OWN NEWS GATHER
← 戻る
Anthropic Blog

Anthropic、購買・店舗運営向けAIエージェントの構築フレームワークを公開——購買完了率60%向上の実績も

要点

  • Anthropicは、Claudeを活用したコマース(電子商取引)向けAIエージェントを迅速に構築できる設計図「ブループリント」を公開した。

  • 買い物客を案内する「ショッピングエージェント」と、店舗運営業務を支援する「マーチャントエージェント」の2種類のリファレンス実装が含まれる。

  • 小売、旅行、通信、チケット販売の4業界に対応し、Amazon BedrockやGoogle Cloud Vertex AIなどの主要クラウド環境にデプロイできる。

  • 先行導入企業では、カート内の購入規模が最大35%拡大し、購買完了率が60%向上する成果が確認されている。

  • VisaやMastercard、Accentureなどの大手パートナーと連携し、安全な商取引と導入支援体制を整えている。

  • 米AIスタートアップのAnthropicは2026年9月2日、同社のAIモデル「Claude」を活用してコマース向けAIエージェントを開発するための設計図「コマースエージェント・ブループリント」を公開したと発表した。エンジニアが数日で実用的なエージェントを稼働させられるよう、必要な設計パターンやガードレール(AIの不適切な挙動を防ぐ制約機能)、リファレンス実装(動作の手本となる参照コード)を一式揃えている。開発者はGitHub上で公開されたリポジトリからコードを入手でき、即座に自社サービスへの組み込みやカスタマイズに着手できるという。

先行導入でカート単価35%増、主要クラウドにも対応

発表によると、ShopifyやPricelineをはじめとする世界有数の小売事業者や旅行会社、マーケットプレイスがすでにClaudeを活用したエージェントを運用している。自然言語による商品検索や比較、購入手続きをAIが支援することで、導入企業ではカートサイズ(1回の購入における注文規模)が最大35%拡大したほか、買い物客が最終的に購入を完了する確率が60%高まるなどの成果が得られているという。

今回公開されたブループリントは、ホリデーシーズンの商戦計画に合わせてリリースされた。小売、旅行、通信、チケット販売の4つの業界向けに動作するリファレンス実装とライブデモが用意されているほか、開発支援ツール「Claude Code」向けのプラグインも同梱されている。

開発環境としては、Claude APIのほか、Amazon Bedrock、Microsoft Foundry、Google Cloud Vertex AIなど、普段利用している主要クラウド基盤へそのままデプロイ可能となっている。また、Messages APIやAgent SDK、ベータ版として提供されているClaude Managed Agentsといった各種API・SDKを用いて構築できるとしている。

会話UI内で提案からサポートまで完結する「ショッピングエージェント」

ブループリントに含まれる1つ目の主要機能が、アプリやWebサイト内に組み込んで利用する「ショッピングエージェント」だ。商品カタログ、カート、チェックアウト、顧客の好み、注文履歴といったシステムとの連携口が用意されており、決済処理自体は既存のチェックアウト基盤やエージェント対応決済プロバイダーに委ねる構成をとっている。

このエージェントは、ユーザーからの「子供2人と行く週末のキャンプ用にテントと寝袋、コンロが欲しい」といった複数の商品を一度に求める要望を理解し、カタログ内から適切なセットを検索・提案できる。顧客の過去の好みを記憶してパーソナライズされた提案を行うだけでなく、単なるテキスト応答にとどまらず、チャット画面内に直接商品の画像や比較表、カートのUIを表示する機能を備えている。

さらに、注文状況の確認や商品の返品・交換手続き、返金ポリシーの案内といったカスタマーサポート業務も同じ会話の中で対応できる。別の問い合わせページにユーザーを誘導することなく、一連の対応を同一画面で完結させられる点が特徴だ。

なお、AIがカタログに存在しない架空の商品や価格を提示することを防ぐ制約や、強引なアップセル(より高額な商品の抱き合わせ販売)を回避するガードレールがあらかじめ組み込まれているという。

店舗運営者の意思決定を支援する「マーチャントエージェント」

もう1つの主要機能である「マーチャントエージェント」は、店舗やECサイトの運営者をバックオフィスから支援するAIエージェントだ。運営者が「昨シーズンの在庫を処分するには何を値下げすべきか?」といった質問を投げかけると、自社の販売実績データに基づいて具体的な回答を提示する。

マーチャントエージェントは、売れ筋商品や売れ行きの鈍い商品の分析を行うほか、在庫状況を常時追跡し、セールの開始前に在庫切れを起こしそうな商品を事前に警告するプロアクティブ(先回り)な通知機能を備えている。さらに、過去の販売履歴に合わせた価格設定やプロモーションの推奨、在庫を動かすためのマーケティング施策のドラフト作成までを行う。

エージェントが能動的に施策や設定変更を提案した場合でも、実際に変更が反映される前に必ず人間による承認(Human-in-the-Loop)を挟む設計となっており、最終的な決定権を人間が保持しながら店舗管理を効率化できると説明している。ポータル画面上で利用できる売上分析ダッシュボードやグラフ表示機能もパッケージとして提供される。

決済・コンサルティング大手との連携と消費者の動向

Anthropicは今回のブループリント展開にあたり、Visa、Mastercard、Accentureといった業界大手とのパートナーシップを結んでいる。各社はクライアントや加盟店コミュニティがこのブループリントを活用できるよう支援を進めている。

Visaのチーフ・プロダクト&ストラテジー・オフィサーであるJack Forestell氏は、商取引におけるAIの関与が進む中でも信頼が中心にあるべきだと指摘し、Visaの決済ネットワークとClaudeの知見を組み合わせる意義を強調した。また、Mastercardのエグゼクティブ・バイス・プレジデントであるSherri Haymond氏も、エージェント時代における安全な商取引基盤の重要性に言及している。

さらに、Accentureが公表した最新調査によると、消費者の85%がAIエージェントとの協働に前向きであり、約4人に3人(約75%)が「自分の代わりに購入してもらうにあたり、親友よりもパーソナルAIエージェントを信頼する」と回答したという。エージェントを活用したコマースが購買体験のルールを大きく変えつつある中、Anthropicは本ブループリントを企業が迅速に対応するための実践的な基盤として位置づけている。

元URL