インターネット公開されたVite開発サーバーを狙う大規模攻撃が発覚、クラウド認証情報や構成ファイルの窃取被害
要点
- 外部ネットワークに露出したVite開発サーバーを標的に、クラウド認証情報や構成ファイルを自動で抜き取る大規模なスキャン攻撃が観測された。
- 攻撃には、クエリパラメータの操作でアクセス制限を回避できるViteの脆弱性「CVE-2026-39364」(CVSS 8.2)が悪用されている。
- AWSやMicrosoft Azureの認証情報、Terraformなどのインフラ状態ファイル、環境変数ファイルなどが収集対象となっている。
- 攻撃者はAIボットや主要検索クローラーのUser-Agentを偽装し、Google CloudのIP帯域を経由して検知を逃れている。
サイバーセキュリティ企業の米F5の研究部門であるF5 Labsは、インターネット上に露出したJavaScript開発ツール「Vite」の開発サーバーを標的とする大規模な自動スキャン攻撃を確認したと発表した。
2026年8月に観測されたこの攻撃活動は、Viteの既知の脆弱性を突いて、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureの認証情報、インフラの構成ファイルなどを組織的に収集・窃取する試みだという。
クエリ操作でアクセス制限を破る脆弱性「CVE-2026-39364」
今回の攻撃で悪用されているのは、2026年4月にセキュリティアドバイザリが公開されたViteの脆弱性「CVE-2026-39364」だ。共通脆弱性評価システム(CVSS)のスコアは8.2で、重要度は「高(High)」に分類されている。
Viteはフロントエンド開発で広く利用されているビルドツールおよび開発サーバー環境である。この脆弱性では、クエリパラメータを細工することでセキュリティ制限を回避でき、認証を受けていない第三者が機密ファイルへアクセスできてしまう問題が存在する。
Vite公式のアドバイザリによると、開発サーバー上で server.fs.deny 設定によって本来ブロックされるべき機密ファイル(.env や *.crt など)であっても、リクエスト末尾に ?raw や ?import&raw、?import&url&inline といった特定のクエリパラメータを付与することで、HTTPステータス200の正常応答とともに内容が取得できてしまうという。
攻撃が成立する3つの条件と露出の背景
F5 Labsの分析によると、この脆弱性を悪用してデータが窃取されるには、対象アプリケーションが以下の3つの条件をすべて満たしている必要がある。
--hostオプションやserver.host設定を使用している、またはDockerコンテナのポートマッピング設定ミスなどにより、Vite開発サーバーがローカルネットワークやパブリックインターネットに明示的に公開されていること。- 対象となる機密ファイルが、
server.fs.allowでアクセスを許可されたディレクトリ内に存在していること。 - 対象ファイルが、
server.fs.denyでアクセスを拒否するパターンに一致していること。
F5 Labsは「標準設定のViteはローカルホスト(localhost)にのみバインドされている」と説明している。しかし、開発者が --host オプションを指定したり、Docker環境のポート転送設定を誤ったりして外部からアクセス可能な状態に置かれた場合、インターネット経由で直接攻撃リクエストが到達可能になるという。
狙われるクラウド認証情報とインフラ状態ファイル
攻撃者は、ローカルファイルシステムを参照するための内部エンドポイントである /@fs/ に対して、機密ファイルのパスとバイパス用のクエリパラメータを組み合わせたHTTP GETリクエストを送信する。これによりサーバー側のアクセス拒否チェックが無力化され、ファイルの内容がレスポンス本文に平文で出力される仕組みとなっている。
F5 Labsが観測した攻撃リクエストでは、以下のような広範な機密情報が標的となっていた。
- 環境変数設定ファイル(
.env) - AWSの認証情報、設定ファイル、バックアップデータ
- Azureのプロファイル情報
- インフラ構成管理の状態ファイル(
terraform.tfstateやserverless.ymlなど) - システムメモリおよびプロセス環境情報(
/etc/passwd、/proc/self/environ、/proc/1/environ、/proc/self/cwd/.envなど)
特に /proc/self/cwd/.env へのアクセス試行について、F5 Labsは「Webアプリケーションの絶対パスを推測することなく、実行中プロセスのカレントディレクトリから直接アクティブな環境設定を読み取ろうとしており、デプロイ構成の特徴を熟知した手口だ」と指摘している。これにより、平文で保存されたAPIシークレットやデータベースパスワード、クラウドアカウントの管理者権限が第三者に渡る危険があるという。
ボット偽装とクラウドIPによる追跡回避
今回のスキャン攻撃では、セキュリティ監視やログ分析をかいくぐるための隠蔽工作も確認された。
リクエストのUser-Agentヘッダーには、Googlebot、ClaudeBot、GPTBot、PerplexityBot、OAI-SearchBot、Amazonbotなど、主要な検索エンジンや大手AIサービスのクローラーを装う値が設定されていた。さらに、IPアドレスによるアクセス制限をすり抜けたりアクセス元の特定を困難にしたりするため、X-Forwarded-For や X-Real-IP ヘッダーに偽造されたIPアドレス(例:34.94.237[.]62 や 104.28.219[.]193)を注入する手口も使われていたという。
F5 Labsによると、悪意ある活動の多くは米国、ベルギー、オランダ、シンガポール、台湾から発信されており、攻撃者は検知を免れて監視の目を欺くためにGoogle Cloud Platform(GCP)のIPアドレス帯(34.xおよび35.x)を中継拠点として悪用していると報告されている。