ブラジル金融大手Itaú、全顧客向けに生成AIを展開 独自統制基盤「IARA」とOpenAIモデルで約7000万人規模に対応へ
要点
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米OpenAIは2026年10月16日、ブラジルの大手金融機関Itaú(イタウ)による全顧客および従業員向けの生成AI導入事例を公表した。
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対話型UI「ia.i」は初期段階で約30万人に先行導入されており、2026年末までに全顧客基盤への拡大を目指している。
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トークン費用や回答精度、責任あるAIを管理する独自基盤「IARA」を構築し、厳格な規制環境下での安全な運用を実現した。
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法務部門では9000万件超の文書を対象に月間200万件以上のタスクを自動処理し、最大80%の業務効率化を達成した。
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単一モデルではなく複数モデルを使い分け、約7000万人分の顧客コンテキスト層「Customer DNA」の運用などを支えている。
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米OpenAIは2026年10月16日、ブラジル最大手の民間銀行であるItaú(イタウ)が、全顧客と従業員を対象にした生成AIの導入戦略を推進していることを発表した。同行はOpenAIのAPIを活用し、顧客向け対話型サービス「ia.i」や独自のAI統制プラットフォーム「IARA」を運用している。規制が極めて厳しい金融セクターにおいて、2026年末までにすべての顧客へ生成AI体験を行き届かせる計画であることが明らかになった。
多機能対話UI「ia.i」で目指す全顧客へのAI提供
Itaúは2024年に導入した特定機能向けAIを前身として、次世代の対話型インターフェース「ia.i」を開発した。テキストや音声、画像、タップ操作を統合したマルチモーダル(複数の伝達手段を一体化した形式)な設計が特徴で、普通預金口座の確認からクレジット、カード、保険、さらにメッセージングアプリ「WhatsApp」上での手軽な取引や投資助言まで一元的に対応する。顧客が必要とする場合には、人間の専門スタッフへスムーズに接続する機能も備えている。
同行と調査会社Grupo Consumotecaの共同調査によると、ブラジル人の80%が「金融生活をより良く整理し、意思決定の支援を得たい」と考えており、65%が継続的な案内を行う「金融コパイロット(案内役)」としての技術を求めているという。こうした需要を受け、ia.iは第1フェーズとして約30万人の顧客へ先行提供された。利用動向の検証を進めつつ、2026年末までに全顧客基盤(100%)への展開を完了させる目標だ。
この体験の基盤となるのが、約7000万人の顧客のニーズや生活習慣、ライフステージを把握する金融コンテキスト層「Customer DNA」である。適切なガバナンスと責任あるAIの統制下において、GPT-5.xを含むモデル群がこの情報の維持と拡充を支援していると説明されている。
「技術を感じさせない体験」と複数モデルの使い分け
同行のCTO(最高技術責任者)を務めるCarlos Eduardo Mazzei氏は、数千万人の顧客に向けた体験設計において重要なのは、モデルの高度さそのものよりも「シンプルさ」であると説明している。技術を前面に出すのではなく、日常の課題を解決する手段として「技術がほとんど意識されないほど自然で実用的な体験」を届けることを重視しているという。
この体験を実現するため、同行は単一モデルに頼らず複数のモデルを使い分けている。Mazzei氏によれば、レイテンシ(応答の遅延時間)やコストの抑制が求められる日常的な処理には費用対効果の高いモデルを充てる一方、深い推論や厳密なグラウンディング(外部の正確な情報に基づいて回答を生成する手法)が必要な相談には高度なモデルを割り当てている。特性の異なるモデルを適材適所で組み合わせることで、単一製品内で多様な金融ニーズへの対応を可能にしたとしている。
統制とコスト管理を担う独自基盤「IARA」と法務での実績
銀行規模での安全なAI運用を支えるため、同行は独自のガバナンス・オーケストレーション基盤「IARA」を構築した。IARAは内部ポリシーに従って各モデルへのアクセスを制御し、トークンごとのコスト管理、回答精度の担保、バイアス低減を含む「責任あるAI」ポリシーの適用を同時に担っている。開発から監視までの全過程で安全性や倫理、規制順守を徹底する仕組みだという。
この基盤上で動く法務部門のソリューションでは、9000万件以上の文書リポジトリを対象に読み取りや分析を自動化している。現在では月間200万件以上のタスクを処理しており、プロセスの各工程で20%から80%の効率向上を達成したことが示されている。
社内業務へ広がる「AI First」と成果の見込み
同行の「AI First」戦略は一般顧客向けだけでなく、社内のスペシャリストやマネージャー、顧客サービス担当者など従業員にも展開されている。面談前の情報要約や準備、特定課題の把握、代替案の立案など、従来は時間がかかり対応が難しかった業務を支援している。
同行はこのツールの活用により、従業員が顧客対応に充てられる時間が3倍に増え、サービス提供速度が最大2倍に向上するほか、顧客との対話の効果が最大3倍に高まると試算している。
補足
厳格な法規制と膨大な顧客データを抱える大手金融機関において、ガバナンス基盤を先行して整備した上で、複数モデルを組み合わせて大規模展開を進める手法は、今後のエンタープライズAI活用の先駆的な事例といえる。