OWN NEWS GATHER
← 戻る
The Hacker News

AIコーディング支援による認証情報の漏洩率が人間の約2倍に、GitGuardianの2026年次調査で判明

要点

  • GitGuardianの年次レポートにより、AIを活用したコードコミットは人間のみが作成したコミットに比べて約2倍の割合で認証情報を漏洩させていることが明らかになった。
  • 急増している漏洩認証情報の多くがAIサービス関連のものであり、開発を効率化するツール自体が秘密情報の拡散を加速させる要因となっている。
  • 自律型AIエージェントがローカル設定や外部API、MCP(Model Context Protocol)サーバーに直接アクセスする環境が広がり、従来のリポジトリ検知を中心とした対策の限界が浮き彫りになった。
  • レポートでは、この事態を単なるAIの振る舞いではなく、機械やプログラムに権限を与える「非人間アイデンティティ(NHI)」の管理課題として捉える重要性が示されている。

セキュリティ調査企業のGitGuardianが公開した「2026 State of Secrets Sprawl Report」により、AI支援を受けて作成されたコードコミットにおいて、人間が単独で作成したコミットの約2倍の頻度で認証情報(シークレット)が漏洩していることが判明した。セキュリティ専門メディアのThe Hacker Newsが2026年9月24日付で報じた。ソフトウェア開発現場におけるAIコーディングエージェントの急速な普及に伴い、資格情報の拡散(シークレットスプロール)がこれまでにない速度と規模で進行している実態が浮き彫りとなっている。

AI支援コミットにおけるシークレット漏洩の倍増

レポートによると、現在最も増加傾向にある漏洩資格情報の大部分がAIサービスに関連する認証情報であるという。開発作業の高速化を目的として導入されたツールが、結果として開発基盤を支える鍵情報の流出を早める状況を生み出していると指摘されている。

認証情報の漏洩自体は以前から存在する問題であるものの、AIの介在によって誤りが発生する速度と規模が大きく変化した。自律型のコーディングエージェントは、開発者が1件のプルリクエストをレビューするほどの短時間で、プロジェクト全体のコードを読み取り、ファイルを改変し、設定を生成して外部サービスと通信を行うことができる。多くの認証情報は、ソフトウェアがこれほど自律的に振る舞う環境を想定して設計されていないため、エージェントがファイル内へキーを書き込んだり、セキュリティ担当者が追跡・更新(ローテーション)できないほど広範囲のシステムへ資格情報を拡散させたりする要因になっているという。

自律型エージェントの普及と従来型セキュリティの限界

組織内のAPIキーやアクセストークン、サービスアカウントなどの認証情報が、管理や定期更新の追いつかない多数の場所に分散して蓄積する現象は「シークレットスプロール」と呼ばれる。従来、セキュリティ部門はリポジトリの定期スキャンやコミット前の検知フックを導入し、露出が発覚した後に鍵を更新するという事後検知を中心に対処してきた。

しかし、AIエージェントが普及した環境では、事後検知のみに依存する手法の限界が顕著になっている。エージェントは端末内のローカルファイルを読み込み、コマンドを実行し、外部APIを呼び出し、さらには外部ツールやデータソースと接続するための標準プロトコルであるMCP(Model Context Protocol)サーバーと通信を行う。エージェントの機能や連携先が増加するごとに、認証情報が必要となる箇所が増え、結果として情報が拡散する経路も多重化している。

エージェント環境における主な露出要因

AIエージェントが認証情報を露出させる背景には、エージェントの作業に必要な「文脈(コンテキスト)」へのアクセス権が関係している。レポートでは、現場で生じている具体的なリスク要因として以下の点が挙げられている。

  • ローカル設定ファイルや機密情報への広範なアクセス: 開発者が過去のデバッグ作業などで作業端末に残した.envファイルなどの平文ファイルには、本番環境用のキーが含まれている場合がある。プロジェクト全体への参照権限を持つエージェントは、当面の作業に無関係であってもこれらのファイルを読み取ることが可能であり、開発端末内の平文情報がエージェントにも広く共有される状態を生み出している。
  • 設定ファイルへの直接的な書き込み: エージェントやMCPサーバーのセットアップ手順では、外部システムとの接続を簡略化するために設定ファイルへ認証情報を直接記載することが一般的である。これらのファイルがGitなどのバージョン管理対象から除外されていても、端末上には平文で残存し、エージェントが読み取れる場所に保管されることが多い。
  • スキャン対象外となるシステムへの複製: 認証情報は単一の場所に留まらず、.envファイル、CI/CD環境の変数、課題管理ツール(Jira等)のチケットなど、複数の場所にコピーされやすい。リポジトリ外での露出も多く発生しているため、コードリポジトリ上で発見された鍵を更新したとしても、他のシステムに残った同一の鍵が有効なまま残り続ける事態が発生する。
  • 過剰なアクセス権限の付与と放置: エージェントの作業を円滑に進め、試行錯誤時のエラーを避けるために、初期段階で広範な権限が付与される傾向がある。プロトタイプ作成時の暫定的な権限設定が見直されないまま本番プロセスに組み込まれ、複数エージェントが連携するシステムにおいてリスクがさらに拡大している。

非人間アイデンティティ(NHI)としての管理アプローチ

レポートでは、AI時代におけるシークレットスプロールへの対策として、AIモデルの挙動そのものを制御しようとするのではなく、プログラムやサービスに割り当てる認証情報である「非人間アイデンティティ(NHI: Non-Human Identity)」の問題として扱うべきであると提起されている。

自律型エージェントがデータベースへの問い合わせ、APIの実行、検証環境へのデプロイといった処理を行う際、その背後には必ず処理を許可する何らかの認証情報が存在する。自律システムのあらゆる動作を事前に完全に予測することは困難であるが、システムを裏付けるアイデンティティが「何に対してアクセスを許可されているか」という権限範囲を制御することは可能であるとし、権限管理の厳格化が重要視されている。

元URL