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AWS ML Blog

法律業務ソフトのAderant、Amazon Novaを活用したチケット自動トリアージシステムを構築 96%の精度で工数を週最大14時間削減

要点

  • 法律業務向けソフト大手のAderantが、AWSの基盤モデル「Amazon Nova Lite」を用いたチケットトリアージ自動化システム「Intelligent Ticket Analyzer」の運用実績を発表した。

  • 世界268の顧客環境を管理する運用チームにおいて、稼働開始から2.5週間で109件のチケットを処理し、約96%のルーティング精度を記録した。

  • チケット1件あたり15〜25分かかっていた事前調査を自動化し、月額30ドル未満の運用コストで週あたり8〜14時間のエンジニア工数を削減した。

  • AWS LambdaとAmazon EventBridgeを中心とするサーバーレス構成で、JiraやConfluence、SharePoint、Amazon Athenaから情報を横断収集して分類を行っている。

  • 法律業界向け業務管理ソフトウェアを提供するグローバル企業のAderantは、Amazon Web Services(AWS)の生成AI基盤モデル「Amazon Nova Lite」を活用した自律型チケットトリアージシステム「Intelligent Ticket Analyzer」を構築・導入したことを明らかにした。2026年9月24日、AWSの公式技術ブログ「AWS ML Blog」において、同社のAngela Mapes氏とAdam Walker氏による共同執筆記事として公開された。本システムにより、運用現場におけるチケットの調査や担当チームへの振り分け作業が自動化され、高精度かつ低コストでの運用工数削減が確認されたという。

導入の背景:手動トリアージに伴う運用負荷と課題

AderantのSierraOpsチームは38名のエンジニアで構成されており、同社の主力クラウドプラットフォーム「Expert Sierra」を世界中268のクライアント環境で運用している。同チームには週平均で34〜40件のサポートチケットが寄せられるが、自動化以前はチケットへの対応を開始する前の初期調査段階で、1件あたり15〜25分もの手動作業が発生していた。

エンジニアは届いたリクエストの内容を解釈した上で、対象となるクライアントの環境詳細を特定し、どのチームが対応すべきかを判断する必要があった。さらに、社内のドキュメントや過去のチケット履歴を検索して必要な情報を揃えた後、適切な担当者への割り当てやリダイレクトを行っていたという。

こうしたトリアージ(問い合わせ内容を精査して優先度や担当を振り分ける作業)の手間は、単なる作業時間の消費にとどまらない問題を抱えていた。誤ったキューに振り分けられたチケットはエンジニアが気づくまで放置される恐れがあり、経験の浅いメンバーは適切なコンテキストの把握やルーティング判断のためにシニアエンジニアの助言を必要とするなど、チーム全体の負担となっていた。同社は、エンジニアが複雑なトラブルシューティングやプラットフォーム改善、プロアクティブな運用業務に集中できるよう、確実で再現性の高い自律調査ワークフローを求めていた。

5段階の自律型ワークフローによる処理構造

Aderantが構築した「Intelligent Ticket Analyzer」は、AWS Lambda(サーバーの事前準備なしにコードを実行できるサービス)と、Amazon EventBridge(イベントに応じて処理を自動起動するイベントバス機能)を組み合わせたサーバーレスアーキテクチャで動作する。平日の営業時間中に毎時スケジュールで起動し、キュー内の未割り当てチケットに対して以下の5段階の処理を自律的に実行する。

  1. 特定(Identify):タスク管理ツール「Jira」から、未割り当て状態の新規チケットを抽出する。
  2. 情報補強(Enrich):Amazon Athena(ストレージ内のデータをSQLで検索できる対話型クエリサービス)から顧客のメタデータを取得するほか、社内情報共有ツールのConfluenceやMicrosoft SharePointから関連ナレッジを収集し、さらにJiraから過去の類似解決チケットを検索してコンテキストを組み立てる。
  3. 分類・推論(Classify):集約したチケット内容と背景情報を、Amazon Bedrock(基盤モデルをAPI経由で利用できるマネージドサービス)のConverse APIを通じて軽量基盤モデル「Amazon Nova Lite」へ送信する。モデルは構造化された分類結果と、推奨される次の対応ステップを出力する。
  4. アクション実行(Act):分析結果の記録やチケット受付の返信を自動投稿し、誤ったキューに届いたチケットを正しい担当へ再割り当てする。あわせてMicrosoft Teamsの適切なチャネルへ通知を送り、サポート側で即時解決可能なシナリオに対しては事前定義されたアクションを自動適用する。
  5. 監視と改善(Observe and improve):運用の各種メトリクスを監視サービスであるAmazon CloudWatchに送信して追跡を行う。AIの確信度が低い分類結果については、人間の判断を仰ぐためのフローへ振り分ける。

稼働成果:96%の精度と高い費用対効果

2026年6月30日から7月17日までの約2.5週間にわたる本番稼働において、本システムは109件のチケットを処理した。その結果、チーム間のルーティング精度は約96%を達成したことが報告されている。

導入前のベースライン測定値に基づく同社の試算によると、この自動化によって週あたり8〜14時間相当のエンジニア工数が回収されたという。また、システム全体の運用コストは月額30ドル未満に抑えられており、極めて低コストでの運用が実現している。

自律型運用への拡張

AderantにおけるAIの活用は今回が初めてではなく、以前から「Amazon Quick」を用いた統合検索やオンデマンドの調査業務などでAI技術の導入を進めていた。今回の「Intelligent Ticket Analyzer」とAmazon Novaの採用により、従来のオンデマンド型検索から、定期的に自律実行される運用ワークフローへとAI活用を発展させた形となる。

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