OWN NEWS GATHER
← 戻る
AWS ML Blog

Amazon Payments、コンテキスト付きバンディットでCV率を改善 AWSがSageMaker AIを活用したパーソナライズ手法を公開

要点

  • 米Amazon Web Services(AWS)が、Amazon Paymentsにおけるコンテキスト付きマルチアームバンディット(MAB)を活用したパーソナライゼーション事例を公開した。

  • Amazon SageMaker AIを用いた7週間のオンラインA/Bテストにおいて、特定顧客層の最終ファネルコンバージョン率が1桁台後半の割合で向上した。

  • 改善が見られなかった顧客層の要因を分析した結果、機械学習モデルの精度ではなく提示コンテンツ自体に課題があったことが判明した。

  • 選択アルゴリズムには、決定論的で監査や再現が容易なUCB(Upper Confidence Bound)が採用されている。

  • 手法を検証・体験できるサンプルコードがGitHubリポジトリとして公開された。

  • 米Amazon Web Services(AWS)は2026年10月1日、同社の公式ブログ「AWS ML Blog」において、Amazon Paymentsにおける機械学習を用いたパーソナライゼーション事例を公開した。機械学習プラットフォーム「Amazon SageMaker AI」上のコンテキスト付きマルチアームバンディット(MAB)を製品獲得ファネルに適用し、7週間にわたり実施したオンラインA/Bテストの結果とアーキテクチャの知見を明かしている。

生成AI普及に伴う「コンテンツ選択」の新たな課題

近年、生成AI技術の進展によって、ブランドガイドラインや制約を遵守しながらパーソナライズされた大量のコンテンツを迅速かつ低コストで生成することが可能になった。Amazon Bedrockなどを活用することで、大規模なバリエーション制作が容易に行えるようになっている。

一方で、大量のコンテンツが自動生成できるようになった結果、「多数の選択肢の中から個々の顧客に対してどれを表示すべきか」「その最適解を特定するまでにどれほどの時間を要するか」というコンテンツ選択の課題が新たに浮上しているという。AWSは今回の発表で、コンテンツ急増に伴って生じるこの選択課題へのアプローチを提示している。

Amazon Paymentsでの実証と7週間のテスト結果

この課題に対し、Amazon Paymentsでは「Amazon SageMaker AI」を利用し、多目的コンテキスト付きマルチアームバンディット(Multi-Objective Contextual Multi-Armed Bandit)を導入した。製品の獲得ファネル(ユーザーが認知から購入や契約に至るまでの遷移プロセス)全体を対象に、AIによるパーソナライゼーションが適用された。

本番環境で7週間にわたり実施されたオンラインA/Bテストでは、明確な結果が得られたと報告されている。特定の顧客層においては、ファネル最終段階におけるコンバージョン率が相対的に1桁台後半のパーセンテージで向上した。

その一方で、別の顧客層に対しては既存のユーザー体験と比較して改善が見られないという差異も確認された。この要因について調査を進めたところ、原因は機械学習モデルの精度ではなく、提供していたコンテンツの内容自体にあったことが明らかになったと説明している。

マルチアームバンディットの仕組みとUCBアルゴリズムの選定理由

今回採用されたマルチアームバンディット(MAB)は、選択肢が多数存在し、トラフィックが限られている環境に適した強化学習(試行錯誤を通じて最適な行動を学習する手法)の一種である。従来のA/Bテストと異なり、各コンテンツのバリエーションを「腕(arm)」として扱い、実際のトラフィックでテストを行いながら、成果の高い腕へと段階的に表示割合をシフトさせていく特徴を持つ。

バンディットアルゴリズムは、現時点で最良とされる腕を提供する「活用(exploitation)」と、不確実な腕を試してデータを集める「探索(exploration)」を同時に行い続ける。これにより、テストの終了を待つことなく新しいバリエーションを追加して改善を継続できるため、生成AIによってバリエーション数が激増する環境下で重要性が高まっているという。

バンディットの選択戦略には複数の手法が存在するが、Amazon Paymentsでは「UCB(Upper Confidence Bound:推定された報酬に不確実性の度合いを加味して腕を選ぶ手法)」が選択された。UCBは活用と探索を自然に両立させるだけでなく、選択ルールが決定論的(同じ入力に対して必ず同じ結果を導く性質)であるため、すべての配信判断について監査や再現が可能であり、必要に応じて説明責任を果たせる点が採用理由として挙げられている。

さらに、標準的なバンディットがオーディエンス全体に対して単一の最良な腕を学習するのに対し、個々の訪問者情報を取り入れて条件付ける「コンテキスト付きバンディット」へと拡張することで、顧客ごとのパーソナライゼーションを実現している。

検証用サンプルコードの公開

AWSは、本事例で解説された手法を開発者が手元で試せるよう、GitHub上にサンプルコードリポジトリ(aws-samples/sample-multi-objective-contextual-bandit-with-sagemaker)を公開した。

公開されたリポジトリを利用することで、Amazon SageMaker AIの環境下で合成データを用いたテストを実行し、多目的コンテキスト付きバンディットによるファネル最適化のアプローチを実践的に理解できるようになっている。

元URL