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Mistral AI

仏Mistral AI、シリーズDで30億ユーロを調達——評価額210億ユーロ超、欧州テック企業として過去最大規模

要点

  • フランスのAI企業Mistral AIが、シリーズD資金調達ラウンドで30億ユーロの資金を調達した。

  • 調達後の企業評価額は210億ユーロを超え、設立からわずか3年で欧州のテクノロジー企業として過去最大規模の株式調達となった。

  • 本ラウンドはサムスン電子が主導し、EQTが運用するScaleup Europe Fundや既存投資家のPSG Equityが共同主導した。

  • 調達資金は最先端研究の拡大、モデル学習用の計算基盤の拡張、インフラ整備、世界展開の加速に充当される。

  • 企業や政府がデータやインフラの主権を自ら維持できる「ソブリンAI」のフルスタック提供を強化する方針を示している。

  • フランスのAI企業Mistral AIは、シリーズDの資金調達ラウンドにおいて30億ユーロを調達したことを発表した。今回の調達に伴うポストマネー(調達後)評価額は210億ユーロを超え、同社の設立から3年で欧州のテクノロジー企業によるエクイティ資金調達として過去最大の規模を記録した。本ラウンドはサムスン電子が主導し、同社は調達した資金を通じて最先端モデルの研究開発、計算基盤の拡張、そして世界規模での事業展開を加速させる構えだ。

欧州史上最大の大型調達とグローバル投資家の参画

今回のシリーズDラウンドは、サムスン電子がリード投資家を務め、EQTが運用するScaleup Europe Fundおよび既存株主であるPSG Equityが共同リード投資家として参画した。Mistral AIは前回のシリーズCラウンドで半導体露光装置大手ASMLの主導による出資を受けており、これに続く今回のサムスン電子の主導により、高度な製造業やエンジニアリング、産業技術の最前線に立つグローバル企業からの支持を一段と強めた格好だ。

新規投資家としては、投資会社のAdventや、BlackRockが運用するファンドおよび口座、さらにはルクセンブルク大公国が名を連ねている。また既存の投資家からも、米大手ベンチャーキャピタルのa16zをはじめ、NVIDIA、Salesforce Ventures、ASML、BNP Paribas CIB、Bpifrance、Belfius、Carmignac、DST Global、Eurazeo、General Catalyst、Headline、Hillspire、Index Ventures、Korelya Capital、Lightspeed、Phoenix CourtのSolar fund(LocalGlobe、Latitude、Solarを傘下に持つ)など、欧州・北米・アジアを網羅する世界的な戦略投資家および財務投資家が幅広く参加した。

資金使途と拡大するグローバル事業

調達した30億ユーロの資金は、同社のインフラや製品、そして主権性の基盤となるフロンティア研究(最先端領域の技術研究)の大幅な拡大に投じられる。とりわけ、高性能なAIモデルのトレーニングに不可欠な計算能力(コンピュート容量)の大規模な拡張とインフラ整備が進められる計画だ。

同社の事業基盤はすでに急速な成長を遂げており、現在は世界20カ国で事業を展開している。航空宇宙大手のAirbus、半導体露光装置のASML、金融大手のHSBCなど、125社を超える世界的な大企業のミッションクリティカル(業務停止が許されない極めて重要な基幹業務)なAIトランスフォーメーションを支援しているという。今回の調達により、商業的な成長と国際的なプレゼンスの拡大がさらに加速される見通しだ。

「モデル性能競争」から「主権と制御」へ向かう市場需要

Mistral AIは、生成AIを取り巻く国際的な市場環境の変化について言及している。生成AIの「第1波」においては、どの組織が最も高性能なモデルを構築できるかという性能競争が最大の関心事であった。しかし現在では、企業や政府機関が問うテーマは変化しており、「インフラや知能のループに対する主権や制御権を手放すことなく、自組織の極めて重要な業務にAIの能力をいかに活用するか」という点に関心が移っているという。

AI投資に伴う長期的な技術依存のリスクや、厳格なデータガバナンス要件、柔軟な導入形態の確保を慎重に見極める動きが広がるなか、性能の高さと同時に自律性や選択の自由、制御性を求める需要が世界規模で高まっている。

これに対し、Mistral AIはオープンウェイトモデル(モデルの重みパラメータが公開され自社環境等で自由に運用できるモデル)の開発にとどまらず、それらを稼働させるインフラや計算基盤、そして実稼働へと導く製品群に至るまでを一貫して自社で手がける「フルスタック」を構築する世界で唯一のAI企業であると強調している。この体制により、顧客企業が特定の単一ベンダーによる製品ロードマップ、価格設定、提供状況に束縛される「ベンダーロックイン」に陥ることを防ぐことができると説明している。

組織の独立性を担保する「4つの主権AIレイヤー」

Mistral AIが提供するフルスタックかつオープンなアプローチは、組織が保有する最も価値の高いデータや業務ワークフロー、社内知見を外部環境にさらすことなくAIシステムを構築することを可能にするという。

同社はこの基盤を「ソブリンAI(主権AI)レイヤー」と位置づけ、組織が以下の4つの側面において完全に制御を維持できる仕組みを提示している。

  1. データ: 組織が設定した境界線の内部に常に保持されること
  2. モデル: 組織自身による制御およびカスタマイズが可能であること
  3. コンピュート(計算資源): プライベートな環境で確保され、予測可能であること
  4. 本番システム: 稼働中のシステム全体が完全に制御可能であり、監査(適正性の検証)に対応できること

実社会の複雑な運用環境において、自組織のデータやインフラ、知見に対する主権を保ちながら最先端AIを導入したいという産業界の要望に対し、同社のアプローチへの信頼が今回の大型調達へと結実したとみられている。

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