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The Hacker News

北朝鮮のサイバー攻撃集団Kimsuky、独自サーバー上でオフラインAI環境を構築──標的型攻撃やマルウェア開発への統合を模索

要点

  • 北朝鮮の国家支援ハッカー集団「Kimsuky」が、自前のインフラ上でオフラインの大規模言語モデル(LLM)を実行する環境を構築・構成していたことが判明した。

  • 韓国のセキュリティ企業Geniansの追跡調査により、OllamaやGPT4AllなどのローカルAIツールに加え、AI開発用ライブラリやAIエディタ「Cursor」の利用痕跡が確認された。

  • 独自AIモデルの開発ではなく、既存のオープンソースツールやRAG(検索拡張生成)技術を攻撃オペレーションへ組み込むための研究・知識獲得段階にあるとされる。

  • フィッシングメールの文面作成やマルウェア開発の自動化、取得データの分析などにAIを活用する狙いがあるとみられている。

  • 韓国のセキュリティ企業Geniansは2026年8月、北朝鮮の偵察総局配下にあるサイバー攻撃グループ「Kimsuky(キムスキー)」が、自前サーバー上でオフラインの人工知能(AI)スタックを運用していることを突き止めたと発表しました。数カ月にわたるインフラの追跡とログ分析によって判明したもので、一般的なパブリックチャットボットの利用を超えて、攻撃ワークフローの深部へAIを統合しようとする兆候が捉えられています。

独自モデルではなく既存ツールの収集・検証フェーズ

Geniansの調査によると、Kimsukyが独自のAIモデルをゼロから学習させた証拠は見つかっていません。同社は、攻撃グループが既存のAIツールやソフトウェア部品を収集・テストしている「研究および知識獲得」の段階にあると分析しています。その目的は、マルウェアの作成から収集したデータの分析に至るまで、サイバー攻撃のオペレーション全体にAIを組み込むことにあるとみられています。

政府機関や研究機関などを標的として長年フィッシング攻撃を仕掛けてきた同グループにとって、AIの導入は攻撃の準備期間を短縮させ、攻撃の発見をより困難にすることを意味します。AIによって洗練された文面が生成されるようになると、これまで見破る手がかりとなっていた不自然な翻訳や不器用な書式、スペルミスといった特徴が薄れるためです。

確認されたローカルLLMツールと開発ライブラリ

GeniansがKimsukyのインフラ上で確認した中核的な証拠は、ネットワークから隔離された環境でも言語モデルを実行できる一連のオフラインツール群です。具体的には「Ollama」「GPT4All」「Msty」といったソフトウェアが確認されました。これらは単にダウンロードされただけでなく、実際に実行・設定されていたことが判明しています。Ollamaでは初回起動時に生成されるキーが作成されていたほか、GPT4Allでは手持ちの文書を参照して回答精度を高める機能「LocalDocs」(RAG:検索拡張生成)用のデータベースファイル(localdocs_v3.db)が構成されていました。

RAGは、AIモデルに独自の文書コレクションを読み込ませて回答させる仕組みです。このデータベースの存在は、攻撃者が保有する文書をAIシステムに接続しようと試みた証拠とされていますが、それらの文書が盗まれるなどして不正取得されたものかまでは特定されていません。

さらに、既製品のアプリケーションにとどまらず、開発者向けのライブラリも複数発見されました。

  • LLaMaSharp、Microsoft Semantic Kernel、Microsoft.Agents.AI: C#や.NET環境で動作するカスタムソフトウェアにAI機能を組み込むためのコンポーネント
  • OpenAI Whisper: 音声ファイルをテキスト化するためのツールと、音声から文字列を抽出するガイド文書
  • Cursor: AI機能を統合したコードエディタの稼働痕跡

これらのツール自体は一般的な開発者が利用するオープンな技術ですが、国家主導のサイバー諜報グループが意図的にこれらを組み合わせ、自らの攻撃ワークフローへAIを組み込もうとしている点が新たな動向として指摘されています。

攻撃インフラと活動の背景

調査チームはまた、オペレーターがデータセットの確認を指示したログも回収しています。そこには、暗号資産ウォレットの詳細、Gmailの認証情報、ウェブサイトの登録履歴などを精査するよう求める指示が含まれており、「分析は詳細であればあるほど良い。いい加減に行わないでほしい」と記されていました。ただし、この特定の要求が直接AIサービスに入力されたかどうかは確認されていません。

今回の活動は、Geniansが「Operation GitPower」と呼ぶKimsukyの一連の攻撃キャンペーンの延長線上にあります。このキャンペーンでは、LNKショートカットファイルからPowerShellを実行する感染フローにおいてGitHubリポジトリをC2(コマンド&コントロール)通信経路として悪用し、画像ファイルに偽装した暗号化マルウェア「AsyncRAT」を配布する手口が用いられています。同様のGitHubを悪用するC2パターンは、2026年4月にFortinetによっても韓国ユーザーを標的とした攻撃として報告されています(ただし今回のローカルAI環境の証拠はGeniansの独自発見であり、ロイターは第三者による独自検証はできていないとしています)。

現時点で、構築されたローカルモデルやRAGデータベース、文字起こしツールが実際の被害者に対して直接稼働した例や、具体的な被害規模は公表されていません。そのため、現段階では攻撃オペレーションの一部を自動化するための基盤整備が進められている状況と評価されています。

防御側に求められる視点の変化

Kimsukyは米財務省から2023年に制裁対象に指定された組織で、北朝鮮の偵察総局の配下で情報収集を主目的に活動しています。Geniansは2025年にも、同グループがChatGPTを使って生成した韓国軍職員の身分証明書画像を用いたスピアフィッシング攻撃を報告していました。

Geniansは今回の分析を受け、AIが悪用されたフィッシング攻撃ではメールの見た目だけで怪しさを判断することが難しくなるため、システム内部の不審な挙動に着目することが重要になると警鐘を鳴らしています。防御側に対しては、LNKファイルの実行、PowerShellの動作、隠しタスクのスケジュール登録、GitHubへの不審なトラフィック、その後のペイロードの活動などを相関的に監視・検知するよう呼びかけています。

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