マイクロソフト、AI開発基盤「Microsoft Foundry」でHugging Faceの厳選モデルをワンクリック提供へ──運用自動化のマネージドGPUサービスも発表
要点
- マイクロソフトは「Microsoft Build 2026」にて、AI開発プラットフォーム「Microsoft Foundry」の新デプロイオプション「Foundry Managed Compute」と、厳選されたオープンモデルを提供する「Hugging Face models on Foundry」を発表した。
- 「Hugging Face models on Foundry」は、毎週更新されるオープンウェイトモデルのカタログから、セキュリティスキャン済みのモデルをワンクリックでデプロイできるサービス。
- 新たなオプションとなる「Foundry Managed Compute」は、GPU構成の最適化やランタイムの更新、パッチ適用などのサーバー運用をマイクロソフトが自動で行うマネージドGPUサービスである。
- 既存オプションと単一のエンドポイントやSDK、請求システムを共有するため、最先端の商用モデルとオープンソースモデルを同一のAIエージェント内でシームレスに混在させることができる。
リード文
米マイクロソフトは開発者向けカンファレンス「Microsoft Build 2026」において、自社クラウド上でエージェントAIアプリケーションを構築・運用するためのプラットフォーム「Microsoft Foundry」の新機能を発表した。発表されたのは、マネージドGPUプラットフォームサービス「Foundry Managed Compute」および、オープンソースAIのコミュニティサイトであるHugging Faceと連携した「Hugging Face models on Foundry」である。これにより、エンタープライズ環境におけるオープンソースおよびカスタムモデルの導入と運用が大幅に簡素化されるという。
統一されたAIアプリ開発基盤「Microsoft Foundry」
「Microsoft Foundry」は、様々なAIモデルを統一的に扱えるプラットフォームである。マイクロソフトやOpenAI、Anthropic、Meta、Mistral、DeepSeek、Hugging Faceなどのモデル群に対し、単一のエンドポイントと、Python、C#、JavaScript、Javaに対応した共通のSDKを通じてアクセス可能だ。
自律的に動作するAIを構築する「Foundry Agent Service」では、マルチエージェントオーケストレーション機能や、内蔵メモリ、外部データから知識を補強する「Foundry IQ」によるナレッジグラウンディング(事実に基づいた回答を出力させるための補足処理)を提供する。さらに実行トレースやリアルタイム監視、プロンプト最適化機能が組み込まれており、安全性フィルター、脆弱性を探る「AI Red Teaming Agent(敵対的テストを行うAIエージェント)」、役割ベースのアクセス制御(RBAC)、プライベートネットワーク、Azure Policy統合なども標準提供される。
第3のデプロイ選択肢「Foundry Managed Compute」
Foundryにおけるデプロイ方法には、これまで手軽に開始できる「pay-per-token(トークン課金)」と、最先端モデル向けの「provisioned throughput(帯域幅確保プラン)」の2つが存在していた。今回追加された第3の選択肢「Foundry Managed Compute」は、オープンソースやカスタムのモデルを対象とするマネージドGPUサービスである。
開発者はパラメータ数、コンテキスト長(処理可能なテキストの長さ)、遅延とスループットの優先度を指定するだけでよく、物理的なGPUトポロジー(アクセラレータの接続構成)はFoundryが自動で最適化して処理する。
システムの保守管理についても、マイクロソフト側がランタイム(実行環境)の自動アップデートやセキュリティパッチの適用を行う。vLLMやSGLang、TensorRT-LLM、NIM、TEI、llama.cppといった主要なランタイムに対応し、モデルを再デプロイせずに更新される。本サービスは、既存の課金オプションとエンドポイント、SDK、認証、監視、および請求書を完全に共有する仕様だ。
Hugging Faceとの統合がもたらす価値
Hugging Faceは、1500万人の開発者と300万以上のオープンモデルが集まるAI開発のハブだ。オープンモデルは現在、ベンチマークで商用モデルとの性能差を縮めており、フルウェイト(すべてのモデルパラメータ)へのアクセスは以下の利点をもたらすという。
- 高度なカスタマイズ: LoRA(一部のパラメータのみを効率的に学習させる手法)を用いた微調整やモデルの蒸留、量子化による最適化
- ホスティングの制御: 自社インフラ内でのモデル稼働
- コスト構造の設計: アクセラレータの時間単位課金や、アイドル時のゼロスケール(不使用時に稼働数をゼロにする機能)を利用したコスト予測の容易化
- バージョン管理: 特定バージョンの固定と、独自のペースに合わせたアップデート
しかし、企業がこれらを運用するには、ライセンス検証や脆弱性のスキャン、インフラ管理などの負荷が障壁となっていた。「Hugging Face models on Foundry」は、この運用レイヤーをマイクロソフトが引き受けるものである。毎週更新される厳選モデルがAzure上に事前配置され、スキャン済みの安全なランタイムでワンクリックデプロイが可能になるとしている。