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AWS ML Blog

Heurist Finance、Amazon Bedrock AgentCoreを活用した個人投資家向けAI投資プラットフォームの構築事例を公開

要点

  • 金融AIサービスを手がけるHeuristが、個人投資家向け投資ワークベンチ「Heurist Finance」の基盤にAmazon Bedrock AgentCoreを採用した事例を公開した。
  • 機関投資家向けに提供されている高度なリサーチ、ポートフォリオ構築、ストレステストなどの分析機能を、単一のチャットインターフェースへ統合している。
  • 質問ごとに必要な外部有料データをオンデマンドで購入する「AgentCore payments」を活用し、データ調達コストの最適化を図った。
  • エージェントのオーケストレーションにはStrandsを採用し、Amazon Bedrock上のAnthropic Claudeと連携させている。
  • Baseブロックチェーン上のUSDCによるx402プロトコル決済や、サンドボックス環境でのコード実行、監査ログ収集を組み合わせた安全な運用体制を構築した。

米Amazon Web Services(AWS)は2026年9月、公式の機械学習ブログ「AWS ML Blog」において、金融テクノロジー企業のHeuristが開発した個人投資家向けAI投資プラットフォーム「Heurist Finance」のアーキテクチャ事例を公開した。同システムは、自律型AIエージェントの構築基盤である「Amazon Bedrock AgentCore」を採用し、高価な外部データのクエリ単位での購入やサンドボックス環境での分析実行、セッション間の状態保持などを実現しているという。

機関投資家向けワークフローをチャット画面に集約

Heuristが開発する「Heurist Finance」は、一般の個人投資家向けに高度な金融インテリジェンスを提供する対話型の投資プラットフォームである。従来は大規模な機関投資家に限られていた高度な分析ワークフローを、1つのチャット体験に集約している点が特徴だ。

具体的には、市場データの収集、企業の開示書類やニュースの読解、詳細なリサーチの実行、ポートフォリオの構築と各種シナリオに基づくストレステスト(将来の危機や市場変動への耐性検証)、保有ポジションの継続的な監視などを包括的に処理する。ユーザーから市場に関する質問が寄せられると、各ユーザーの保有ポートフォリオや投資の好みを反映した回答を生成する設計となっている。これにより、リスクとリターンの統合的な把握や、ポートフォリオ全体の設計、シナリオ分析といったツールを、市場に関心を持つあらゆる個人が利用できるようにすることを目指している。

高額なデータ調達コストとエージェント運用基盤の内製課題

Heurist Financeの開発においては、データの調達モデルとエージェント運用インフラの両面で課題が存在していたという。

投資判断に資する高精度なリサーチを提供するには、プレミアムな市場データやマクロ経済指標、企業の基礎的財務(ファンダメンタル)データ、非伝統的なオルタナティブデータなど、多様な情報源へのアクセスが欠かせない。しかし、これらのデータの多くは有料のペイウォールや個別のAPIの奥に存在し、単一のデータベンダーだけで全領域を網羅することはできない。また、ユーザー基盤が十分に拡大する前の段階で、複数のデータ提供元と高額なエンタープライズ契約を一括して締結することは経済的に正当化が困難であった。

この課題を解決するため、同社はユーザーからの質問ごとに必要なデータのみを購入するオンデマンド型の経済モデルを検討した。しかし、AIエージェントがユーザーに代わって資金を支払う仕組みを導入する場合、資金の保管管理(カストディ)、支出上限の設定、さらには厳格な監査要件を満たす必要が生じる。

加えて、本番環境でエージェントを安定稼働させるためには、すべてのアクションを特定のユーザー、セッション、個別リクエストに紐付けるIDの永続化が求められる。さらに、セッションをまたぐ状態管理、安全に計算を行うための分離されたコード実行環境、支払いオーケストレーション、エンドツーエンドの処理追跡(トレーシング)といった複雑なインフラも不可欠であった。これらの基盤を内製した場合、数カ月の開発期間が必要となり、サービスの差別化要素である独自リサーチやパーソナライズ機能の開発からリソースが分散してしまう懸念があったという。

Strands、Claude、AgentCoreを統合したシステム構成

こうした課題を受け、Heuristは任意のフレームワークや基盤モデルを用いてエージェントを大規模に構築・最適化できるプラットフォーム「Amazon Bedrock AgentCore」を採用した。

システム全体のエージェントオーケストレーション(複数処理の統合制御)には「Strands」フレームワークを用い、推論を行う基盤モデルにはAmazon Bedrock上で提供されている「Anthropic Claude」を採用している。システムを構成する主要な要素と機能は以下のとおりである。

  • クエリ単位のデータ購入と決済:
    外部有料データへのアクセスには「AgentCore payments」機能を利用する。決済処理には分散型ネットワーク「Base」上のステーブルコイン「USDC」を用い、HTTPステータスコードに準拠した「x402」リクエストを通じて、質問ごとに必要なデータのみを支払って取得する。
  • アイデンティティとメモリの管理:
    ユーザーごとの認証や権限は「AgentCore Identity」によって管理され、ワークフロー全体で一貫したID情報が保持される。また、「AgentCore Memory」を活用することで、過去のやり取りやセッションをまたいだコンテキストの永続化を行っている。ユーザー固有のポートフォリオデータはリレーショナルデータベース「Amazon Aurora PostgreSQL」から読み出されて分析に反映される。
  • 分離環境でのデータ分析とセキュリティ:
    取得したデータを用いた計算やポートフォリオのストレステストは、分離された実行環境を提供する「AgentCore Code Interpreter」内で安全に実行される。生成された分析成果物はオブジェクトストレージ「Amazon S3」に保存され、システムの各種認証情報は「AWS Secrets Manager」で保護される。
  • 可観測性と監査ログ:
    システム全体の処理フローやエージェントの挙動は「AgentCore Observability」によって追跡され、詳細なトレースログがモニタリングサービス「Amazon CloudWatch」へ送信される。これにより、ユーザーへの回答がどのようなプロセスを経て生成されたかを後から検証できる監査可能性が確保されている。

補足

Amazon Bedrock AgentCoreは、様々な基盤モデルや外部ツールと連携しながら自律型エージェントを構築・運用するためのマネージド基盤であり、本事例のように外部決済やコード実行環境を組み合わせた高度な金融ワークフローの実装にも活用されている。

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