlmoEarth Studio」の利用者向けに提供が開始されており、アクセス希望者からの問い合わせを受け付けている。また、プラットフォームを利用せず、公開されているOlmoEarthのモデルを用いて自前の環境で埋め込みベクトルを計算するための手順についても、関連リポジトリ(rslearn)を通じて案内されている。さらに、より高い精度が求められる用途に対しては、Studio上で教師あり微調整(SFT)を行う機能も引き続きサポートされている。