DeepSeekが独自のAI推論チップ開発に着手か、NVIDIA依存脱却とコスト削減を目指す
要点
- 中国のAIスタートアップDeepSeekが、AIの「推論」処理に特化した独自のAIチップ開発プロジェクトを開始したと報じられた。
- プロジェクトは約1年前に始動しており、同社はチップのアーキテクチャ設計や検証、ソフトウェア対応などのエンジニア採用を密かに強化している。
- 独自チップ開発の目的は、カスタム設計のプロセッサによって計算コストを削減し、NVIDIAなどの海外サプライヤーへの依存度を下げることにある。
- チップ開発には設計から量産まで1年以上を要するため、AIチップ市場の競争環境に即座に影響を与える可能性は低いとみられている。
- 同社は現在約70億ドルの資金調達を交渉中と報じられており、調達完了時はチップ開発やインフラ整備が最優先事項になる見込み。
リード文
中国のAIスタートアップであるDeepSeek(ディープシーク)が、独自のAIチップ開発プロジェクトに着手していることが、ロイターの報道により明らかになった。このプロジェクトは主にAIの「推論」(学習済みのAIモデルを使ってデータから予測や判断を行う処理)に焦点を当てており、独自のプロセッサを導入することで運用コストの削減を目指しているという。また、米NVIDIA(エヌビディア)など海外サプライヤーへの依存度を低減させる戦略的な意図もあるとされる。なお、DeepSeek側は現時点で公式なコメントを発表していない。
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推論特化型チップ開発の背景
関係者によると、DeepSeekがこの独自チップ開発プロジェクトを開始したのは約1年前であるという。近年、生成AIの用途がモデルの学習から実サービスでの大規模な推論へとシフトする中、多くのAI開発企業がハードウェア領域への関心を強めている。
モデルの学習には一時的な集中演算が必要な一方、推論は大量のユーザーリクエストを継続的に処理し続けなければならない。そのため、推論処理においてはコスト効率や消費電力、システムの信頼性が重視される。同社の独自チップはこうした推論の特性を考慮して設計されており、現時点ではモデルの学習用ではなく、推論用途に特化した初期段階のものだという。
非公開でのエンジニア採用とチーム構築
DeepSeekはここ数カ月間、チップ開発に向けた人材採用を非公開で強化しているとされる。同社は公開の求人募集を行わず、実績のある半導体エンジニアに対して直接アプローチする形で、静かにチームを構築してきた。
このチームは、チップの基本設計を行うアーキテクチャ担当、設計回路の動作を確認する検証担当、開発したハードウェアをソフトウェア上で適切に動作させるための「ソフトウェア・イネーブルメント」(ハードウェアをソフトウェアに適合させ機能させるための対応)担当など、開発の全工程をカバーする専門家で構成されているという。
増大する計算インフラ費用とカスタムチップの戦略性
オープンソースモデル「DeepSeek-V3」や推論モデル「R1」で注目を集める同社にとって、需要拡大に伴う計算インフラの運営費用は最大の営業費用の1つとなっている。
一般にAI企業の計算費用は営業全体の半分以上を占めることがあり、先端GPU(画像処理半導体。AIの計算処理を高速化するためのデバイス)の供給制限や高コストが重なって、多くの企業でカスタムチップの自社開発が進む要因となっている。独自チップ開発は、長期的なコスト削減や配備効率の向上、競争力強化に繋がる戦略的な優先事項として、世界の主要なAI企業において重視され始めている。
実用化への課題と今後の展望
ただし、半導体の独自開発は大規模な資金と年月を要する取り組みだ。設計から「テープアウト」(設計完了した半導体データを製造工場に送り、試作製造に回す工程)を経て量産に至るには通常1年以上かかるため、このプロジェクトが世界のAIチップ市場の競争環境に即座に影響を与える可能性は低い。
一方で、DeepSeekは現在、初の外部資金調達ラウンドを模索していると報じられている。これまでの報道によると、同社はテンセントやCATLなどの投資家から、520億〜590億ドルの企業評価額で約70億ドルを調達する交渉を進めている。この資金調達が完了すれば、チップ開発やAIインフラへの投資が最優先事項になる見込みだ。