AWS、自然言語で動画内容を検索・質問できるエージェント型AIソリューションを公開
要点
- 米Amazon Web Services(AWS)は、動画ファイルに対して自然言語で質問し即座に回答を得られるエージェント型動画解析ソリューションのアーキテクチャを公開した。
- 質問内容に応じて、AIエージェントがAmazon Bedrock、Amazon Rekognition、Amazon Transcribeを実行時に動的に判断して呼び出す。
- 解析済みの動画に対しては1秒未満で応答し、新規動画の初期解析は5〜10分程度で完了する。
- 大手メディア企業での先行導入では、200件以上の長時間録画を対象に手動確認にかかる時間を約80%削減した実績が示されている。
- ソリューションの完全な実装コードはGitHubのサンプルリポジトリ上で一般に公開されている。
米Amazon Web Services(AWS)は2026年9月23日(現地時間)、公式技術ブログ(AWS ML Blog)において、エージェント型AIを活用して動画コンテンツに対する自然言語での問い合わせを可能にする「動画インテリジェンス(Video Intelligence)」ソリューションを公開した。
アップロードされた動画に対し、チャット形式で質問を投げかけることで数秒以内に回答を取得できる仕組みとなっており、システムを構成するアーキテクチャの詳細や検証用コードが提供されている。
長時間動画の確認コストと個別パイプライン開発の壁
メディア、セキュリティ、保険、プロフェッショナルサービスをはじめとする多くの業界では、会議録画や防犯カメラの監視映像、現場の点検記録など、日常的に膨大な動画データが蓄積されている。これらの動画には、過去の議論で決定した仕様、特定人物の出入り時刻、事故発生時の経緯など価値の高い情報が含まれているものの、内容を確認するためには人間が長時間かけて視聴する必要があった。
これに対し、機械学習(ML)を活用して確認作業を自動化する試みも行われてきたが、質問や用途ごとに個別の処理パイプラインを構築しなければならないという開発上の課題が存在していた。たとえば、会議内容の確認には音声文字起こしパイプライン、映像内の検索にはコンピュータビジョンパイプライン、人物特定には顔照合の統合といったように、ユースケースごとに個別のシステム開発と保守が求められていたという。
質問に応じてAWSサービスを動的に呼び分けるエージェント設計
今回AWSが提示したソリューションは、用途ごとに固定的な処理パイプラインを用意するのではなく、単一のAIエージェントが必要な処理を実行時に自律的に判断するアーキテクチャを採用している。
具体的には、エージェント開発用フレームワークである「Strands Agents SDK」を活用し、ユーザーからの自然言語による質問を受け付ける。エージェントは入力された問い合わせ内容を解釈した上で、以下のAWSサービスを必要に応じて動的に組み合わせて呼び出す。
- Amazon Bedrock: 生成AIアプリケーションを構築するための基盤モデル提供サービス。ユーザーへの回答生成や全体の推論を担当する。
- Amazon Rekognition: 画像および動画の高度なコンピュータビジョン分析を行うサービス。人物の検出や映像内の物体・挙動認識を担当する。
- Amazon Transcribe: 音声を高精度にテキストへ変換する自動音声認識サービス。会議や会話の文字起こしを担当する。
この仕組みにより、システムは音声情報の確認が必要なのか、映像の視覚的分析が必要なのか、あるいはその両方が必要なのかを判断し、取得した結果を統合して自然な回答文を生成する。
これにより、同じシステムでありながら以下のような多様な問い合わせに柔軟に対応できると説明されている。
- 会議録画の確認: 「この会議で下された主な決定事項は何か」「予算のスケジュールについて言及はあったか」
- 防犯・監視映像の調査: 「特定の人物が映像内に現れたか」
- コンテンツの要約: 「動画の最初の30分間を要約してほしい」
- 事故・事象の調査: 「車両の衝突直前に車線変更を行ったのはどの車両か」
応答性能と提供インターフェース
応答速度に関しては、すでに一度解析が行われた動画コンテンツに対する質問であれば、1秒未満で回答が返される仕様となっている。なお、新規にアップロードされた動画の初回解析には、動画の長さや呼び出す分析サービスの内容に応じて5〜10分程度を要するという。
ユーザーインターフェースとしては、画面右側に自然言語で質問を入力・閲覧できるチャットパネル、左側には動画ファイルのアップロードや解析モードを選択できるサイドバーを備えたWebインターフェースが用意されている。
大手メディア企業での導入事例と効果
このアーキテクチャは、AWSプロフェッショナルサービスを通じた支援の中で、大手メディア・エンターテインメント企業に導入された実績を持つ。
同社では、コンサルタントが過去に実施された要件定義やディスカッションの録画アーカイブから、設計上の意思決定、アクションアイテム、各ステークホルダーの立場などを抽出する用途に本ソリューションを活用した。その結果、200件を超える数時間の録画コンテンツを対象とした処理において、アナリストが要する手動確認時間を約80%削減できたとしている(※顧客企業社内における導入前後の担当者作業時間の比較に基づく数値であり、第三者機関による独立検証は行われていない)。
実装コードの公開状況
本ソリューションの完全な実装コードは、AWSの公式GitHubリポジトリ(aws-samples/sample-media-analysis-agent)にて公開されており、開発者は自身の環境で構築・検証を行うことが可能となっている。