AWSとSalesforce Agentforceが連携、公共部門向けに非構造化データを分析・活用するソリューションを発表
要点
- AWSが、Amazon Bedrock Data AutomationとModel Context Protocol(MCP)を活用し、Salesforce Agentforceから非構造化データを検索・活用可能にするアーキテクチャを発表した。
- ボディカメラや監視カメラの映像、スキャン文書などの証拠データをAmazon S3へ集約後、イベント駆動型アーキテクチャで自動的に構造化データへ変換する。
- データの処理はAWS Lambda、Amazon DynamoDB、Amazon Bedrock Data Automation、Amazon EventBridgeを連携させて非同期に実行される。
- Salesforce側からは、Amazon Bedrock AgentCore GatewayとLambda上で稼働するMCPサーバーを経由し、AWSの分析結果へセキュアにアクセスできる。
リード文
Amazon Web Services(AWS)は2026年9月22日、公式技術ブログ「AWS ML Blog」において、SalesforceのAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」とAWSの各種サービスを統合する公共部門向けのソリューションアーキテクチャを発表した。ボディカメラ映像やスキャン文書といった膨大な非構造化データから自動的に洞察を抽出し、Salesforceの業務画面上から自然言語で検索・操作できるようにする。これにより、公共機関における証拠データの確認や分類作業の効率化を図るという。
公共機関における証拠データ処理の課題と連携の背景
警察機関や自治体などの公共部門では、日常業務や捜査活動を通じて、ボディカメラ映像、街頭の防犯カメラ映像、写真、音声記録、スキャンされた紙文書など、多種多様かつ膨大な非構造化データ(定型フォーマットを持たないデータ)が発生している。これらの証拠データを実際の業務や意思決定に役立てるためには、ファイルの内容をあらかじめ精査し、関連する詳細情報や洞察を抽出しておく必要がある。
AWSは以前の記事「Modernizing evidence management in Salesforce Public Sector Solutions with Amazon S3」において、公共部門向けソリューション「Agentforce Public Sector」(旧称:Public Sector Solutions)とAmazon Simple Storage Service(Amazon S3)を接続するファイルストレージ統合を紹介していた。この構成により、大容量のメディアファイルや文書を耐久性が高く低コストなストレージに保管する基盤は実現できたものの、保管しただけでは課題の半分しか解決できていなかったとAWSは指摘している。
自動化の仕組みがなければ、担当者が手作業で大量のファイルを確認・分類し、重要箇所を書き出す作業に多大な時間を費やすことになる。今回発表されたアーキテクチャは、この保管基盤の上に自動分析とAIエージェント連携を組み込むことで手作業の負担を解消し、Salesforceのコンソールを離れることなくAWS上の処理済みデータへ直接アクセスして高度な操作を行えるようにするものだという。
S3とBedrock Data Automationによるイベント駆動型の自動処理
発表されたソリューションは、主に2つのデータフローによって構成されている。
第1のフローでは、Salesforceの専用コネクタ「External Storage of Files with Amazon S3 for Public Sector」を使用し、収集された非構造化メディアファイルや各種文書をAmazon S3へ転送・保管する。エンタープライズ規模のストレージインフラであるAmazon S3を活用することで、容量の大きい動画や大量の文書ファイルを安定して集約できる。
第2のフローでは、S3にファイルが保存されたことをトリガーとして、マルチモーダル(画像、音声、テキストなど複数の形式)なデータを非同期に自動処理するイベント駆動型アーキテクチャが稼働する。具体的な処理手順は以下の通りである。
- ファイル登録とメタデータの保存:ファイルや文書がAmazon S3にアップロードされると、S3イベント通知がAWS Lambda(サーバーの事前準備なしにコードを実行できるコンピューティングサービス)を呼び出す。呼び出されたLambda関数は一意のドキュメントIDを生成し、関連するドキュメントメタデータとともにAmazon DynamoDB(高速なフルマネージドNoSQLデータベース)に保存する。
- データの自動解析:同時にLambda関数は、対象ファイルを処理するための「Amazon Bedrock Data Automation」ジョブを開始する。Amazon Bedrock Data Automationは、動画、音声、画像、テキストといった各メディアの種別に応じて、内容から構造化された洞察を自動的に抽出する。
- 分析結果の保存:分析ジョブが完了すると、Amazon EventBridge(システム内のイベントをルーティングするサービス)のルールによって2つ目のLambda関数が起動し、抽出された構造化データを専用の出力用S3バケットに書き込む。
この一連のイベント駆動処理により、大容量のメディアファイルが届くたびに、人間の手を介することなくバックグラウンドで自動的に構造化データへの変換が完了する。
MCPとBedrock AgentCore Gatewayを介したSalesforce連携
自動抽出された分析結果は、SalesforceのAIエージェント「Agentforce」を通じてユーザーへ提供される。
公共部門の担当者がSalesforceのAgentforceチャットインターフェースで自然言語による問い合わせを行うと、事前に設定されたアクションがトリガーされ、Model Context Protocol(MCP:AIアプリケーションと外部のデータソースやツールを標準化された形式で接続するオープンプロトコル)を通じてAWSへの呼び出しが行われる。
この呼び出しは、Amazon Bedrock AgentCoreの機能の一つである「Amazon Bedrock AgentCore Gateway」を経由してルーティングされる仕組みとなっている。AgentCore GatewayがSalesforceからのリクエストを認証した上で、AWS Lambda上で動作しているMCPサーバーを実行する。
この連携により、ユーザーは使い慣れたSalesforceの操作画面上に留まったまま、AWS上に蓄積・処理された証拠データの検索を行ったり、非構造化データから抽出された重要ポイントを確認したり、さらなる調査などの高度なアクションを対話形式で迅速に実行できると説明している。
補足
本アーキテクチャは、大量の非構造化データを抱える公共機関において、クラウドストレージによる保管基盤と生成AIによる自動分析、さらに業務エージェントとの標準プロトコル連携を組み合わせた実践例を示している。