DeepSeek V4の普及とエージェント処理におけるトークンシェア拡大の背景を解説
要点
- LLMプラットフォーム「OpenRouter」におけるDeepSeek最新モデル「V4」のシェア拡大と、その要因であるエージェント処理への採用動向を解説する。
- 2026年4月にリリースされた「V4」は、同プラットフォームにおけるDeepSeekのトークンシェアを約2倍(約20%)に押し上げた。
- 通常の約15倍のトークンを消費するエージェント型ワークロードにおいて、コスト効率に優れた「V4-Flash」が急速に選ばれている。
- 2026年に入り、中国製LLM全体のシェアが拡大し、6月初頭には米国製モデル全体のシェアを上回った。
導入
AIの利用形態が「人間との対話」から「自律的なエージェント処理」へと移行する中、オープンソースLLM(大規模言語モデル)の分野でDeepSeekが存在感を高めている。同社が2026年4月にリリースした最新フラッグシップモデル「V4」は、API仲介サービス「OpenRouter」で急速に利用率を伸ばした。本記事では、このV4モデルがどのようにエージェント処理のシェアを獲得し、市場の勢力図を変えているのかを解説する。
本文
DeepSeek V4によるシェア急増の経緯
DeepSeekは2026年4月24日に最新のV4ファミリーをリリースした。これにより、OpenRouterでの同社のトークンシェア(消費されたトークン量の割合)は劇的に変化した。
年初時点で約10%だったシェアは、2〜3月にエージェント処理が普及し始めると競合に押されて一時5%まで低下した。しかし、V4リリースを機に利用が急増し、6月初頭にはシェアが約20%へと倍増した。5月中旬以降、DeepSeekはOpenRouter上で最も多く利用されるモデルの座を維持している。
エージェント処理における採用とV4-Flashの躍進
今回のシェア倍増を牽引したのが、AIエージェントによる自律的な処理である「エージェント型ワークロード」である。
エージェント処理はツール呼び出しや複数回のやり取りを伴うため、人間による通常の利用に比べて1リクエストあたり約15倍のトークン(テキストを処理する最小単位)を消費する。同プラットフォームでは2026年2月初頭にエージェントのトークン使用量が人間を上回った。
ユーザー動向を見ると、通常の対話などでは旧モデル「V3.2」が使われ続ける一方、エージェント処理では新モデルへの移行が速く、5月末時点でエージェント向けトークン流量の70%を「V4-Flash」が占めた。
圧倒的なコストパフォーマンスと組織への浸透
DeepSeek V4が選ばれる最大の理由は、極めて高いコストパフォーマンスにある。
V4-Flashの料金は100万トークン(テキストの単位)あたり入力0.09ドル、出力0.18ドルである。これに対して、競合の米国製主要モデル「GPT-5.5」は入力5ドル、出力30ドルである。
大量のトークンを消費するエージェント処理において、この価格差は運用コストに直結する。品質とコスト効率のバランスが優れているため、多くの組織が本番環境のエージェント処理に採用し始めている。なお、非常に安価であるため、トークン消費量の急増に比べて、支出額のシェアはそれほど増えていない。
米国製モデルと中国製モデルの競争バランスの変化
DeepSeek V4の台頭は、米国製AIモデルと中国製AIモデルのシェアにも変化をもたらしている。
2025年は米国製モデルが全体の約4分の3を占めていたが、2026年に入ると、DeepSeekに加えXiaomi、Minimax、Tencentといった中国製オープンソースモデルのシェアが上昇した。結果として、6月初頭には中国製モデル全体のトークンシェアが米国製を追い抜く形となった。これは、高価な米国の大手モデルの代わりに、安価で強力なオープンソースモデルを組み合わせて運用する動きが広がっているためである。
補足
本データは、OpenRouterが2026年1月1日から6月14日までに記録した450兆トークン以上のリクエストログに基づいている。ここでいう「シェア」はトークンボリューム(入力と出力の合計トークン数)の割合を指し、実際の支出額の割合とは異なる点に留意されたい。