Cloudflare、AIエージェントが自律的に動作する「エージェント型インターネット」実現に向けた新規格群を発表
要点
- Cloudflareは2026年8月6日、AIエージェントが効率的かつ安全にWebを利用するための「エージェント型インターネット」構想と関連技術を発表した。
- 変更のないページを何度も読み込む無駄なクローリングを防ぎ、AIが読みやすいMarkdown形式でコンテンツを提供する仕組みを提案している。
- MozillaやGoogleらと共同開発したプライバシー保護認証規格「PACT」や、ボットが身元を証明する「Web Bot Auth」により、安全なアクセス制御を実現する。
- サイトの機能をAIから直接実行可能にする「WebMCP」や、直接決済を行う「x402」などの標準規格を通じて、エージェントによる取引の自動化を支援する。
リード文
米Cloudflareは2026年8月6日(現地時間)、AIエージェント(人間の代わりにWebを巡回して各種タスクを自律的に実行するプログラム)の急増に対応し、AIとWebサイトが共存できるオープンなインターネット「エージェント型インターネット(Agentic Internet)」の構築に向けた新たな標準規格や技術群を発表した。同社の公式ブログで公開されたこの構想は、従来の人間向けに設計されたWebをAI向けに再定義し、オープンな標準規格に基づいて誰もが実装できる仕組みを提供することを目指している。
現行Webにおける「AIボット」の課題
同社のデータによると、現在インターネット上を巡回する善良なボットによるトラフィックの多くが、コンテンツの変更がないページを繰り返し再取得する無駄なリクエストに費やされているという。これは、人間向けにデザインされたWebサイトをプログラムが巡回しているために生じる不整合であり、サーバーを運営するドメイン所有者と、AIエージェントを動かす開発者の双方にとって成果の伴わない無駄なコストを生んでいるとCloudflareは指摘する。
また、従来のWebでブラウザ情報を識別するための「User-Agent(ユーザーエージェント)」は、ドキュメントの読み込みやコードの記述を自動で行う「AIエージェント」へと進化している。エージェントはWebサイトのデザイン(CSS)や広告を目にすることはないが、その背後には処理コストとなる「トークン(AIモデルがテキストを処理・生成する際の最小単位)」を支払う人間が存在し、明確な目的を持ってアクセスしている。そのため、これらのボットを一律で「スクレイパー(Webサイトから自動的に情報を収集・抽出するプログラム)」として遮断することは、顧客を失うことにつながると説明している。
「読み取り可能(Readable)」にする技術
Cloudflareは、エージェントが効率的にWebを利用できるよう「読み取りやすさ」を向上させる技術を提案している。
その一つが「Markdown for Agents(エージェント向けMarkdown)」である。これはサーバー側でWebページをHTMLではなく、AIが理解しやすくデータ転送量やトークンの消費を抑えられる「Markdown(記号を用いて文書構造を簡単に記述できる軽量なテキスト形式)」に変換して提供する仕様である。
さらに、クライアント側の技術として、エージェント向けに特化した軽量ブラウザ「Kitesurf(カイトサーフ)」を発表した。これは同社のサーバーレス開発プラットフォームである「Workers(サーバーの管理を必要とせずにプログラムを実行できる環境)」上でリクエストごとに起動し、処理が終わると破棄される。人間向けブラウザに必要な描画処理などの肥大化した機能を排除し、エージェントが必要とするコンテンツのみを効率的に取得できるという。
「発見可能(Discoverable)」にする技術
エージェントがWeb上の情報や機能を見つけるための仕組みも提供される。
「AI Search(AI検索)」は、従来の人間がキーワードを入力してスクロールする検索窓とは異なり、エージェントが直接情報を探索できる専用の検索インターフェースを提供する。
また、ドメイン所有者が自社のコンテンツがAIモデルやエージェントにどの程度認知されているかを測定する「Agent Engine Optimization(AEO、エージェントエンジン最適化)」も導入される。AEOにより、主要なAIモデルにおける自社ブランドの露出度を可視化できるようになる。
「呼び出し可能(Callable)」と「支払い可能(Payable)」にする技術
エージェントがWebサイト上で「予約する」「購入する」などのアクションを直接実行できるようにするための規格も整備される。
現在、エージェントがWebページ上でボタンをクリックするなどの操作を行うには、HTMLの構造を解析して目的の要素を推測する必要があり、Webサイトの構造変更によってエラーが起きやすい課題があった。「WebMCP」は、Webサイトの機能をエージェントに向けて直接公開し、構造の変更に影響されずに安全に操作を呼び出せるようにする規格である(WebMCPは、AIモデルとシステム間で安全に通信を行うための共通規格であるModel Context ProtocolをWeb向けに適用した仕組み)。これにより、エージェントが「DOM(ブラウザがWebページの構造を解析し、プログラムから操作できるようにしたデータ表現)」の変更に悩まされることなく、直接アクションを実行可能になる。
さらに、エージェントが直接決済を行うための支払い規格として「x402」の採用を進める。これにより、特定の大手プラットフォームを経由せずに直接販売者へ支払う手段が提供される。
アイデンティティと安全なアクセスの両立
これらの連携を支える基盤として、同社は身元確認と認証の規格も発表している。
「Web Bot Auth」は、アクセスしてきたボットが暗号技術を用いて身元をサイトに証明する規格であり、ボットの偽装を防ぐ。また、Mozilla、Google、Microsoft、Shopifyと共同で発表した「Private Access Control Tokens(PACT)」は、あるサイトでのログイン履歴や購入実績をもとに匿名で信頼性を保証するトークンを発行し、エージェントが別のサイトでそのトークンを提示することで、摩擦のないアクセスを可能にするプライバシー保護プロトコルである。
補足
Cloudflareは、これらのオープンな標準規格は誰でも実装可能であり、同社自身もこの共通の仕組みを利用する一参加者として「エージェント型インターネット」の普及を後押ししていくとしている。