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AWS ML Blog

Fanatics Betting and Gaming、AWS上でマルチエージェント型サポートAIを構築 州規制や急増する問い合わせに対応

要点

  • 米Fanatics Betting and Gaming(FBG)が、AWSを活用したマルチエージェント型のAIカスタマーサポートシステムを構築したことが明らかになった。
  • 米国各州で異なる規制や、大規模スポーツイベント時に2分間で40件を超える問い合わせトラフィックへの対応を目的としている。
  • 単一のボットではなく専門特化型エージェント群を連携させ、Amazon EKS上で独立して運用・スケーリングを行う構成を採用した。
  • AIモデル基盤にはAmazon Bedrockを採用し、タスクごとに最適な基盤モデルの使い分けや柔軟なモデル切り替えを可能にしている。
  • 人的対応に依存していた従来体制と比べて大幅なコスト削減と回答の迅速化を達成しつつ、問題賭博の検知など厳格なコンプライアンス遵守を両立させた。

概要

米スポーツベッティング大手のFanatics Betting and Gaming(FBG)が、アマゾン ウェブ サービス(AWS)のクラウドインフラを活用したマルチエージェント型のAIカスタマーサポートシステムを構築したことが、2026年8月19日付のAWS公式機械学習ブログ(AWS ML Blog)で公表された。急速な事業成長とスポーツイベント時の急激なアクセス集中に対応し、有人対応の増加に伴う運用コストの上昇を抑えながら、高精度かつ迅速な顧客サポートを提供する体制を整えたという。

スポーツベッティング特有の複雑な要件と従来の限界

FBGは、スポーツ関連ブランドを手がけるFanatics傘下のスポーツベッティングプラットフォームであり、米国の複数州で事業を展開している。スポーツベッティング市場では試合進行中にリアルタイムで賭けが行われるため、利用者からは即時かつ正確なサポート対応が常に求められる。特にNFLのプレーオフやスーパーボウルといった大型スポーツイベントの開催中にはサポートへのアクセスが急増し、ピーク時には2分間で40件を超える問い合わせが殺到するという。

さらに同社のサポート業務を難しくしているのが、米国特有の法規制や業務領域の広さだ。米国ではスポーツベッティングに関する規制が州ごとに異なっており、利用可能な決済方法、入金限度額、出金にかかる日数、さらにはギャンブル依存対策の規定に至るまで管轄ごとに個別のルールが定められている。たとえばインディアナ州の利用者とニュージャージー州の利用者とでは、同じ質問であっても提示すべき回答が異なる。

問い合わせの内容自体も、口座設定や取引履歴の確認から、個別のベッティングルール、さらには利用者が自発的に利用停止を設定する「自己排除(ギャンブル依存防止のために一定期間アカウント利用を制限する措置)」の手続きまで多岐にわたる。これらすべてを単一のナレッジベースや単一のAIモデルで網羅することは極めて困難だった。

加えて事業者には、利用者の発言から問題賭博の兆候をリアルタイムに検知し、適切に対処する「責任あるゲーミング」の遵守が求められている。これには単なるキーワードの一致判定ではなく、文脈のニュアンスを深く理解する高度な自然言語処理が不可欠となる。事前に分岐条件を設定する従来の決定木(条件分岐に基づいて決められた回答を返すルールベースの仕組み)型チャットボットではこうした複雑性に対処しきれず、結果として有人サポートへのエスカレーションが頻発し、顧客の待ち時間長期化と人的コストの増大を招いていた。

専門エージェントを分散配置するマルチエージェント設計

こうした課題を解決するため、FBGのエンジニアリングチームは単一の巨大な(モノリシックな)AIボットに頼る手法を排し、複数の専門特化型エージェントが連携して顧客対応にあたるマルチエージェントアーキテクチャを設計した。システムは自律的に複雑な問い合わせを処理しつつ、人の介在が必要なケースを正確に識別して人間のオペレーターへ引き継ぐ仕組みを備えている。

システムのインフラ基盤には、同社がすでに運用知見を蓄積していたコンテナ管理サービスのAmazon EKS(Amazon Elastic Kubernetes Service: クラウド上でコンテナアプリケーションのデプロイや運用を自動化するマネージドサービス)が採用された。これにより、役割ごとに分割された各大規模AIエージェントを独立したコンテナとしてデプロイし、個別にスケーリングや機能改善を繰り返すことが可能になったという。急激なトラフィック変動が発生しても、必要なエージェントのリソースのみを即座に拡張できるため、応答品質を落とさずに処理能力を維持できる。

また、各エージェントが利用するAIモデルの連携基盤にはAmazon Bedrock(複数の基盤モデルを単一のAPI経由で安全に利用できるフルマネージドサービス)が選定された。Bedrockが提供するモデル非依存(特定のモデルに縛られない設計)の環境を活用することで、エージェントが担当するタスクの特性に応じて最適な基盤モデルを個別に割り当てられるほか、より高性能な最新モデルが登場した際にも容易に置き換えができる柔軟性を確保したと説明している。

コスト削減と厳格なコンプライアンスの両立

FBGによると、このマルチエージェントAIシステムの導入により、人間のスタッフのみに依存していた従来のサポート体制と比較して、大幅に低いコストで、より迅速かつ正確な問題解決が可能になったという。

FBGのCTO(最高技術責任者)を務めるIan Botts氏は、ブログ記事の中で次のように述べている。

「事業が拡大する中で、カスタマーサポートの体験も事業とともに進化させる必要があると認識していました。責任あるゲーミングや各種コンプライアンス(法令遵守)を一切妥協することなく、利用者に迅速で正確な回答を届けることを目指しました。単に規模を拡大するだけでなく、時間とともに継続的に賢く進化していく仕組みを構築することが我々の目標でした」

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