OWN NEWS GATHER
← 戻る
The Hacker News

格安の「Claude」アクセスを提供する闇サービスが横行、利用者のプロンプトが盗み見られるリスクをOktaが指摘

要点

  • サイバー犯罪のフォーラム等において、正規のAIモデルに格安でアクセスできる違法な仲介サービスが複数確認された。

  • 「Poison Claude」などのサービスは、AWSの無料特典クレジットを悪用して正規価格の5〜15%という破格の安さを実現している。

  • 利用者のプロンプト(AIへの指示文)がすべて中継サーバーを通るため、サービス運営者にデータを覗き見られるプライバシーの懸念がある。

  • 米国製LLMへのアクセス制限がある中国などの需要を背景に、こうしたプロキシを介したグレーマーケットが拡大している。

  • 悪意あるアクターによるフリートライアルの悪用や、ボット検知を回避する接続手法の普及など、AIを巡るセキュリティ課題が浮き彫りになった。

  • セキュリティ企業のOkta(オクタ)の研究者は2026年8月4日(現地時間)、AI(人工知能)モデルへの違法なアクセス権を安価に販売する複数のサービスに関する調査結果を公開した。発表によると、アンダーグラウンドのサイバー犯罪フォーラムやメッセージングプラットフォームにおいて、これらのサービスへの広告が6つ以上確認されたという。これらは利用コストを大幅に抑えられる一方で、利用者が送信したデータが運営者に覗き見られる重大なプライバシー上のリスクを抱えている。

  • 今回詳細に分析されたサービスの一つが「Poison Claude(ポイズン・クロード)」だ。同サービスは、Anthropic(アンソロピック)社が提供する最先端のLLM(大規模言語モデル:自然な文章を生成するAIモデル)である「Opus 4.8」や「Sonnet 4.6」などへのアクセスを格安で提供すると主張している。

  • Oktaの研究者であるジェレミー・カーク氏とマシュー・ウッドヤード氏の分析によると、Poison Claudeが安価にサービスを提供できるのは、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス:クラウドコンピューティングサービス)のAI利用プラットフォームである「Bedrock」用アカウントに付与される100米ドルの無料ボーナスクレジットを悪用しているためだ。同サービスは、無料クレジット付きアカウントをプールに追加してリクエストを裏で振り分けることで、公式のトークン(AIが処理する最小テキスト単位)価格の5〜15%という安さを実現していると説明している。

  • 支払いは暗号資産で行われ、完了するとAnthropicと互換性のあるAPI(ソフトウェア連携の仕組み)の接続情報である「APIキー」が発行される。利用者は「Claude Code」などのAI開発ツールを利用する際、環境変数(プログラムの動作を設定する変数)を設定し、接続先をPoison Claudeのシステムに変更するよう指示される。

  • これにより、利用者が入力したプロンプト(AIへの指示文)はPoison ClaudeのAPIを経由してAnthropicへと送信され、回答も同じ経路で戻る。しかし、このようなプロキシ(中継サーバー)を経由する構成では、サービス運営者がすべてのプロンプトを閲覧できてしまう。Oktaは、これがデータの漏洩や売却につながる深刻なプライバシー上の懸念であると警告している。

  • また、Poison Claude側の設定ミスにより、APIの稼働状況を確認するためのエンドポイント(接続先URL)である「api.claudeopus[.]shop/api/status」が一時的に露出していた。このページからは、一時的に総ユーザー数が881人、アクティブユーザー数が872人であるというデータが漏洩していた(現在は修正済み)。

  • Poison Claudeのメインドメインである「poison-claude.bitsender[.]top」は、元のIPアドレスを隠すためにCloudflare(コンテンツ配信ネットワーク:Web高速化サーバー網)の背後に配置されている。Oktaからの通報を受け、Cloudflareは同サイトの前にフィッシング警告画面を設置したが、ボット(自動実行プログラム)対策ツール「Cloudflare Turnstile」を使用しているAPI用ドメインへの対処は拒否した模様だ。

  • グレーマーケットの類似サービスは他にも存在する。例えば「Ecomagent.in」というサービスでは、約970人のユーザーがいると推定されており、独自のAPIを通じてAnthropicの「Opus 4.8」やOpenAIの「GPT Codex 5.5」などのモデルへの割引アクセスを提供している。

  • こうしたサービスの需要が高まる背景には、米国製AIモデルが公式に利用できない、あるいはアクセスが遮断されている地域におけるニーズがある。中国市場では、公式にアクセスできない米国製LLMを利用するため、APIの中継やプロキシプラットフォームを介したグレーマーケットが拡大している。

  • 実際、AIモデルを巡る知的財産の摩擦は激化しており、Anthropicは今年初め、中国のAI企業であるDeepSeek、Moonshot AI、MiniMaxの3社が、Claudeの機能を不正に抽出して自社モデルの強化に利用する大規模なキャンペーンを行ったと主張していた。また、先週にはロイター通信が、中国の軍事研究者が国防能力向上のための国内AIシステム訓練に、OpenAIやAnthropicの開発したAIモデルを利用したと報じている。

  • さらに、悪意あるアクターたちが、「dakaka[.]org」などの使い捨てドメインを用いてAIサービスの無料体験(フリートライアル)を悪用し、架空の個人情報(合成アイデンティティ)を大量に作成している証拠も確認されている。

  • Oktaは、インターネット全体でAIエージェントの導入が進むにつれ、ボットによる自動的な活動が増加していると指摘する。ボットネットワークを運営するアクターたちは、ボット検知システムを回避するために「住宅用プロキシ(一般家庭のIPアドレスを経由してアクセスする仕組み)」などを悪用しており、悪意あるトラフィックを遮断することがますます難しくなっているという。

補足

一般に、企業や個人がAIツールを安全に利用するためには、正規のプロバイダーから直接提供される認証情報を使い、信頼性の低い第三者の中継システムを経由させないようにすることが推奨されている。

元URL