アリババ傘下のT-Head、次世代AIチップ「Zhenwu V900」を発表――CPU刷新を含むフルスタック戦略を公表
要点
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アリババ傘下の半導体企業T-Headが、学習・推論両対応の次世代AIチップ「Zhenwu V900」を発表した。
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前世代比で3倍の性能向上を果たし、216GBの大容量メモリやFP8・FP4低精度演算に対応する。
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独自開発の接続チップ「ICN Switch」を介して1,000基以上を統合可能で、最大50万基規模のクラスタ拡張を見込む。
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サーバー向けCPU「Yitian 720/730」の2027年投入や、CPUとAIチップの直接接続計画も公開された。
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中国アリババグループ傘下の半導体設計企業であるT-Head(平頭哥)は、杭州で開催された「2026 Apsara Conference」において、次世代AIアクセラレータ「Zhenwu V900」を発表した。同チップはAIモデルの学習と推論の双方に対応するハイエンド製品で、前世代機と比較して3倍の性能向上を実現しているという。
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あわせて同社は、サーバー向け独自CPU「Yitian」シリーズの次期ロードマップを公開した。AIモデルの大規模化や自律型エージェントの普及に伴う計算需要に対応するため、単体のアクセラレータにとどまらず、演算、通信、ストレージ、ソフトウェアを包括するフルスタックのインフラ戦略を推進する方針を明確にしている。
独自並列アーキテクチャを採用した「Zhenwu V900」の仕様
Zhenwu V900は、T-Headが独自に開発した並列コンピューティングアーキテクチャをベースとする同社最高性能の自社製AIチップである。前世代モデルにあたる「Zhenwu M890」と比較して3倍の演算性能を備えるとされている。
メモリ容量は216GBを搭載し、チップ間帯域幅は1,200GB/sに達する。また、FP8やFP4といった低精度演算(数値の表現精度を抑えることで計算負荷と消費電力を低減する処理方式)をネイティブでサポートしている。大容量メモリによって大規模モデルの分割やデータ転送にかかるオーバーヘッドが抑制されるほか、低精度演算の活用により処理効率が改善し、推論コストの削減につながると同社は説明している。
V900は2027年第1四半期に量産を開始し、発売される見込みだ。アリババグループの呉泳銘(ウー・ヨンミン)CEOは同カンファレンスにおいて、同社製品の導入拡大に伴い、T-Head製AIチップの年間出荷数は増加する見通しであると述べている。
1,000基以上の連携と最大50万基クラスタへの拡張
V900は単体のアクセラレータとしてだけでなく、大規模なシステムの一部として連携動作することを前提に設計されている。T-Head独自のインターコネクトチップ「ICN Switch」を用いることで、複数のV900を「スーパーノード」と呼ばれる高密度な計算ノードへと接続する。この仕組みにより、ネイティブなメモリセマンティクスと統合メモリアドレッシングを提供し、数千個規模のチップ間で全帯域幅の相互接続を実現するという。
同社によれば、1,000基以上のV900チップを単一システムとして連携させることが可能であり、1兆パラメータ規模のモデル学習や、AIエージェントが生成する大規模な推論需要に対応する。
カンファレンスでは、V900に加え、ICN Switch、スマートNIC(ネットワーク処理をオフロードする専用通信カード)の「Panmai」、SSDコントローラーの「Zhenyue」を統合した新世代のスーパーノードサーバーも公開された。演算、通信、ストレージを単一の統合アーキテクチャに集約した構成となっており、アリババクラウドが新設計したAIデータセンターネットワークと組み合わせることで、単一のAIクラスタあたり最大50万基のアクセラレータまで拡張可能であるとしている。
商用展開の実績と次世代CPU「Yitian」のロードマップ
T-HeadのZhenwuシリーズはすでに商用利用が進んでいる。前世代のM890をベースとしたスーパーノードサーバーは大規模に導入されており、「Qwen3.8」や「Kimi K3」など2兆パラメータを超えるモデルの運用を支えている。これらの計算基盤は、アリババクラウドのAIプラットフォーム「Bailian(百煉)」を通じて開発者向けにも提供されているという。同社によると、Zhenwuシリーズの採用実績は自動運転、金融、大規模言語モデル、具現化AI(物理的な身体を持つロボット向けAI)、エネルギー、製造など多岐にわたり、導入企業数は650社を超えている。
AIアクセラレータと並行して、サーバー向けCPU「Yitian」シリーズの開発計画も示された。ロードマップによると、「Yitian 720」および「Yitian 730」が2027年第3四半期に投入される予定だ。Yitian 720はシングルコア性能、コア密度、電力効率の向上に注力し、Yitian 730は自社開発のマイクロアーキテクチャを採用して、既存のYitian 710比で最大1.4倍のSPECint2017/GHz性能を達成するという。
さらにその後に控える「Yitian 750」では、独自プロトコルであるICNインターコネクトに対応し、CPUとZhenwu AIチップの直接接続が可能になる予定だ。サーバー内部で異なるチップを単に混載するのではなく、システムレベルでCPUとAIアクセラレータを緊密に協調させる設計が進められている。
ソフトウェア環境とシステム指向のインフラ展開
同社はカンファレンス期間中、モデルの学習や推論、ソフトウェア最適化を網羅するソフトウェアスタック「T-Head SAIL」の体験型ワークショップも実施した。
AIモデルの巨大化に伴い、処理性能のボトルネックは単体チップの演算力にとどまらず、チップ間通信やメモリ容量、ネットワーク帯域、データアクセスといった領域へ広がっている。アリババおよびT-Headによる今回の発表は、チップ単体の性能向上から、相互接続やメモリ、ストレージ、ソフトウェアを含めたシステム全体の連携で大規模AIを支えるインフラ構築への移行を反映している。