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AWS ML Blog

Cohere HealthがAmazon Bedrock AgentCoreを採用、医療保険ポリシーのデジタル化時間を30%削減

要点

  • 米国の医療インテリジェンス企業Cohere Healthが、医療事前承認ポリシーのデジタル化システム「Cohere Policy Studio」にAmazon Bedrock AgentCoreを採用した。

  • セキュアなMicroVMによるテナント分離、統一ゲートウェイ、セッションメモリ、およびオープン標準「Agent Skills」を組み合わせたマルチテナント型エージェントアーキテクチャを構築した。

  • 1件あたりのポリシーデジタル化時間を2時間15分から1時間35分へ30%短縮し、エージェントの本番導入期間も従来の3〜4か月から2〜6週間へと大幅に短縮した。

  • 次のステップとしてAmazon Neptuneを用いたナレッジグラフの開発を進めており、標準的な臨床用語体系と連携させたリアルタイム承認支援を目指している。

  • 米国の医療インテリジェンス企業であるCohere Healthが、Amazon Bedrock AgentCoreを活用して臨床ポリシーのデジタル化基盤を構築した事例が、2026年8月7日付けのAWS公式機械学習ブログ(AWS ML Blog)で公開された。同社は「Cohere Policy Studio」を通じて、これまで手作業に依存していた医療保険の事前承認ルールの構造化と運用を効率化させたという。

医療事前承認におけるポリシーデジタル化の背景と課題

医療事前承認(保険会社が特定の治療や投薬をカバーする前に行う承認プロセス)は、医療現場において最も手作業が多く残る分野の一つとされている。承認基準を定めた臨床ポリシーが静的な文書やPDFといった非構造化フォーマットのまま管理されており、自動化が困難だったことが要因だ。さらにポリシーは診療領域や地域、保険会社ごとに異なり、医療技術の進歩に伴って頻繁に改定される。

これに加え、米国の医療規制や業界目標への対応も急務となっていた。米メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)の規制により、保険会社は2027年1月までにAPIベースの電子事前承認をサポートすることが義務付けられている。また、米医療保険協会(AHIP)の取り組みでは、電子申請の80%でリアルタイム承認を達成することが求められている。これらを満たすため、ポリシーを機械可読な構造化データへと迅速に変換・管理する仕組みが必要とされていた。

AgentCoreによるマルチテナント型アーキテクチャの構築

Cohere Healthはこれらの課題に対応するため、Amazon Bedrock AgentCoreを中核に据えたアーキテクチャを採用した。複数の保険会社にサービスを提供する上で必須となるデータ分離や、エージェント運用の効率化を実現するため、主に以下のコンポーネントが組み合わされている。

  • MicroVMによるセキュアな分離とベースイメージ運用
    テナント間の厳格なデータ分離を担保するため、セッションごとに専用の計算資源やメモリ、ファイルシステムを割り当てるAgentCore RuntimeのMicroVM(軽量仮想マシン)を活用している。また、LangChainを含む共通環境をAmazon Elastic Container Registry(Amazon ECR)のベースイメージとして共通化し、チームごとの設定ファイル(YAML)のみを差し替える2層のデプロイ方式を採用した。これにより、エージェントごとに実行環境を一から再構築する手間を省いている。

  • AgentCore Gatewayによるツールとスキルの統合
    エージェントが使用するAWS Lambda関数や各種内部APIへのアクセスは、AgentCore Gatewayを通じて単一の認証エンドポイントに集約された。Model Context Protocol(MCP:AIモデルと外部ツールを接続するオープン規格)に対応したルーティングが行われ、エージェント本体を再デプロイすることなく新たなツールを追加できる構成となっている。

  • Agent Skillsオープン標準と評価プロセス
    専門知識をインフラから分離するため、オープン標準「Agent Skills」を採用した。臨床ポリシーの専門家が直接スキルを記述・改定できる環境を整え、機械学習エンジニアリングとデータサイエンスの連携のもとで精度や網羅性を検証している。本番環境への導入後は、Arize AIを用いたメトリクス追跡と専門家による出力のアノテーションを組み合わせ、品質の維持と改善を継続しているという。

デジタル化所要時間の短縮と開発期間の短縮効果

このアーキテクチャの導入により、Cohere Healthは具体的な成果を上げている。ポリシー1件あたりのデジタル化に要する時間は、従来の2時間15分から1時間35分へと30%短縮された。また、製品内へのフルエージェント導入期間についても、従来の3〜4か月から2〜6週間へと大幅に圧縮されたと報告されている。

Cohere Healthの最高医療責任者(CMO)を務めるBrian Covino医師は、事前承認ポリシーのレビューにおいて解釈の複雑さとバージョン管理の両立が極めて重要であると指摘した上で、AgentCoreのメモリ機能やバージョン追跡、マルチテナント分離によって、決定の臨床的根拠を追跡・検証可能な形で提供できるようになったと述べている。

今後の展開:ナレッジグラフとの連携

Cohere Healthは現在、AWS Generative AI Innovation Centerとの協業により、Amazon Neptuneを活用した臨床ポリシーのナレッジグラフ構築を進めている。UMLSやSNOMEDといった標準的な医療オントロジー(概念体系)や各種診療報酬コード(ICD-10、CPT、HCPCS)とポリシーを意味的に結びつけることで、新しい適応症に対するポリシーの展開時間を数日から数時間へと短縮することを目指している。

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