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AWS ML Blog

空調大手Trane、Amazon Bedrockを活用したAIエージェントで機器診断を20分から20秒へ短縮 情報取得を60倍高速化

要点

  • 空調大手のTrane Technologiesが、AWSの「Amazon Bedrock AgentCore」を活用したAIエージェントを3〜4週間で構築した。

  • 従来は複数画面を行き来して20分以上かかっていた設備診断が、自然言語による約20秒の対話で完了し、インサイト取得速度が60倍向上した。

  • 現場技術者やアカウントマネージャー、ビルオーナーなど、立場によって異なる情報ニーズに合わせて回答を最適化する仕組みを導入した。

  • システム設計では、エージェントの推論ロジックとツール実行の分離、一元化されたゲートウェイによるリアルタイムデータの統合を採用している。

  • 米Amazon Web Services(AWS)は同社の公式ブログにて、空調機器大手のTrane Technologies(トレイン・テクノロジーズ)が「Amazon Bedrock AgentCore」を活用したAIエージェントソリューションを構築した事例を公開した。Traneのエンジニアリングチームが3〜4週間で開発した本システムにより、従来20分以上を要していた設備の診断業務が20秒の自然言語対話へと短縮され、情報取得の速度が60倍に向上したことが明らかになった。

複数画面の確認に伴う運用負荷と現場の課題

Trane Technologiesは、年間売上高210億ドル超を誇り、世界100カ国以上で事業を展開する空調ソリューション企業だ。同社はデータセンターや病院、製造工場、商業施設などに導入されている数百万台のHVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning:暖房・換気・空調)設備を管理している。

同社では「Trane Cloud」と呼ばれるデジタル基盤を運用しており、世界中の設備からリアルタイムのパフォーマンスデータを集約して、機器の予兆保全やエネルギー最適化に役立ててきた。しかし、従来のダッシュボードを中心としたビル管理システムでは、運用上の確認事項を1つ調べるだけでも複数のダッシュボードを行き来し、何層ものメニューを掘り下げて探す必要があった。この一連の作業には20分以上を要する場合もあり、大規模な施設運用において対応の遅れや意思決定の停滞を招く要因になっていたという。

担当者の役割ごとに異なる情報要求

同社が直面していたもうひとつの課題は、同じ設備データであっても利用者の立場によって必要とされる情報の粒度や視点が大きく異なる点だった。

現場の技術者には、冷媒の圧力値や障害コード、トラブルシューティングの手順など、機器診断に直結する正確なデータが求められる。一方で、顧客対応を行うアカウントマネージャーには、設備の稼働率やコスト削減の機会、施設全体の運用トレンドといった戦略的な指標が必要となる。さらに、ビルの所有者はエネルギー効率のスコアやサステナビリティ(持続可能性)に関する指標、経営視点での簡潔な運用サマリーを求める。

従来の管理ツールはすべての役職に対して同一の単一画面を提供していたため、各担当者が自分自身の業務範囲外にある機能までナビゲーションしなければならず、作業の非効率を生んでいた。

わずか3〜4週間で開発、対話型で60倍の高速化を実現

これらの課題を解消するため、TraneのエンジニアリングチームはAWSの生成AI基盤である「Amazon Bedrock AgentCore」を採用し、対話型AIエージェントの開発に着手した。開発期間はわずか3〜4週間だったという。

完成したAIエージェントはTrane Cloudと統合されており、利用者は単一の対話型インターフェースから自然言語で質問するだけで、必要な運用コンテキストにアクセスできる。技術者を対象に数週間にわたって実施された社内ベンチマークテストでは、従来20分以上かかっていた複数画面での診断ワークフローが、自然言語によるわずか20秒の対話に短縮された。

この60倍のインサイト取得速度の向上により、設備に不具合が生じてから対処する事後対応型から、データを主導としたプロアクティブ(能動的)な最適化運用へと移行することが可能になったとしている。

システムを支える3つのアーキテクチャ設計

同社とAWSは、今回のAIソリューションを実現した重要なアーキテクチャ上のアプローチおよび設計判断として、以下の3点を挙げている。

  1. エージェントロジックとツール実行の分離:AIエージェントの推論処理と実際の外部ツール実行処理を切り離すことで、システムの柔軟性と管理性を確保した。
  2. 一元化されたツールゲートウェイによるテレメトリ統合:中央集権的なツールゲートウェイを経由し、設備から送られるリアルタイムのテレメトリ(遠隔計測)データをエージェントへ統合した。
  3. ペルソナに応じた回答の最適化:現場技術者、アカウントマネージャー、ビルオーナーといった異なる利用者ペルソナ(役割像)を認識し、それぞれのニーズに合わせて回答形式や内容を個別に仕立て直して提供する仕組みを整えた。
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