AWS、Amazon Bedrock AgentCoreとNova 2を活用したWhatsApp向けマルチモーダル注文AIの構築手法を公開
要点
- AWSが、AIエージェント構築基盤「Amazon Bedrock AgentCore」と基盤モデル「Amazon Nova 2」を組み合わせたWhatsApp向け注文アシスタントの構築・デプロイ手法を公開した。
- 単一のWhatsApp Business番号で、テキストメッセージ、ボイスメッセージ(音声ノート)、リアルタイム音声通話の3チャネルからの注文受付に対応する。
- 全チャネルでバックエンドとメモリ(文脈情報)を共有しており、前日にテキストで注文した顧客が翌日に電話をかけてきた場合でも同一人物として認識できる。
- テキスト処理には「Amazon Nova 2 Lite」、リアルタイム音声処理には「Amazon Nova 2 Sonic」を採用し、バックエンド連携にはModel Context Protocol(MCP)を利用している。
- AWS CDKによりインフラ全体をコードとしてデプロイ可能で、API Gateway、Lambda、SQSを組み合わせた非同期処理設計が採用されている。
リード文
アマゾン ウェブ サービス(AWS)は2026年9月4日、AIエージェント構築フレームワーク「Amazon Bedrock AgentCore」とマルチモーダル基盤モデル「Amazon Nova 2」シリーズを活用し、WhatsApp上で動作するマルチモーダル注文アシスタントを構築するソリューションを公式ブログで公開しました。
ファストフードなどのクイックサービスレストラン(QSR)を主な対象とし、テキストチャットだけでなく、ボイスメッセージやリアルタイムの音声通話を通じた注文を単一のAIシステムで完結させる設計パターンと実装手順が示されています。
チャネルの分断と運用の複雑化を解消する設計思想
従来の飲食店向け注文システムでは、専用のモバイルアプリ、ウェブサイト、電話受付、店頭カウンターなど、チャネルごとに個別のシステムを構築・運用する必要がありました。この構成は開発・運用コストを肥大化させるだけでなく、チャネルをまたぐと同一顧客の利用履歴が分断されてしまう課題を抱えていました。
今回AWSが提案するソリューションは、世界で20億人以上が利用するメッセージングアプリ「WhatsApp」を顧客との接点として活用します。顧客側は新たな専用アプリのインストールや個別ログインをすることなく、普段利用しているチャット画面からテキストの送信、音声ノートの録音、あるいは音声通話を発信することで注文を行うことができます。
テキスト・音声・通話を統合し、単一の文脈で注文を処理
本システムでは、1つのWhatsApp Business番号でAIアシスタントが稼働します。顧客からの挨拶からメニューの案内、カートへの商品追加、注文内容の確認まで、AIエージェントがエンドツーエンドで対話処理を行います。
最大の特徴は、テキスト、ボイスメッセージ、音声通話の3つのチャネルすべてで、同一のバックエンドシステムとクロスチャネルメモリ(共通の対話履歴)を共有している点です。例えば、前日にテキストチャットで注文した顧客が翌日に音声通話で連絡してきた場合でも、システムは同一人物として認識し、過去のやり取りや好みを踏まえた対応が可能だとしています。
Nova 2シリーズとMCPによる連携アーキテクチャ
本ソリューションのアーキテクチャは、「対話を処理するWhatsApp層」「各チャネルの対話を実行する3つのエージェントランタイム」「メニューやカート、注文、店舗情報を保持するバックエンド層」の3層に明確に分離されています。
AI処理の基盤には以下の技術が採用されています。
- Amazon Bedrock AgentCore: 生成AIエージェントの管理や実行を担う基盤として機能。
- Amazon Nova 2 Lite: テキストメッセージの処理を担当。「Amazon Bedrock Converse API」を介して呼び出される。
- Amazon Nova 2 Sonic: 音声ノートや通話におけるリアルタイムの音声処理・音声対話を担当。
- Model Context Protocol(MCP): AIモデルと外部ツールを標準化されたプロトコルで接続するオープン仕様。エージェントがレストラン側のバックエンドAPIと通信し、メニュー照会や注文登録を実行する手段として利用される。
対話チャネルと注文ロジックが独立しているため、将来的に新たな受付チャネルを追加または削除する場合でも、バックエンドのビジネスロジックに変更を加える必要がない設計になっています。
非同期処理とAWS CDKによるインフラ展開
外部インターフェースにはMetaが提供・管理する「Meta WhatsApp Business Platform」(Cloud API Webhook、Messages API、Media API、Calling API)を利用します。
AWS側のインフラストラクチャは「AWS Cloud Development Kit(AWS CDK)」(インフラをプログラミング言語で定義するフレームワーク)を用いて一括プロビジョニングされます。
インフラ構成の主な要素は以下のとおりです。
- Amazon API Gateway: パブリックに公開されるリージョンHTTPS Webhook(AWSマネージド証明書を使用)と、注文ロジック手前に配置されるAWS IAM認証付きバックエンドAPIの2つのREST APIを提供。
- Amazon Simple Queue Service(Amazon SQS): 受信キューおよびデッドレターキュー(処理失敗メッセージの隔離用)として機能。受信したWebhookリクエストに対して即座にHTTPステータス「200」を応答し、後続の処理を非同期キューへ渡すことで、外部通信のブロックを防止。
- AWS Lambda: Webhookの取り込み、キューからのワーカー処理、WhatsAppへのメッセージ返答送信、および注文ビジネスロジックの実行を担当。
AWSは、これらのAWSリソースを依存関係に沿ってCDKスタックとして順次デプロイすることで、サーバーレスで拡張性の高いマルチモーダル注文受付システムを容易に構築できると説明しています。