Liquid AI、端末側で高速動作する視覚言語モデル「LFM2.5-VL-3B」を公開
要点
- Liquid AIは、ユーザー自身のハードウェア上で高速に動作する軽量な視覚言語モデル「LFM2.5-VL-3B」を発表した。
- 画面UI認識、自然言語による物体検出、複数画像の処理、ファンクションコーリングの4領域で大幅な性能向上を果たした。
- SigLIP2画像エンコーダと約34兆トークンのデータで学習し、語彙数を12万8000に倍増させて多言語対応を強化した。
- 推論ステップを挟まず直接回答する設計を採用し、リアルタイム処理やエッジ端末での高速応答を実現している。
- 30億パラメータ帯の各種画像ベンチマークにおいて、実世界タスクを中心に同クラスをリードする性能を記録した。
米AIスタートアップのLiquid AIは2026年8月12日、ローカル環境やエッジ端末上で高速に動作する新しい視覚言語モデル「LFM2.5-VL-3B」を発表しました。文書やデジタル画面の認識、画像内の物体特定、外部ツールの呼び出しといった高度な処理に対応しながら、端末側でのリアルタイムな応答性を両立させています。同モデルはHugging Face上で公開され、開発者が自前のハードウェアに導入して利用できるようになっています。
エッジ向けに特化した軽量・高速な視覚言語モデル
LFM2.5-VL-3Bは、パラメータ数が約31億(3.1B)の軽量なマルチモーダルモデルです。視覚言語モデル(画像とテキストを同時に理解して処理するAIモデル)でありながら、外部サーバーを介さずにユーザーの手元にあるデバイス上で直接実行できる点が大きな特徴です。
応答速度を重視した設計となっており、複雑な中間推論ステップを挟むことなくダイレクトに回答を出力する仕組みを採用しています。これにより、低遅延が求められるリアルタイムアプリケーションや、計算資源が限られたオンデバイス環境でも軽快な動作を維持できるとしています。
前世代から強化された4つの主要機能
Liquid AIによると、LFM2.5-VL-3Bは従来モデルと比較して特に以下の4つの側面で大きな機能拡張が行われました。
- 画面およびUIの理解(Screen/UI understanding)
PCやスマートフォンなど、多様なデバイスのデジタル画面上に表示されるUI要素やレイアウトを正確に把握できます。 - グラウンディングと物体検出(Grounding)
自然言語による指示や質問を受け、画像内のどこに該当する対象が存在するかを特定・検出する精度が向上しました。 - 複数画像の同時入力(Multi-image input)
1枚の画像だけでなく、複数の画像にまたがる文脈や情報を読み取って比較・把握する能力が改善されています。 - ファンクションコーリング(Function calling)
テキスト単体の処理はもちろん、画像とテキストが混在する場面においても、外部ツールやAPIを適切に呼び出す機能が大幅に強化されました。
アーキテクチャと2段階の学習プロセス
LFM2.5-VL-3Bの基本構造には、Googleが開発した画像エンコーダ「SigLIP2 400M NaFlex」(画像の視覚情報を特徴量へ変換する仕組み)が採用されています。テキスト処理を担う言語モデルの基盤には、同社のテキストモデル「LFM2.5-2.6B」と同一の事前学習済みバックボーンが組み合わされています。
事前学習では、約34兆(34T)トークンに及ぶ膨大なデータセットが使用されました。この中には、前世代と比べて4倍に増やされた視覚データが含まれており、精選された画像と説明文のペア、OCR(画像内の文字を読み取る技術)、グラウンディング、指示遂行データセットなどが活用されています。
また、非ラテン文字を含む多言語の処理能力を高めるため、トークナイザー(文章をAIが理解できる単語や文字の単位に分割するモジュール)をゼロから作り直すのではなく、既存の仕組みを拡張する手法を採用しました。これにより、語彙数を従来の2倍にあたる12万8000(128K)へと拡大しています。
モデルの事後学習(Post-training)は、以下の2段階で実施されました。
- 第1段階(SFT): より大規模な教師モデルからの知識蒸留(大規模モデルの知識をコンパクトなモデルへ効率よく移行する手法)と、同社が提唱する「Antidoom training」を組み合わせた教師あり微調整。
- 第2段階(RL): 複数の評価基準を同時に最適化するマルチリワード強化学習(multi-reward RL)。
ベンチマーク結果:同規模クラスでトップ水準を達成
公開された性能評価において、LFM2.5-VL-3Bは視覚およびテキストに関する各種標準ベンチマークで高いスコアを記録しました。実世界の写真を用いた画像認識タスクに加え、ドキュメントや図表、画面UIの読み取りといったデジタルコンテンツの解析においても、同パラメータ帯の競合モデルを上回る結果を示しています。
主な視覚系ベンチマークにおける評価結果は以下のとおりです。
- 総合的な視覚理解(MMStar): 63.3ポイントを記録。前世代モデル「LFM2-VL-3B」(57.7)から性能が大きく向上したほか、Googleの「gemma-4-E2B-it」(45.3)や「gemma-4-E4B-it」(52.9)、OpenDataLabの「InternVL 3.5 2B」(57.7)、Alibabaの「Qwen3.5-2B」(55.1)などを上回りました。
- 実世界画像QA(RealWorldQA): 73.1ポイントを獲得し、前世代の71.1からスコアを伸ばすとともに、同クラスの小型モデル群(gemma-4-E2B-itの60.0、InternVL 3.5 2Bの61.6、Qwen3.5-2Bの65.1など)を一歩リードしています。
- 多言語視覚理解(MMMB / Multilingual MMBench): MMMBで83.0、Multilingual MMBenchで79.5を記録し、語彙拡張の成果が反映される形となっています。
- その他ベンチマーク: 総合画像評価の「MME」で73.1、「SEED-Bench (image)」で77.7、「MMBench (dev EN v1.1)」で81.0、「CountBenchQA」で87.3、「SimpleVQA」で35.4、「MM-IFEval」で60.0をそれぞれ記録しています。
Liquid AIは、エッジ端末やプライベート環境でのAI活用を後押しするモデルとして、LFM2.5-VL-3Bの普及を進めていく方針です。