AI接続規格「MCP」が大型アップデート、ステートレス化で大規模運用に対応――AWSも「AgentCore Gateway」で即日サポート開始
要点
- AIとツールの通信規格である「Model Context Protocol(MCP)」の最新仕様「2026-07-28」が公開された。
- 仕様が「ステートレス化」され、特別な設定をせずとも通常のHTTPインフラ上で水平スケーリングが可能になった。
- 今回の改訂には互換性のない変更が含まれるが、今後の仕様改定時の破損を防ぐガバナンス体制も同時に整備された。
- アマゾン ウェブ サービス(AWS)は、Amazon Bedrock AgentCoreの機能である「AgentCore Gateway」で新仕様のサポートを即日開始した。
リード文
AIアシスタントと外部のデータやツールを接続するためのオープンな通信規格「Model Context Protocol(MCP)」の最新仕様「2026-07-28」が、2026年7月28日に公開されました。今回の改訂は、MCPの発表以来で最も規模が大きく重要な変更となります。これに合わせ、アマゾン ウェブ サービス(AWS)は、Amazon Bedrock AgentCoreのゲートウェイ機能「AgentCore Gateway」において、同仕様のサポートを即日で開始したことを同社のMLブログで明らかにしました。
セッション依存を排除し「ステートレス」な規格へ移行
これまでのMCP仕様では、クライアントがMCPサーバーとやり取りする際、事前に「initialize(初期化)」などのハンドシェイク(接続確認のための手続き)手順を踏み、サーバーが発行した「Mcp-Session-Id(接続を識別する情報)」をすべてのリクエストに含める必要がありました。この仕組みはクライアントを特定のサーバーに固定してしまうため、サーバーを増やして負荷を分散させる「水平スケーリング(サーバーの台数を増やして全体の処理能力を高めること)」の障害となっていました。ロードバランサーで同じ通信先へアクセスを送り続ける「スティッキーセッション」の設定や、サーバー間でセッション情報を共有するための「セッションストア」が必要だったからです。
最新の「2026-07-28」仕様では、改善提案「SEP-2575」および「SEP-2567」により、ハンドシェイクとセッションの要件が完全に廃止されました。サーバー側でのセッション管理が不要となった(ステートレス化された)ことで、遠隔地にあるMCPサーバーは一般的なHTTPSエンドポイントと同様に動作し、標準的なインフラだけで大規模にスケールアウトできるようになります。
将来の破損を防ぐガバナンスとセキュリティの強化
今回の改訂には下位互換性のない「破壊的変更(旧仕様と互換性が失われ、プログラムが動かなくなること)」が含まれますが、開発チームは今後も同様の変更が頻繁に起きるわけではないとしています。基盤機能を損なわずに仕様を進化させるため、新たな「ガバナンス(管理)システム」が導入されました。これには機能の追加・廃止を管理する「機能ライフサイクルポリシー」、機能を広げる「拡張フレームワーク」、規格への適合を確認する「適合性スイート」が含まれ、将来の破損リスクを抑えます。
さらにエンタープライズ(大企業)での利用を見据え、「OAuth 2.0」や「OpenID Connect」といった標準的な認証技術との整合性を高めることで、セキュリティ機能の強化も図られています。
AWS「AgentCore Gateway」における導入と安全な移行
AWSは、Amazon Bedrock AgentCoreの機能でAIエージェントの通信を管理する「AgentCore Gateway」において、早くも新仕様のサポートを開始しました。開発者は設定更新APIの「UpdateGateway」を実行し、対応させたいプロトコルバージョンを指定するだけで新仕様を有効にできます。ターゲットごとの個別作業は不要です。
本アップデートは明示的に選択して有効化する「オプトイン」方式であり、設定を変更しても既存の通信に影響はありません。ゲートウェイ側が複数の仕様をサポートしていれば、クライアントは接続時に好みのバージョンを選択できるためです。新しい「2026-07-28」仕様と従来の「2025-11-25」仕様を両方有効にしておくことで、既存のクライアントの動作を維持したまま、新しいクライアントのみを安全に移行させることができます。