AWS、自律型AIエージェントの本番運用を支援する「Amazon Bedrock AgentCore」への移行ガイドを公開
要点
- アマゾン ウェブ サービス(AWS)は、既存のAIエージェントをマネージド基盤「Amazon Bedrock AgentCore」へ移行するための実装ガイドを公開した。
- ユーザーごとのセッション分離やOSのパッチ適用、ツールの認証管理など、本番運用で生じるインフラ管理の負担を解消する手法が解説されている。
- 既存の制御グラフを維持したままのインフラ移行から、モデル駆動型プランニングへの再設計まで、3つの移行ステージが示された。
- 実行環境「Runtime」、ツール連携「Gateway」、状態管理「Memory」といった主要コンポーネントの仕様や対比が明らかにされた。
アマゾン ウェブ サービス(AWS)は2026年9月3日、同社の公式ブログ「AWS ML Blog」において、自律型AIエージェント(外部ツールを使い自律的にタスクを遂行するAIシステム)のワークロードを新基盤「Amazon Bedrock AgentCore」へ移行するための実践ガイドを公開した。
開発環境で構築されたエージェントを実際の本番環境で運用する際に発生する、セッション管理やインフラ保守などの運用課題を軽減し、大規模かつ安全に運用するための具体的な手順が示されている。
本番運用で生じる10の課題と安全対策
記事ではまず、実験段階のノートブック環境で動作するエージェントと、実ユーザーを受け入れる本番環境のエージェントとの間にある運用の違いを指摘している。
実運用が始まると、ユーザーごとのセッション分離、複数ターンや日数をまたぐ会話状態の保持、呼び出し対象となる全ツールの認証処理、基盤となるOSのパッチ適用など、推論ロジックそのものとは直接関係のない10項目に及ぶ運用負担を開発者自身が抱え込むことになるという。
こうした環境に対し、Amazon Bedrock AgentCoreはエージェントの構築、接続、大規模な最適化を担うプラットフォームとして機能すると説明されている。あわせて、本番運用の安全性を確保する手段として「Amazon Bedrock Guardrails」の導入が挙げられている。これにより、有害コンテンツのフィルタリングや参照元ドキュメントに基づく根拠の検証(グラウンディング検証)、プロンプトインジェクション(悪意ある入力によってAIの指示を不正に上書きする攻撃)の遮断といった防御策を一貫して適用できるとしている。
カスタマーサポート用エージェントを題材とした移行シナリオ
移行の具体例として、LangGraph(LLMの処理フローをグラフ構造で定義・制御するフレームワーク)で実装された顧客サポート向けエージェントが取り上げられている。
このエージェントは、受信メッセージの意図を分類し、注文状況の確認や返品手続きを行う3種類のツールを用いて回答を作成するほか、解決できない問題や怒っている顧客を有人対応へエスカレーションする構造を持つ。モデルの呼び出し自体はすでにAmazon Bedrock上で行われているものの、コンテナの管理、Webサーバーの運用、会話状態の保持はすべて開発者側のインフラ上で行われている状態を想定している。
記事によれば、この移行プロセスはコード上の4つの構成要素を変更するだけで実現でき、以下の段階的なステージとして定義されている。
- ステージ1: 既存のグラフ構造を変更せず、AgentCoreの「Runtime」「Gateway」「Memory」へ移行する。これにより、ツールのマネージド化と永続的な状態管理を備えたホスト型エージェントへと移行できる。
- ステージ2: Strands Agentsを用い、ループ処理をモデル駆動型プランニング(モデル自身が状況に応じて次の行動を計画・判断する方式)へと再構築する。
- ステージ3: エージェントの制御ループをAgentCoreのハーネス機能(AgentCore harness)へ委ねる構成とする(本稿では実装ではなく機能仕様として紹介)。
主要コンポーネントの仕様と対応関係
記事内では、LangGraphの構成要素、Strandsでの同等機能、そしてAgentCoreが提供するマネージド機能の対応関係が詳しく整理されている。
実行基盤(Runtime)
従来は開発者がコンテナやWebサーバーを用意してbuild_graphを実行していたが、AgentCoreの「Runtime」ではBedrockAgentCoreAppおよび@app.entrypoint関数を使用する。これにより、セッションごとに独立したmicroVM(極めて軽量で起動が速い仮想マシン)上でエージェントが安全にホストされる。
ツール連携(Gateway)
手動で関数をバインドしていたツール呼び出しは、「Gateway」によってAWS Lambdaターゲットへと接続される。ツールはModel Context Protocol(MCP:AIモデルと外部システムを接続するための標準規格)に準拠した形式(supportTools_<名前>)として公開・提供される。
状態・メモリ管理(Memory)
従来のMemorySaverによるスレッド管理は、AgentCoreの「Memory」機能へと移行される。actor_idとセッションをキーとしたマネージドな永続ストレージによって、ステートフルな会話履歴が維持される。
既存ロジックの柔軟な継承
記事は最後に、手作業で記述した条件分岐コードを必ずしも破棄する必要はない点にも言及している。手動の分岐をモデル駆動型に切り替えるかどうかは開発者の選択であり、Runtimeは既存のグラフ構造をそのままホストして実行することも可能であるため、従来の制御構造を損なうことなくインフラのマネージド化を進められると結論づけている。