Cloudflare、AI検索時代における新たなWeb経済モデルの構築に向けた2つの取り組みを発表
要点
- 米Cloudflareは2026年7月1日、AI検索の普及によって損なわれつつある従来のWeb経済モデルを再構築するための2つの取り組みを発表した。
- 1つ目は、ネットワークシグナルを活用してコンテンツの更新状況をAI検索エンジンに伝え、無駄な巡回(クローリング)を減らす研究プログラムである。
- 2つ目は、AIによるコンテンツ利用実績に応じて対価を支払う仕組み「Pay Per Use(利用ごとの課金)」の実験で、複数のAI企業と協力を開始した。
- AI要約の提示によりリンククリック率が大幅に低下している現状に対処し、Webサイト運営者が適正な報酬を得られる環境の実現を目指す。
リード文
米ネットワークサービス大手のCloudflare(クラウドフレア)は2026年7月1日、AI技術を用いた「回答エンジン(AI検索エンジン)」の普及に伴うWeb経済モデルの崩壊を防ぐため、新たな経済モデルを構築するための2つの取り組みを発表した。同社の発表によると、AI検索エンジンによる不要なWebサイト巡回を削減して検索精度を高める研究プログラムと、コンテンツの利用実績に応じて対価を支払う「Pay Per Use(ペイ・パー・ユース)」の枠組みを始動したという。これにより、Webサイト運営者がAIへのコンテンツ提供と適正な対価の獲得を両立できる環境の実現を目指すとしている。
AI検索の台頭と従来のWeb経済モデルの危機
従来のインターネットでは、検索エンジンに巡回(クローリング、検索エンジンなどが自動で情報を収集するためにWebサイトを巡回すること)を許可する代わりにサイトへ訪問者が送られ、それが運営者の収益につながる約束事が約30年間成り立っていた。しかしAI検索の台頭により、回答エンジンがページを読み込んで要約を提示するため、ユーザーが元サイトを訪問する必要性が薄れている。ピュー・リサーチ・センターが2025年7月に実施した調査によれば、検索結果にAI要約が表示された場合、ユーザーが従来の検索結果リンクをクリックする割合はわずか8%にとどまり、AI要約内のリンクをクリックするのは1%にすぎない。これによりサイト運営者は、AIへのアクセスを拒否して見つかりにくくなるか、無償でコンテンツを提供し続けるかという厳しい選択を迫られているという。
AI検索をスマートにし、不要な巡回を削減する研究プログラム
この課題に対し、Cloudflareはアクセスを遮断するだけでなく、新たなビジネスモデルを構築するための2つのアプローチを提示した。
その第1の取り組みが、AI検索をスマートにして無駄な巡回コストを防ぐための研究プログラムである。Webの20%以上が経由する同社のネットワークデータから、コンテンツの変更有無やトラフィック動向を把握し、回答エンジンと共有する。これによりAI側は最新かつ高品質なコンテンツを効率的に発見でき、サイト運営者はユーザーの関心やAI結果への表示状況を把握できるようになる。
特に不要な巡回の削減効果は大きい。同社のデータでは、善意のbot(ボット、自動処理を行うプログラム)による巡回の50%以上が、内容が変わっていないページへの再取得に費やされているという。この無駄を省くことで、AI企業の計算コストとサイト運営者のサーバー費用の双方が削減できる。本プログラムは検索に限定され、コンテンツそのものの共有や基盤モデル(多くのタスクに応用できる大規模なAIモデル)の学習への利用は行わない。年内にはネットワーク全体で広く提供する予定としている。
「クロールごと」から「利用ごと」の課金モデルへ
2つ目の取り組みは、コンテンツが回答に利用された回数に応じて対価を支払う仕組みの構築だ。同社は昨年、AI企業が巡回する際に課金できる「Pay Per Crawl」を導入したが、巡回頻度は実際の価値と必ずしも一致しない。そこで、より公平な還元方法として、利用実績に基づく「Pay Per Use(ペイ・パー・ユース)」へと移行を進めている。
同社は、コンテンツが無料で収集(スクレイピング、Webサイトから自動的に情報を抽出すること)される代わりに適切な報酬を得られる仕組みが、オリジナルコンテンツを制作し続けるインセンティブになると説明する。現在、Ceramic.ai(セラミック・エーアイ)やYou.com(ユー・ドットコム)といった大手のAI開発企業と協力し、実証実験を開始しているという。