暗号資産ウォレットの脆弱性「Ill Bloom」悪用で500万ドル以上流出、古いアプリや拡張機能にリスク
要点
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セキュリティ企業Coinspectは、暗号資産ウォレットの復元フレーズ生成における脆弱性「Ill Bloom」を公表し、悪用が確認されていると警告した。
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2026年5月27日の組織的攻撃で約310万ドルが流出したほか、その後に約210万ドル相当のUSDTが盗まれ、被害総額は500万ドルを超えた。
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脆弱性の原因はフレーズ生成時の乱数生成器の弱さにあり、本来推測困難な復元フレーズが予測可能な範囲に狭まっていた。
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物理的なハードウェアウォレットや主要なソフトウェアウォレットは安全だが、2018年以降の古い、あるいは知名度の低いアプリが対象となる。
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Coinspectは、アドレスの脆弱性を確認できる無料チェッカー「illbloom.org」を公開し、該当する場合は速やかに新しいウォレットへ資金を移すよう求めている。
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セキュリティ企業のCoinspectは2026年7月10日、一部の暗号資産(仮想通貨:インターネット上で取引されるデジタル資産)ウォレットに存在する深刻な脆弱性「Ill Bloom(イル・ブルーム)」を公表した。すでに悪用による資金流出が確認されており、被害額は合計で500万ドル以上に達している。
脆弱性「Ill Bloom」の原因と仕組み
暗号資産の自己管理型ウォレットは、通常12語または24語の単語からなる復元フレーズ(シードフレーズ)をもとに作成される。このフレーズは、本来であれば天文学的な確率の組み合わせから完全にランダムに選ばれるため、第三者が推測することは不可能とされている。
しかし、「Ill Bloom」の影響を受けるウォレットソフトウェアでは、フレーズを生成する際の「乱数生成器(暗号技術において予測不可能な値を生成する仕組み)」の設計が不十分で、ランダム性の強度が低かった。この結果、生成されるシードフレーズの候補が攻撃者にとって探索可能な範囲まで狭まってしまったという。
Coinspectは、この脆弱な生成器から作成され得るすべてのフレーズパターンを算出し、それらに対応するウォレットアドレスを特定した。そしてブロックチェーンの公開記録と照合して資金が残っているアドレスのリストを再構築することで、攻撃手法を完全に実証したと説明している。
500万ドルを超える被害の全容
同社が6月30日時点で追跡したところ、ビットコインやイーサリアム、Rootstock、Tron、Polygonの各ブロックチェーン上で活動がある2,114個の脆弱なアドレスが特定された。
最初の大きな被害は5月27日に発生し、組織的な一斉送金(スイープ:ウォレット内の全残高を別のアドレスへ移動させること)によって431個のウォレットから数時間で約310万ドルが流出した。特にビットコインの被害が深刻で約257万ドルを占め、単一アドレスから110万ドル以上が奪われたケースもあった。無関係なウォレットから数時間の間に同一の回収用アドレスへ残高が転送されたため、組織的な攻撃と判定された。
その後、攻撃者が5月27日時点で掌握しながら放置していた別チェーンの資産から、さらに210万ドル相当のUSDT(米ドル連動型暗号資産)が流出し、被害総額は500万ドルを超えた。Coinspectは6月10日にリスクを検知して警告を試みたが、伝達が間に合わなかった。Coinspect側も脆弱な秘密鍵(ウォレットの所有権を示す鍵情報)を特定できていたが、フレーズが侵害された状態では正当な所有権を証明できないため、資金を安全な場所へ移転することはできなかったという。
同社は被害額を最低限の数字とみており、脆弱なフレーズの発見は現在も続いている。2022年のピーク時には、このアドレス群の資産価値は1,256万ドル相当に達していたと再構成されている。
対象となるウォレットと推奨される対策
Coinspectによれば、物理端末で秘密鍵を管理するハードウェアウォレットや、主要なソフトウェアウォレットは安全だが、2018年以降の古いウォレットや、知名度の低いモバイルアプリ、ブラウザ拡張機能にリスクがあるという。
アプリ名は非公表のため、検証には同社提供の無料チェッカー「illbloom.org」を使用し、公開アドレスを脆弱リストと照合する必要がある。ツールはビットコイン、Tron、Solana、イーサリアム互換アドレスに対応する。アドレスが該当した場合、以下の手順での対応を推奨している。
- フレーズが侵害されたとみなす: まだ資金が残っていても安全ではない。
- 新規ウォレットの作成: 新たに生成された12〜24語のフレーズを持つウォレットを作る。古いフレーズの使い回しは避ける。
- 資金の移動: すべての資産を新アドレスへ送金する。アプリの再インストールでは解決しない。
5月27日の攻撃で残高5ドル未満のアドレスは標的から外されたが、フレーズ自体は侵害されているため今後の入金も危険である。残高の有無にかかわらず、該当ウォレットの使用は直ちに停止すべきだという。
また、便乗詐欺にも警戒が必要だ。Coinspectは「フレーズや秘密鍵、電子署名、承認を求めることはなく、資金送金を求めることもない」としており、機密情報を他者に明かさないよう注意を促している。