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AWS ML Blog

Amazon Bedrock Knowledge Basesを用いた保険請求データの自然言語照会手法をAWSが解説、エージェンティック検索による高精度な文書検索と出典提示を実現

要点

  • Amazon Web Services(AWS)が、Amazon Bedrock Knowledge Basesを活用して保険請求データを自然言語で検索・照会する技術解説記事を公開した。
  • 形式や保管場所が多岐にわたる請求書類に対し、RAG(検索拡張生成)とエージェンティック検索APIを組み合わせて高精度に回答を生成する手法を示している。
  • 提供されるAPI「AgenticRetrieveStream」により、質問のサブクエリへの自動分解、複数回の検索実行、証拠の十分性判定、出典情報のストリーミング出力を行う。
  • メタデータフィルタによる検索範囲の限定や、Amazon Bedrock Guardrailsを用いた回答のグラウンディング(根拠付け)検証により、回答の正確性を担保する仕組みを構築できる。

リード文

Amazon Web Services(AWS)は2026年9月30日(現地時間)、公式技術ブログ「AWS ML Blog」において、フルマネージド型の検索拡張生成(RAG)機能「Amazon Bedrock Knowledge Bases」を活用し、保険請求(クレーム)関連の文書群を自然言語で照会するシステムの構築手順を解説した。
散在するドキュメントや頻繁に更新・上書きされる請求情報に対し、エージェンティックな検索機能を適用することで、正確な情報抽出と監査可能な出典(引用)の提示を両立する仕組みを紹介している。
なお、本解説は合成データ(ダミーの請求記録)を用いた技術的なチュートリアルであり、特定の顧客における本番環境の構成を示すものではないと説明されている。

保険請求業務における情報検索の課題と背景

保険業界における請求業務では、情報の取得や確認において特有の課題が存在する。請求に関連する情報は単一のデータベースフィールドに整理されているわけではなく、損害査定人(アジャスター)の日誌、修理の見積書、警察の報告書、支払い台帳、スキャンされた添付ファイルなど、多様な形式の文書に分散して保管されている。

また、システムを利用する関係者ごとに求められる検索の要件も異なる。

  • 保険契約者: 「請求番号CLM-100482の見積もりは承認されたか、小切手はいつ発行されるか」といった、平易な表現による現状確認を求める。
  • コンタクトセンター担当者: 顧客との通話中に転送を行うことなく、その場ですぐに確認できる迅速かつ正確な回答を必要とする。
  • 損害査定人: 「先月申請された10,000ドルを超える未処理の車両事故請求と、それぞれの残作業」といった、複数の記録を横断する複合的な条件の抽出を求める。

さらに、保険請求の記録では、改定された見積書が以前のものを置き換えたり、暫定的な支払いが後から取り消されたりするなど、情報の矛盾や上書きが発生しやすい。加えて、規制産業である保険業務においては、すべての回答が元データに裏付けられている必要があり、担当者が回答を伝える前の確認や、管理者による監査のために明確な出典(引用元)の提示が必須となる。

Amazon Bedrock Knowledge Basesによるソリューション構成

AWSが提示したソリューションでは、ドキュメントを対象としたフルマネージド型のRAG機能である「Amazon Bedrock Knowledge Bases」を採用している。この機能により、ドキュメントの構文解析(パース)、チャンク分割、埋め込みベクトル(エンベディング)の生成、およびベクトルストレージへの保存といった一連の処理をAmazon Bedrockが一括して処理する。

データ連携の流れは大きく「取り込み(インジェクション)」と「検索(リトリーバル)」の2つのレーンに分かれている。

  1. 取り込みレーン: Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)から請求関連ドキュメントおよびそのメタデータを読み込み、ナレッジベース内にインデックスを作成してベクトルストレージに格納する。
  2. 検索レーン: ユーザーやアシスタントからの問い合わせを受け付け、AgenticRetrieveStream APIとガードレール機能を介して、出典が明記された回答をストリーミング形式で返却する。

AgenticRetrieveStreamによるエージェンティック検索の仕組み

本構成の中核となるのが、AgenticRetrieveStream APIを介したエージェンティック検索(Agentic retrieval)である。従来の単純な検索とは異なり、このAPIは以下のような自律的なステップを実行して回答を導き出す。

  • 回答プランの策定とサブクエリへの分解: 複合的な質問を受け取った際、必要となる情報に応じて複数の小さな検索クエリ(サブクエリ)へと自動的に分割する。
  • 複数回の検索パスの実行: 複数のクエリに対して1回または複数回の検索パスを走らせ、必要な情報を収集する。
  • 証拠の十分性チェック: 取得した情報が回答を生成するのに十分であるかを検証し、根拠が揃っていることを確認した上で回答文の生成へと進む。
  • ストリーミング出力: 回答のテキスト本文に加え、検索プランを可視化する「トレースイベント」、および回答の各部分がどの請求文書に基づいているかを示す「引用(Citations)」をリアルタイムにストリーミング配信する。

これにより、コンタクトセンターの担当者はアシスタントが提示した回答の根拠を即座に元の請求書や報告書と照合できるようになる。

検索精度の向上とガードレールによる信頼性の担保

記事では、検索の精度と信頼性をさらに高めるための実装手法についても解説している。

  • メタデータフィルタリングによる範囲限定: 請求ID(claim ID)や請求種別(claim type)などの属性情報をメタデータとして付与し、検索時にフィルタを適用することで、対象ドキュメントを絞り込んだ効率的な検索を実現する。
  • マルチターン対話への対応: 単発の質問だけでなく、文脈を維持した複数ターンのフォローアップ質問にも対応可能としている。
  • コンテキストグラウンディング・ガードレールの適用: Amazon Bedrock Guardrailsの「コンテキストグラウンディング」チェックを検索パイプラインに組み込むことで、生成された回答が確実に元の請求記録に基づいているかを検証し、事実無根な回答(ハルシネーション)を防止して記録に忠実な回答のみを出力させる。

補足

Amazon Bedrock Knowledge Basesにおけるエージェンティック検索機能は、単一のドキュメント検索にとどまらず、複雑な条件分岐や複数資料の照合作業を自動化する手段として機能する。今回の解説は、非構造化ドキュメントが大量に混在し、高い正確性と説明責任が求められる業務システムへの生成AI適用モデルの一例を示している。

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