AWS、機械学習基盤「Amazon SageMaker AI」でデータサイエンス向けIDE「Positron」の利用に対応
要点
- 米アマゾン ウェブ サービス(AWS)は、データサイエンス向け統合開発環境(IDE)「Positron」がAmazon SageMaker AI上で稼働可能になったと発表した。
- IAM(Identity and Access Management)の実行ロールを活用することで、アクセスキーの管理を行うことなくAmazon S3やAmazon Athenaなどのデータソースへ直接接続できる。
- AIコーディング支援「Posit Assistant」のバックエンドとしてAmazon Bedrockを選択でき、自社AWSアカウント内で生成AIモデルを活用した開発が行える。
- 管理者がカスタムコンテナイメージを登録することで、データサイエンティストはSageMaker Studio内から直接Positronのワークスペースを立ち上げて分析やモデル開発を進められる。
米アマゾン ウェブ サービス(AWS)は2026年9月21日、公式ブログ「AWS ML Blog」において、Posit社が手掛けるデータサイエンス向け統合開発環境(IDE)「Positron」が「Amazon SageMaker AI」上で実行可能になったことを明らかにした。
データサイエンスの現場では、データの取得やR言語による統計分析、Pythonを用いた機械学習モデルの開発、推論エンドポイントのデプロイ、レポーティングといった各工程で別々のツールを行き来することが多い。今回の対応により、Positronの操作性をSageMaker AIの計算資源やセキュリティ機能と組み合わせ、一連のワークフローを単一の開発基盤上で完結できるようになるという。
認証情報不要のデータアクセスと柔軟な計算資源
SageMaker AI上でPositronを稼働させることで、開発者はクラウドならではのセキュリティとインフラ管理の恩恵を受けられる。
まず、PositronはSageMakerの「Space」に割り当てられた実行ロールの権限下で動作する。そのため、APIキーなどの認証情報を個別に保存・更新することなく、IDE上からAmazon Athena(S3上のデータをSQLで検索できるサーバーレスサービス)やAWS Glue Data Catalog、Amazon S3へ直接クエリを実行できる。
計算リソースに関しては、作業内容に応じたインスタンスサイズを選択してSpaceを起動できるほか、SageMaker AIのトレーニングプランを活用して計画的な学習処理用の計算キャパシティを事前に予約することも可能だとしている。
アカウント内で完結するAI支援と共同作業環境
AIを活用した開発支援機能も統合されている。Positronに搭載されているAIコーディングアシスタント「Posit Assistant」は、モデルプロバイダーとしてAWSの生成AIサービス「Amazon Bedrock」を利用できる。これにより、外部サービスにデータを送信することなく、自社のAWSアカウントおよび同一リージョン内に存在する基盤モデルを用いたコーディング支援を受けられる。
また、プロジェクトごとに複数の独立したSpaceを立ち上げて並行作業を進められるだけでなく、共有Spaceを作成して1つのPositron環境内で複数のメンバーが共同作業を行うことも可能だという。
管理者によるイメージ配信と開発者の利用手順
PositronをSageMaker AIで利用するにあたり、Posit社は「Amazon SageMaker Distribution」をベースとしたコンテナイメージ定義を提供している。
導入の流れとして、まず組織のプラットフォーム管理者がこの定義からコンテナイメージをビルドし、自社のAmazon Elastic Container Registry(Amazon ECR)リポジトリへプッシュする。続いてそのイメージをSageMaker AIに登録し、SageMaker Studioドメインに関連付ける。この設定が完了すると、データサイエンティストはStudio上で新規Spaceを作成する際にPositronを選択し、ブラウザ上で直接IDEを起動できるようになる。
データ探索から推論・可視化までの一連の検証例
AWSの公式ブログでは、5万件の合成ローンポートフォリオデータを用いたエンドツーエンドの検証手順が紹介されている。
この検証では、Amazon S3に格納されAWS Glue Data Catalogに登録されたデータをAmazon Athena経由で取得し、Positron上でR言語を用いて特徴量の検証を実施した。続けてPython環境で勾配ブースティングライブラリ「XGBoost」による分類モデルを学習させ、SageMaker AIのリアルタイム推論エンドポイントへデプロイしている。さらに、PythonでWebアプリを構築できる「Shiny for Python」を用いてエンドポイントを呼び出す画面を作成し、技術文書作成フレームワーク「Quarto」で作業全体のレポートを記録するまでの流れが示された。
なお、この構成を再現するための主な前提条件として、Positのライセンスおよびイメージ定義へのアクセス権、ECRやStudioドメインを設定できる管理者権限、各種AWSリソースへのアクセス権を持つ実行ロール、同一リージョンでのAmazon Bedrockモデルへのアクセス権、そしてml.t3.xlarge以上のインスタンスサイズが必要になるとしている。