会計AIの米Basis、OpenAIの「GPT-6 Astra」で税務処理時間を半減 社内評価スコアも約20%向上
要点
- 会計特化型AIエージェントを開発する米Basisが、OpenAIの新世代モデル「GPT-6 Astra」を活用した検証結果を公表した。
- 50タブにおよぶ複雑な税務ワークブックの処理において、従来モデル「GPT-5.6 Sol」と比較して所要時間を50%短縮した。
- 作業ステップの難易度に応じて推論リソースを動的に調整し、キャッシュを維持することでコストと応答時間を削減している。
- ユーザーの意図を文脈から推論する能力が向上した結果、同社の社内評価スコアが約20%向上した。
リード文
OpenAIは2026年9月28日、会計業務の自動化を進める米スタートアップBasisによる「GPT-6 Astra」の導入事例を公式ブログで公開した。Basisが実施した比較検証において、GPT-6 Astraは前世代モデル「GPT-5.6 Sol」に比べ、50タブ構成の複雑な税務ワークブックを半分の時間で完了したという。さらに、ユーザーの意図把握力の向上や推論リソースの柔軟な制御により、社内評価スコアも約20%改善したことが明らかになった。
50タブの税務ワークブックを従来の半分の時間で処理
Basisは、会計士が日々行っている手作業の多くを自動化し、定型業務から戦略的な業務へ時間をシフトできるよう支援するAIエージェントを開発している北米のスタートアップ企業だ。同社の研究開発では、長時間にわたる複雑なタスクを高い信頼性で完遂できるエージェントの構築に注力している。
今回の検証では、50個のタブ(シート)で構成された複雑な税務ワークブック(税務計算や管理を行う表計算データ)を正確かつ確実に処理するタスクにおいて、GPT-6 AstraとGPT-5.6 Solの性能比較が行われた。その結果、GPT-6 AstraはGPT-5.6 Solの半分の時間(所要時間50%減)でワークブック全体の処理を完了した。
Basisの共同創業者であるMitch Troyanovsky氏によると、GPT-6 Astraはタスクの開始時点でより適切な初期判断を下せるようになったという。これにより、エージェントが無駄な手順を踏まずに最短の経路で作業を進められるようになり、ミスの修正に費やす時間が大幅に減少した。また、この手戻りの少なさが、モデルが消費するトークン(AIがテキストやデータを処理する際の最小単位)の利用効率向上にも寄与していると説明している。
難易度に応じた推論量の動的調整とキャッシュの維持
Basisは、タスクの進行状況や各処理ステップの難易度に合わせて、GPT-6 Astraの推論(reasoning)計算量を段階的に調整する仕組みを取り入れている。具体的には、複雑で難易度の高い工程では計算リソースを増やして慎重に処理を行い、比較的容易な工程では計算量を抑えるという制御を行っている。
GPT-6 Astraはこの推論量の増減調整を、既存のキャッシュ(過去の文脈や処理データを保持する仕組み)を破棄せずに維持したまま実行できる点が特徴だ。Troyanovsky氏は、この制御によって応答時間と処理コストの両方を削減でき、長時間にわたって稼働するエージェントタスクをBasisおよびその顧客にとって経済的かつ現実的なものにできると述べている。
文脈把握の深化で社内評価スコアが約20%向上
Basisの社内評価テストにおいても、GPT-6 Astraは従来モデルに比べて約20%のスコア改善を記録した。同社では、エージェントの作業プロセスや最終的な出力結果について、指定されたテンプレートに従っているか、税務上の疑問に対して一次資料(税法や公式規則などの根拠文書)を参照しているか、自身の処理結果をセルフチェックしているかといった観点から厳格な評価を行っている。
GPT-6 Astraはユーザーの意図や課題の背景に対する理解が深まったことで、過度な追加指示を与えられなくても、広い文脈から開発側の期待事項を自律的に推論できるようになった。これにより、「どのような状況でユーザーに追加の質問を行うべきか」「どの前提条件に注意を促す必要があるか」「指示にどう厳密に従うべきか」といった判断が的確に行われるようになったという。
その結果、Basis側で個別の状況ごとに細かなルールを書き分ける負担が軽減され、社内テストでカバーしきれていない多様な実環境の業務シナリオに対しても、エージェントが高い信頼性を持って対応できる見通しが立ったとしている。