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Cloudflare AI Blog

Cloudflare、欧州発のオープンAIモデル「EuroLLM」「Apertus」をWorkers AIに追加 特定モデルに依存しないセキュリティ防御支援も開始

要点

  • Cloudflareは自社のエッジAIプラットフォーム「Workers AI」において、欧州の公的機関などが開発したオープン言語モデル「EuroLLM」および「Apertus」へのアクセス受付を開始した。

  • スイス発の「Apertus」は1,500以上の言語に対応し、重みや学習データまで完全公開されたモデルで、EU AI法やGDPRに配慮した設計がなされている。

  • 政府機関や重要インフラ事業者を対象に、単一モデルに依存しないAI防御体制を構築するための実践的ワークショップを2026年10月のシンガポールを皮切りに開始する。

  • 過去1年間に追加された日本、インド、シンガポールのオープンモデルを活用し、行政支援や医療現場などで地域課題を解決するアプリケーションが多数開発された実績も公表された。

  • Cloudflareは2026年10月1日、同社の年次イベント「Birthday Week」の一環として、欧州の研究機関が開発した2種類のオープン言語モデル「EuroLLM」と「Apertus」をエッジ推論基盤「Workers AI」へ導入し、利用申請の受付を開始したと発表した。あわせて、特定のモデルに依存することなくサイバー攻撃に対処する防御網の構築ワークショップを各国政府や重要インフラ事業者向けに展開することも明らかにした。

  • 同社は一握りの巨大企業や特定の国が提供するAIモデルへの過度な依存が国家や組織のレジリエンス(回復力や強靭性)を損なうリスクを指摘しており、モデルの選択肢と主権(ソブリンAI)を確保するための取り組みを推進している。

欧州の公的機関が主導する2つの多言語オープンモデル

今回Workers AIに追加されたのは、欧州の公的大学や研究機関が中心となって開発した多言語対応のオープンモデルである。

「EuroLLM」は、欧州連合(EU)の全24公用語を含む35言語をカバーするモデルだ。既存のオープンモデルでは十分に対応されていなかった言語環境を支援することを目的としており、欧州の助成プログラム「Horizon Europe」や欧州研究評議会(ERC)、EuroHPCの支援を受けて開発された。リスボン大学の高等技術研究所(Instituto Superior Técnico)、エディンバラ大学、パリ・サクレー大学、ソルボンヌ大学、アムステルダム大学、Naver Labsなどが参加するコンソーシアムが主導し、スーパーコンピュータ「MareNostrum 5」を用いて学習が行われた。開発元によると、同規模のモデルと比較してEU多言語ベンチマークや機械翻訳において優れた性能を発揮するという。

もう一方の「Apertus」は、スイス初の大規模かつ完全にオープンな多言語モデルである。スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)、スイス国立スーパーコンピューティングセンター(CSCS)による「Swiss AI Initiative」の一環として開発された。CSCSのスーパーコンピュータ「Alps」(1万基以上のGH200 GPUを搭載)を使用し、1,500以上の言語にわたる15兆トークン(AIが文章を処理する最小単位)以上のデータで学習されている。学習データの40%は英語以外の言語で構成されている。

Apertusの特徴は、モデルのアーキテクチャや重み(パラメータ)だけでなく、学習データセットや学習手法に至るまですべて公開されている点にある。また、欧州の包括的なAI規制である「EU AI法」や「GDPR(一般データ保護規則)」への適合を念頭に設計されており、学習データのオプトアウト尊重、個人情報の事前除去、データの丸暗記(過学習による機密漏洩)防止策が講じられている。ロマンシュ語やスイスドイツ語といった地域言語から、アジア・アフリカの低リソース言語において、主要な商用モデルやオープンモデルを大きく上回る性能を示したと報告されている。

アジア太平洋地域におけるオープンモデルの実用事例

Cloudflareは、先行してWorkers AIへ追加されていた日本、インド、シンガポールのオープンモデルを用いた実践的な開発事例についても紹介した。これらは現地のパートナーと共同開催したハッカソンなどを通じて開発されたものである。

  • Form Mitra(インド): インド工科大学デリー校の学生が開発した支援ツール。難解な英語で書かれた公的給付の申請書類に対し、AI4Bharatの言語モデル「IndicTrans2」を活用してインドの22言語に対応した音声ガイダンスを提供し、読字が困難な住民や視覚障害者を支援する。
  • MedBridge(シンガポール): 東南アジア各地から集まる看護師と高齢患者の間の言語ギャップを解消する医療支援システム。福建語や広東語などの方言を含む14言語で健康に関する対話をナビゲートし、臨床情報の伝達漏れを防ぐ。
  • あんしんコンシェルジュ(日本): 高齢者やデジタル機器の扱いに不慣れな住民向けに開発されたプロトタイプ。「膝が痛い」「スマートフォンに見慣れない画面が出た」といった日常的な言葉で相談内容を入力すると、ワンタップで東京都の適切な相談窓口や関連ウェブページに接続する。

単一モデル依存を排除するセキュリティ防御と世界展開

AIを活用した脆弱性検知などのセキュリティ技術が進展する一方、特定のフロンティアモデル(最先端の大規模モデル)だけに防御体制を依存していると、提供元の利用制限や地政学的要因によってアクセスが遮断された際に防衛能力が失われるリスクがある。

こうした課題に対し、Cloudflareのセキュリティチームは社内実践として、単一のモデルに依存しないAI防御フレームワーク(ハーネス:複数モデルの並列処理を制御・統括する基盤)を開発・オープンソース化した。この仕組みでは、複数のAIモデルを並列に協調動作させ、脆弱性の探索、検知結果の検証、脅威の優先度判定を分散して実行する。

同社はこの知見をもとに、各国のサイバーセキュリティ機関や重要インフラ事業者を支援する実践型ワークショップの提供を開始する。第1回は2026年10月にシンガポールで開催される予定だ。

Cloudflareは現在、世界125カ国以上・335都市以上に分散ネットワークを展開しており、そのうち230都市以上の拠点にAI推論用のGPUを配備している。同社は今後も分散型インフラとオープンモデルの拡充を通じて、特定の単一企業に依存しないAI利用環境の提供を続けるとしている。

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