Docker、隔離環境「Docker Sandboxes」内のAIエージェントをBANDでチーム連携させる公式キットを提供開始
要点
- 米Dockerは、隔離実行環境「Docker Sandboxes」内のAIエージェントを外部と接続する公式キット「BAND AI kit」を公開した。
- 独立したmicroVMの安全性を維持したまま、協調プラットフォーム「BAND」を介して人間や他のエージェントと共同作業が可能になる。
- 通信はすべてサンドボックスからのアウトバウンド接続で行われ、機密情報もホスト側で安全に注入される仕組みを採用している。
- クラウド上の計画エージェントと、ローカルリポジトリを操作する修復エージェントが協調して動作するデモも公開された。
リード文
米Dockerは2026年10月21日、同社のコンテナベースの隔離実行環境「Docker Sandboxes」で動作するAIエージェントを、エージェント連携プラットフォーム「BAND」に接続するための公式パッケージ「BAND AI kit」の提供を開始したと発表した。
これまで手元の環境内で単独動作していたエージェントが、クラウドや他マシン上で稼働するエージェント、および人間の開発者と同じ仮想ルームに参加し、協調してタスクを進められるようになるという。
同キットはDocker Hubを通じて docker.io/bandhq/band-python-kit:latest(公開バージョン6.0.0)として配布されている。
隔離環境のセキュリティを保ったまま外部連携を実現
Docker Sandboxesは、独自のカーネル、ファイルシステム、Dockerデーモン、ネットワークを持つ「microVM(軽量な仮想マシン)」を起動し、その中でAIエージェントを実行する機能である。
エージェントはマウントされたローカルの作業環境に対してソースコードの閲覧や編集、テストの実行などを自由に行える一方、システム本体への影響は完全に遮断される。
今回提供されたBAND AI kitは、この隔離空間に外部との接続レイヤーを付加するものだ。
従来、スタンドアロンで動いていたエージェントを、BANDが提供する共有ルームへと参加させることができる。
通信はすべてサンドボックス内部から外部へと接続するアウトバウンド(外向き)通信として処理されるのが特徴だ。
エージェントはWebSocket(双方向通信を維持するプロトコル)を開いてBANDへ接続し、API経由で応答を送信するため、外部からサンドボックス内部へのインバウンド通信を受け付ける必要がない構造となっている。
機密情報の漏洩を防ぐプロキシ管理
安全な運用のために、APIキーをはじめとするクレデンシャル(認証情報)の保護機能も組み込まれている。
サンドボックスの作成時には、CLIコマンドの sbx secret set-custom を使用してBANDや各AIモデルのAPIキーをホストマシン側に登録する。
実行時、エージェント側には代理の値(プレースホルダー)のみが渡され、実際のリクエスト送信時にホスト側で本物のキーが透過的に注入されるという。
さらに、サンドボックスから外部へのアクセス先ホストを制限するネットワークポリシー機能(sbx policy allow network)と組み合わせることで、意図しない外部通信や認証情報の漏洩を防ぐ設計となっている。
破損プロジェクトを自律修復するデモ「Repo Doctor」
Dockerは本キットの具体的な利用例として、意図的に破損させたPythonプロジェクトを自動修復するサンプルエージェント「Repo Doctor」を公開している。
構成ファイルである band.yaml でエージェントの起動エントリポイント(main.py)を指定し、AnthropicのClaudeをモデルとして設定。
ファイルの読み書きやテスト実行を行うツールを付与した状態でサンドボックスを起動する。
エージェントが起動してBANDのプラットフォームに接続されると、ユーザーや他の参加者はBAND上の共有ルームから @ メンションで指示を出せるようになる。
実際のデモでは、指示を受けたRepo Doctorがプロジェクトを検査してテストを実行し、失敗しているテストケースを特定した上でコードを修正する一連の流れが実証された。
ツールの実行ログや修正内容の詳細は、エージェントの説明文とともにBANDのチャットルーム上にリアルタイムで表示される。
なお、エージェントの実装はClaudeに限定されず、BANDのアダプターを経由してClaude CodeやCodexなど他のコーディングエージェントを組み込むことも可能とされている。
複数エージェントと人間が混在するチーム開発
DockerとBANDの組み合わせは、単一エージェントの操作にとどまらず、複数のエージェントが分担して作業を行うシナリオにも対応している。
エージェントごとに異なるモデル、フレームワーク、実行基盤(ローカル、クラウド、自社インフラ)を採用していても、BANDのルームを介して対等な参加者として協調動作できる。
例えば、変更の計画を立てる「プランナーエージェント」と仕様を調べる「リサーチエージェント」をクラウド上で常駐させ、ローカルのリポジトリにアクセスする必要があるタスクだけを、手元のDocker Sandbox内で動く「Repo Doctor」へメンションで割り振る構成が挙げられている。
Repo Doctorがテストを実行して修復を終えると、次は別のレビュー用エージェントへ結果をメンションで引き渡すといったワークフローが組める。
各エージェントが必要に応じて独立したサンドボックス環境を維持しながら1つの部屋で会話し、人間の開発者はその全ログと実行結果を同じ画面上で監視・管理できる体制が整うとしている。