Check Pointの管理サーバーに深刻な脆弱性、未認証でroot権限奪取の恐れ 修正パッチの適用を呼びかけ
要点
- Check Pointのセキュリティ管理サーバーなどに、認証を経ずにネットワーク経由でroot権限のコードを実行される重大な脆弱性が判明した。
- 脆弱性「CVE-2026-91843」の深刻度はCVSSスコアで9.8(最大10)と評価されているが、現時点で実際の攻撃への悪用は確認されていない。
- 認証前のログイン処理におけるスタックオーバーフローが原因であり、現行の主要バージョンからサポート終了バージョンまで幅広く影響を受ける。
- 同社は修正パッチ「LivePatch」の提供を開始しており、管理者に対して適用状況の確認や接続元制限の徹底を求めている。
リード文
セキュリティ大手のCheck Point(チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ)が提供するセキュリティ管理サーバーおよびログサーバーにおいて、認証情報を持たない攻撃者がネットワーク経由でroot権限のコードを実行できる極めて深刻な脆弱性が存在することが明らかになった。同社が2026年9月16日付のコミュニティ通知で公表したもので、脆弱性の深刻度を示すCVSSスコアは10点満点中9.8と評価されている。同社は緊急の修正プログラムを配信し、対象システムを運用する管理者に対して迅速な対応を強く促している。
ログイン処理のスタックオーバーフローに起因、極端に長いユーザー名で発火
今回公表された脆弱性は「CVE-2026-91843」として追跡されている。Security Management Server(ファイアウォールのポリシーや管理者アクセスを一元管理する中核システム)およびLog Serverにおいて、ユーザー認証が行われる前のログインリクエスト処理に存在するスタックオーバーフロー(プログラムが確保したメモリ領域を超えてデータが書き込まれる不具合)の欠陥に起因する。
インターネット調査企業のCensys(センシス)の分析によると、この脆弱性は極端に長いユーザー名を含んだログインリクエストを送信することで引き起こされるという。攻撃者がこれを利用すると、正当なログイン認証情報を一切所持していなくても、遠隔からサーバー上で最高管理者権限であるroot権限を奪取し、任意のコードを実行できる状態となる。
なお、Check PointがThe Hacker Newsに説明した内容によれば、脆弱な処理経路は「Trusted Clients(信頼できるクライアント)」設定を経由する場合に限られるという。この設定は、運用管理ツールである「SmartConsole」を通じて管理サーバーへ接続できる接続元ホストを制限する機能を指す。
影響を受ける対象製品とバージョン範囲
影響を受ける対象は多岐にわたり、管理機能とゲートウェイ機能を1台で兼ねるスタンドアロン構成、ログサーバー、複数のドメインを管理するMulti-Domain Serverにも及ぶ。修正パッケージの適用段階を示す「Jumbo Hotfix Take」の番号基準で、以下のバージョンが影響を受ける。
- R82.10: Jumbo Hotfix Take 44以下
- R82: Jumbo Hotfix Take 126以下
- R81.20: Jumbo Hotfix Take 166以下
- R81.10: Jumbo Hotfix Take 190以下
- サポート終了バージョン: R81、R80.40、R80.30、R80.20、R80.10、R80の各リリース
CVEレコードの初期リストには記載がなかった「R82.20」についても、同社ネットワークセキュリティ製品管理担当バイスプレジデントのAviv Abramovich(アヴィヴ・アブラモヴィッチ)氏が影響を受けることを認めている。Censysのアドバイザリによれば、R82.20はすべてのビルドが影響を受け、現時点で保護用のJumbo Hotfixはリリースされていない。
一方で、すでに修正が適用されているマネージドクラウドサービス「Smart-1 Cloud」については影響を受けないと、NHS England Digital(英国国民保健サービス・デジタル部門)のアラートで示されている。また、すでにサポートが終了しているR81.10以前の旧バージョン向けにも修正パッチ自体は用意されており、サポート窓口へ問い合わせることで提供を受けられるとしている。
現時点での悪用状況と公的機関の確認
本脆弱性の深刻度は極めて高いものの、公表時点において実際の悪用事例は報告されていない。Check Pointは2026年9月16日の通知で「現時点で野外での悪用(in the wild)を示す兆候はない」と説明しており、Abramovich氏も悪用の報告は届いていないと述べている。
米サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)が9月17日付でCVEレコードに添付した評価でも悪用ステータスは「なし(none)」と記録されており、9月16日公開の「悪用が確認された脆弱性カタログ(KEV)」にも登録されていない。さらに、Censysの調査でも9月16日時点で一般に公開された概念実証コード(PoC)は存在していないことが確認されている。
管理者に求められる対処手順
Check Pointはセキュリティアドバイザリ「sk1000155」を公開し、運用管理者に対して以下の対策を実施するよう呼びかけている。
- LivePatchの適用: 運用中のすべてのSecurity Management ServerおよびLog Serverに対し、sk1000155に記載されたLivePatch修正を適用する。
- 自動更新状態の確認: 自動更新を有効にしている場合でも、適用を過信せず確認を行う。サーバー上で
cplp listコマンドを実行することで、インストールされているLivePatchの一覧とステータスを把握できる。 - アクセス制御の再確認: パッチ適用の有無にかかわらず、SmartConsoleの管理アクセスを許可する「Trusted Clients」の設定が特定の信頼できるホストのみに制限されているかを確認する(「任意のIPアドレス」に開放しない)。また、管理インターフェースをインターネットへ直接公開しない構成を徹底する。
なお、同社における「自動更新」とは、SmartConsoleの「Global Properties」内「Data Access Control」にある自動更新設定(sk175504参照)を指し、セキュリティ更新プログラムなどの自動ダウンロード・インストールを有効化し、アクセスコントロールポリシーをインストールしている状態を指す。緊急修正を配信する仕組みとしてLivePatchが用いられている。