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AWS ML Blog

HEMA、Amazon BedrockとMCPを活用した社内AIアシスタント「HAL」を構築 散在する技術情報の即時検索を実現

要点

  • 100年の歴史を持つオランダの小売大手HEMAが、社内情報の集約と検索効率化を目的としたAIアシスタント「HAL」を開発した。
  • 「Amazon Bedrock AgentCore」と「Model Context Protocol(MCP)」を組み合わせ、既存の開発環境やチャットから社内データへ直接接続できる仕組みを整えた。
  • サービスカタログなどの構造化データと、散在していた社内手続きに関する情報の双方を一元的に参照可能にした。
  • 認証基盤にはMicrosoft Entra IDを採用し、クライアント端末にAWSの認証情報を保持させない安全な構成を実現している。
  • 従来は数時間かかっていた情報探索が数秒に短縮され、今後は情報の参照だけでなくシステム操作を担うアクション層への拡張が計画されている。

リード文

オランダの大手小売企業であるHEMA(ヘマ)は2026年9月23日、AWSの生成AI基盤「Amazon Bedrock AgentCore」とオープン標準規格「Model Context Protocol(MCP)」を活用した社内AIアシスタント「HAL」の構築事例をAWS Machine Learning Blogで発表した。社内ポータルやドキュメントの散在によって生じていたエンジニアの情報探索の手間を解消し、統合されたナレッジ基盤から即座に回答を得られる環境を整備したという。

組織拡大に伴う「ポータル巡り」と社内情報の断片化

HEMAは複数の国で750店舗以上を展開する老舗小売企業であり、エンジニアやプロダクトオーナー、ビジネスアナリストなどで構成される技術部門がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している。同社では長年にわたり事業を拡大する中で、社内の技術情報やドキュメントが複数のWikiやサービスカタログ、ITポータルに分散してしまう問題に直面していた。

初期の小規模な組織体制では、疑問が生じても隣の席の同僚に直接尋ねることで円滑に情報共有が成り立っていたという。しかし、組織の成長とエンジニアの増員に伴って従来の属人的なコミュニケーションモデルは機能しなくなり、従業員が必要な答えを探すために複数のポータルを行き来する「ポータルホッピング」が発生していた。

この状況は、新入社員のオンボーディングの遅延や、参照先によって回答内容が異なるといった不整合を引き起こしていた。さらに、業務中の頻繁なコンテキストスイッチ(作業の切り替え)を強いられ、回答を得るためだけに半日近くを費やすケースもあるなど、本来の開発業務を妨げる大きな摩擦となっていた。

構造化インフラ情報と散在する手続きのギャップ

HEMAの社内知識には、大きく分けて2つの異なるレイヤーが存在していた。

第1のレイヤーは、整備が進んでいた「構造化されたインフラ知識」である。同社は自社の技術環境を網羅したサービスカタログを長年維持しており、どのチームがどのサービスを所有し、どのようなAPIを公開しているか、またそれらがどのビジネス機能に対応しているかといった情報が体系化されていた。商品情報管理(PIM)エンジンやデータメッシュのテーブルから取得したデータも整理されており、どのシステムが存在し誰が管理しているかという事実関係は、検索場所さえ分かれば確認できる状態にあった。

一方で課題となっていたのが、第2のレイヤーである「手続きに関する知識」の不足である。「APIへのアクセス権を申請するにはどうすればよいか」「新しいグループのプロビジョニング手順はどうなっているか」「特定業務の社内ルールは何か」といった具体的な手順や手続きについては、一元化されたドキュメントが存在していなかった。

同社によれば、システムの構成自体は把握できていても、実際の運用や手続きの方法が文書化されておらず、結果として情報へのアクセスを著しく困難にしていたと説明している。

Bedrock AgentCoreとMCPによる統合ナレッジ基盤の構築

こうした情報アクセスの課題を解決するため、HEMAは社内AIアシスタント「HAL」を構築した。開発にあたっては「知識を一箇所に集約すること」と「従業員が日常的に使用しているツール内にその知識を届けること」という2つの目標が掲げられた。

基盤技術には、基盤モデルを活用したエージェントを構築できるAWSのサービス「Amazon Bedrock AgentCore」と、AIアシスタントと外部のデータソースや開発ツールを標準化されたインターフェースで接続するためのプロトコル「Model Context Protocol(MCP)」が採用された。

HALの導入により、従業員は専用のチャット画面だけでなく、コーディング環境であるIDE(統合開発環境)や、AIエージェントの「Kiro」、Anthropicの「Claude」など、使い慣れた各種インターフェースからMCP経由で社内ナレッジを呼び出すことが可能となった。

また、セキュリティ面ではマイクロソフトのクラウド認証サービスである「Microsoft Entra ID」を基盤に据えている。クライアント側にAWSのアクセスキーなどの認証情報を持たせない設計となっており、安全性を確保しながら多様なツールとの連携を実現している。

導入効果と「アクション層」への今後の展望

HALの導入によって情報へのアクセス性は大幅に向上し、かつて3〜4箇所のポータルを巡回して探し回っていた情報が、IDEやチャットツールから数秒で取得できるようになった。

当初はソフトウェア開発者向けのツールとして設計されたが、現在ではエンジニアにとどまらず、プロダクトオーナーやアナリストなど、職種を横断して利用されるアシスタントへと発展しているという。

HEMAは今回のアーキテクチャを今後の発展の基礎と位置づけており、今後は情報を読み取って回答する「ナレッジ層」としての機能にとどまらず、社内システムの操作やタスクの実行を直接代行する「アクション層」へとHALを進化させていく計画を明らかにしている。

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