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Docker Blog

AIエージェントの承認スキップを突く情報窃盗手口が判明、AI支援コードでの秘密情報漏洩率は2倍に

要点

  • 週400万回ダウンロードの人気パッケージ「Nx」の改ざんから、開発者PC内のAIエージェントを悪用する攻撃「s1ngularity」が確認された。

  • 攻撃プログラムは、Claude CodeやGemini CLI、Amazon Qなどのツールに備わる「ユーザーの承認をスキップする起動フラグ」を悪用していた。

  • 2025年にGitHubへ漏洩した機密情報は前年比34%増の約2865万件に達し、AI支援コードでの漏洩率は全体の約2倍に上る。

  • AIエージェントは開発者自身と同じファイルアクセス権限で動作するため、実行環境を隔離する対策の重要性が高まっている。

  • 米Docker社は2026年7月28日、開発現場で普及が進むAIコーディングエージェントを標的としたセキュリティ脅威と、それに伴う機密情報の漏洩リスクに関する分析を公式ブログで公開した。ブログでは、過去に発生したサイバー攻撃の事例を交え、AIエージェントの持つファイルアクセス権限や起動オプションの盲点について解説している。

  • 2025年8月26日、JavaScriptのパッケージ管理システムである「npm」で、週に約400万回ダウンロードされるビルドツール「Nx」の改ざん版が公開された。このパッケージには、インストール完了時に自動でコードを実行する「postinstallフック」が設定されており、不正スクリプトtelemetry.jsを起動させる仕組みになっていた。

  • 開発者がファイルを確認する間もなく、インストールと同時にバックグラウンドで動作を開始する。この攻撃キャンペーンは、盗み出した情報を保存する公開リポジトリ(開発データの保存場所)の名前から「s1ngularity」と命名された。

  • 通常のマルウェアは自前のスキャンプログラムを実行するが、s1ngularityは開発者のPCにあるAIエージェントの探索機能を悪用した。標的となったClaude Code、GeminiのCLI、Amazon Qの3ツールには、自動化のためにユーザー承認をスキップする起動フラグ(--dangerously-skip-permissions--yolo--trust-all-toolsなど)が存在する。telemetry.jsはこれらを検出して強制的に付与し、エージェントを起動していた。

  • そして、「ホームディレクトリから深さ8までの範囲で、環境設定ファイル.envやSSH秘密鍵などの絶対パスをリスト化し、/tmp/inventory.txtに書き出す」というプロンプト(AIへの指示文)をエージェントに与えた。開発者に気づかれるパスワード要求を防ぐため、管理者権限を実行するsudoコマンドは使わないよう指示されていた。エージェントは開発者と同じ権限で動作するため、警告なしでファイル探索が実行されてしまった。

  • Docker社は、AIエージェントの悪用だけでなく、AIがコードを生成するプロセスそのものが持つリスクも指摘している。調査報告書「State of Secrets Sprawl 2026」によると、2025年に公開GitHubへプッシュ(プログラム変更履歴を共有サーバーに送信する操作)された機密情報は前年比34%増の約2865万件に達した。

  • このうち、AIの支援を受けて生成されたコードにおける機密情報の漏洩率は、GitHub全体の平均値と比較して「約2倍」に上るという。

  • AIエージェントはAPI連携を実装する際、プロジェクト内の.envファイルから実際の認証キーを読み込み、生成コードにそのまま埋め込んでしまうことがある。手動開発なら気づくミスも、AIが高速で生成と変更記録を繰り返す環境ではレビューで見落とされやすいためである。

  • 根本的な原因は、AIエージェントが開発者と同じ権限で動作し、その権限を制限する境界が存在しない点にある。

  • Docker社は対策として、隔離された安全な実行環境である「Docker Sandboxes」の活用を提示する。AIエージェントの処理をこの環境内で実行させることで、PC内の重要な認証情報をエージェントの手の届かない場所に隔離できる。万が一エージェントが不正起動されても、ローカルデータへのアクセスを未然に防ぐことが可能になると説明している。

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