Cloudflare、非構造化データから数値を高速抽出・予測する新モデル「Clairic」を発表
要点
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米Cloudflareは2026年10月19日、非構造化データから値の抽出や計算、予測を行う新モデル「Clairic」のプレビュー版を発表した。
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認知心理学の「System 1(速い思考)」に着想を得た抽出特化型モデルであり、トークン生成を行わず単一のフォワードパスで処理を完了する。
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抽出値や計算値に加え、80%信頼区間を伴う推定値や予測値の出力に対応し、ハルシネーションが発生しない型安全な仕様となっている。
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課金は入力トークンのみで通常1秒未満で応答し、Workers AIでの提供に加えて近日中にオープンウェイト版も公開される予定だという。
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米Cloudflareは2026年10月19日、テキストや画像などの非構造化データから値を抽出・計算・予測する新モデル「Clairic」のプレビュー版を発表した。同社のサーバーレスAI推論基盤「Workers AI」上でホスト提供が始まっており、近日中にオープンウェイト(モデルの重みデータ公開)としての提供も予定されている。従来のLLM(大規模言語モデル)と比較して、高い精度、高速な応答性、大幅に安価なコストを実現したと説明している。
LLMの非効率を解消する「System 1」型アプローチ
請求書の合計金額や配達日、遅延日数、修理費用といった特定のデータ抽出タスクにおいて、現在多くのシステムが最先端のLLMを呼び出している。しかし、文章を1単語ずつ生成しながら推論を進めるLLMの仕組みは、あらかじめ答えの型が決まっている定型的なデータ抽出に対して計算資源や処理速度の面で非効率であった。
こうした課題に対し、ダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』で示された人間の思考様式に着想を得たのが「System 1」モデルである。直感的かつ高速に処理するSystem 1(速い思考)と、熟慮を重ねるSystem 2(遅い思考、LLMに相当)の対比において、特定用途に絞ることで高速かつ安価な処理を目指す試みだ。2026年9月に米TypeSafeが意思決定モデル「Jev」を発表したことで業界の注目を集めていた。
従来のSystem 1モデル(JevやCloudflareの「Clef」)は、事前に用意した質問や選択肢に対して確率を割り振る「決定モデル」であった。それに対しClairicは、事前に選択肢を用意できない未知の数値を抽出・予測する「抽出モデル」という新たな領域を開拓するものだという。
4種類の出力形式とハルシネーションの排除
Clairicは、入力データから抽出または算出した結果を型安全な値として出力する。対応する出力形式は以下の4種類に大別される。
- 抽出値(Extracted values): 入力テキストからそのまま抜き出した文字列(名前、注文ID、説明文など)。該当箇所の文字位置(オフセット)と信頼度スコアを伴って返される。
- 計算値(Computed values): 入力から読み取るか算出した数値、日付、時刻、日時、期間、リスト。各型の規則(例: セント単位の小数点2桁など)に厳密に従い、信頼度スコアが付与される。
- 推定値(Estimated values): 入力に直接明記されていないものの、根拠が存在する数値。指定された最小値・最大値や目盛りの範囲内で、中央値と80%信頼区間を持つ確率分布として出力される。
- 予測値(Forecasted values): 時系列データの将来推計値。先々のステップごとに80%信頼区間を伴った推定値が返される。
同モデルはトークンを逐次生成しないため、LLMのようなハルシネーション(もっともらしい嘘を出力する現象)や型不一致の出力を起こさない設計となっている。入力内に対象データが存在しない場合はnullを返し、出力ごとに信頼度スコアが付くため、処理結果の信頼性を客観的に評価できるとしている。
単一パス処理による高速動作と低コストな料金体系
ClairicのAPIリクエストは、対象データ(テキストおよび最大4枚の画像)を表す state と、抽出項目を定義する fields のマップで構成される。各フィールドには項目名、データ型、および自然言語による指示を指定する。対応する型にはテキスト、数値、日付、時刻、期間、リスト、推定値、予測値が用意されている。
リクエストを受けると、モデルは単一の並列フォワードパス(順方向の計算処理)のみですべてのフィールドに対する型付きの回答を同時に導出する。推論やトークン生成の工程が存在しないため、一般的なLLMが数秒を要するのに対し、Clairicは通常1秒未満で応答する。
また、出力トークンに対する課金が発生せず、入力トークンに対してのみ課金される仕組みとなっており、従来のLLM呼び出しと比較して運用コストを大幅に抑えられるという。
モデル連携の役割分担と今後の展開
Cloudflareは、抽出モデル、決定モデル、LLMを組み合わせた協調エコシステムを提唱している。抽出モデル(Clairic)が生データを型付きの値に変換し、決定モデル(ClefやJev)がその値をもとに判断を下し、LLMがその判断を文章化するという役割分担により、現実世界のデータ処理を効率化できると説明している。
Clairicは現在、Workers AI上で @cf/cloudflare/clairic としてプレビュー版がホスト提供されている。同社は今後、オープンウェイトモデルとしての一般公開も予定していると明かしている。