第44回日本ロボット学会学術講演会が開催、Physical AIの社会実装やロボット基盤モデルを巡る研究成果が報告
要点
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第44回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2026)が金沢大学で開催され、産学官によるフォーラムや最新の研究発表が行われた。
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オープンフォーラムでは、現在のVLA(視覚・言語・行動モデル)の到達点と課題、社会実装に向けた現場開拓や人材育成の重要性が議論された。
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企業や大学から、模倣学習の依存度制御、LLMを用いた動作生成プロンプトの評価、ロボットの涙が子どもの感情認識に与える影響など多彩な成果が報告された。
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2026年9月1日から4日にかけて、金沢大学(石川県金沢市)において「第44回日本ロボット学会学術講演会(RSJ2026)」が開催された。実世界で物理的な作業や移動を行うAI技術「Physical AI」への関心が高まる中、現地では学術発表のほか、一般公開のオープンフォーラムも実施された。参加した株式会社ABEJAなどの技術者により、フォーラムでの議論や注目された研究論文の概要が報告されている。
Physical AIの到達点と社会実装の課題を議論
併設されたオープンフォーラム「社会実装に向けたPhysical AIの現在と今後の展開」では、研究者や産業界、行政関係者が登壇し、技術の現状と実用化に向けた道筋が語られた。
講演では、フィジカルAI技術が「模倣学習(手本となる動作データから学習する手法)」「強化学習」「基盤モデルのロボット応用」「ロボット基盤モデル」の4領域に整理された。単一タスクや歩行などの運動性能では人間を超える成果が出始めている一方、画像・言語・行動を統合するVLA(Vision-Language-Actionモデル)は実質的に模倣学習の延長にとどまっているとの指摘がなされた。今後は環境や作業、ロボットの身体構造の変化に対応する適応性や汎化性への取り組みが重要視されるとし、ムーンショット型研究開発事業の「MIRAI Humanoid」プロジェクトなどの取り組みも紹介された。
続くパネルディスカッションでは、先行する中国の世界ロボット大会で見られるデモが高水準である一方、特定タスクへの特化が中心である現状が共有された。社会実装に向けては、サービスロボットの有望な用途の発見や実証の現場を早期に確保すること、過度な期待(ハイプ)が落ち着いた後の調整局面に備える必要性が挙げられた。また、産学官の連携体制の強化や、研究成果を現場につなぐ社会実装人材の育成が不可欠であるとの見解が示された。
ロボット制御と動作生成における基盤モデル応用
研究発表セクションでは、ロボットの学習効率や動作生成の精度を高める新たな手法が複数報告された。
富士通の研究グループは、画像やセンサーなど複数の情報を扱うマルチモーダル学習において、特定の情報源への過度な依存を抑える手法を発表した。注意機構(重要度の高い情報に焦点を当てる仕組み)から依存度を推定し、最も依存しているモダリティを選択的に除外する「Targeted Modality Dropout(TMD)」と正則化を組み合わせた。視覚情報への偏りは是正できたものの、タスクの成功率への影響は作業特性によって異なる結果が得られたと報告されている。
日立製作所は、産業用ロボットの精密作業に向けた軽量な動作生成モデルを提案した。世界の状態と行動を予測する「World Action Model(WAM)」の考え方を参考にしつつ、将来の行動とともに予測注意点の座標のみを出力させる2段階学習を採用した。これにより学習コストを抑えながら状態表現を強化し、ハーネス組み付け作業において位置のズレを抑制できることを実証した。今後は奥行き情報の補正などが課題として挙げられている。
大阪大学の研究グループは、NVIDIAの動作生成モデル「Kimodo」を用い、自然言語によるヒューマノイドの体操動作生成精度を系統的に評価した。日本語の指示を大規模言語モデル(LLM)で英語化したプロンプトと、機械翻訳ツール(DeepL)で翻訳したプロンプトを比較したところ、LLMを用いたテキストの方が高精度な動作を生成した。LLMが前転を細かな3動作に分解したり、側転を適切な英語表現(cartwheel)に置き換えたことが性能差につながったと分析されており、基盤モデルに対するプロンプト設計の重要性が示された。
感情知覚や走行データ抽出に関する要素技術
このほか、人間とロボットの相互作用(HRI)や自動運転分野に関する基礎研究も注目を集めた。
関西大学の研究チームは、ロボットとの共生社会における嫌がらせ(ロボットいじめ)の防止を視野に入れ、ロボットが涙を流すことによる感情知覚の影響を検証した。小学生を対象に動画を用いた調査を行った結果、悲しみだけでなく安堵の文脈であっても「悲しい」と評価する割合が高かった。子どもは言語的な文脈情報よりも、涙という視覚的シグナルを強く優先して感情を認識する傾向があることが示唆されたという。
名古屋大学の研究グループは、車両の走行記録データから特定の運転シナリオ(駐車車両の回避など)を自動検出する手法を発表した。シミュレーション実験において高い精度でシナリオの抽出が可能であることを確認した。現状では検出条件の設定に人手が必要であるものの、完全自動化に向けた課題が整理されている。
学会の規模拡大と今後の展望
日本ロボット学会は1983年に創立された学術組織であり、近年参加者数が増加している。発表によると、学術講演会の参加者数は2024年の1,663名から2025年には1,940名以上へと急増したという。次回の第45回大会は、2027年に名古屋での開催が予定されている。