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AWS ML Blog

AWS、大規模な契約書分析におけるRAGの限界を克服する「契約インテリジェンス基盤」のアーキテクチャを公開

要点

  • 米AWSは、膨大な契約書から重要データを抽出・集計するAI契約インテリジェンスプラットフォームの構築アーキテクチャを公開した。

  • 従来のRAG(検索拡張生成)技術では、文書全体にまたがる総額計算や条件比較などの集計処理で誤った回答を返す限界が指摘されている。

  • 本アーキテクチャはAIエージェントによる自動抽出とマルチモデルによる精度検証を組み合わせ、データの正確性を確保する。

  • 組み込み分析と自然言語クエリの統合により、単一のWebアプリケーションからポートフォリオ全体の状況を即座に把握できる仕組みとなっている。

  • 米Amazon Web Services(AWS)は現地時間2026年9月29日、公式の機械学習ブログ「AWS ML Blog」において、AIを活用した契約インテリジェンスプラットフォームの構築アーキテクチャを解説する記事を公開した。Amazon QuickおよびAmazon Bedrock AgentCoreを活用し、大量のPDF契約書から重要データを抽出・集計して迅速な意思決定を支援するシステム設計が示されている。従来のAIチャットや検索拡張生成(RAG)が抱えていた大規模データ横断時の課題を解消するアプローチとして紹介されている。

契約管理現場におけるデータ抽出の負担と実務上の課題

企業の契約管理部門において、数百から数千件に及ぶベンダー契約書の管理は極めて負担の大きい業務となっている。各契約書には、契約金額、満了日、署名ステータス、主要担当者などの重要な情報が含まれているが、これらのデータはPDF形式などの非構造化データとして文書内に閉じ込められている。

記事では典型的な課題の例として、250件のベンダー契約書を抱えるポートフォリオのケースを挙げている。各契約書が10〜20ページで構成されている場合、全体で最大5,000ページもの非構造化データを処理しなければならない。経営層からは「ポートフォリオ全体の総契約額」「すでに失効している契約」「最も高額な契約」「直近で署名された取引」といった基本的な質問が繰り返し寄せられるが、その回答を得るためには多大な工数がかかる。

担当アナリストは各PDFを開き、必要な項目を探して表計算ソフトへ値をコピーする作業を250回繰り返す必要があり、新たな契約が届く前のバックログを解消するだけでも1週間以上の作業期間を要するという。さらに、経営層から追加の確認を求められるたびにデータのフィルタリングや再分析が発生し、古いデータに基づく作業や数式の破損といったリスクが常に伴う実態が説明されている。

既存のAIチャットツールとRAG手法が直面する構造的限界

こうした手作業の負担を解消するため、多くの組織がAIチャットツールや企業向けQ&Aソリューションの導入を進めている。これらのソリューションの多くは、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成。外部文書を検索して関連箇所を抽出し、生成AIに渡して回答を生成させる技術)を採用している。

RAGは、長文のテキストをチャンク(小さな断片)に分割して個別にインデックス化し、ナレッジベースに保存する仕組みを持つ。検索時には質問に最も関連性の高い上位k件(top-k)のチャンクのみを取得するセマンティック検索(意味に基づいた検索)を行うため、単一の契約書や少数の文書から「特定企業の支払い条件」といった特定の記述を探し出す用途には適している。

しかし、ポートフォリオ全体を横断する質問に対しては、RAGのアプローチは構造的な限界に直面すると記事は指摘している。「250件の契約すべての総額はいくらか」と尋ねた場合でも、システムは上位k件のチャンクしか取得せず、その限られた断片のみを合計して回答を作成する。その結果、データセット全体を対象とした合計、カウント、比較などの集計(aggregation)が行えず、システムは誤った回答を迅速かつ自信満々に返してしまうという。記事では、この課題はプロンプトの調整によって解決できるものではなく、アーキテクチャ自体の見直しが必要であると論じている。

AIエージェントとマルチモデル検証を組み合わせた新アーキテクチャ

AWSが公開した契約インテリジェンスプラットフォームは、こうした集計の課題を根本から解決するための設計を採用している。

本システムでは、まずAIエージェントを用いて契約書から必要なデータを抽出し、そのデータの正確性を担保するために複数のAIモデルを組み合わせるマルチモデルアプローチで検証を行う。これにより、人手による転記ミスや単一モデルによる誤認識を防ぎ、信頼性の高いデータセットを構築する。

さらに、抽出および検証されたデータは、組み込み分析(Embedded Analytics)機能や自然言語クエリ機能と連携する。ユーザーは単一のWebアプリケーションから自然言語で質問を入力するだけで、ポートフォリオ全体の集計値や詳細な分析結果を即座に取得できる構成になっているという。

補足

企業内で管理される契約書や取引文書の多くはPDFなどの非構造化データとして蓄積されており、個別文書の検索にとどまらず、ポートフォリオ全体を横断して正確な数値や状態を集計・可視化するシステム構成への関心が高まっている。

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