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The Hacker News

マイクロソフト、AIを全面悪用するフィッシング基盤「EvilTokens」を解体 1万2000件の侵害に関与

要点

  • 米マイクロソフトは、OAuth 2.0の仕組みを悪用するサイバー犯罪基盤「EvilTokens」のインフラを解体した。

  • 同サービスは1万2,000件以上のメールアカウント侵害に関与しており、背後の脅威グループは「Storm-2992」と命名されている。

  • 米連邦裁判所の許可と民間各社の連携によって作戦が実行され、英国では運営に関与した男2名が逮捕された。

  • 侵入から標的選定、メール分析、詐欺メールの文案作成に至る攻撃プロセスの全工程にAIが組み込まれていた。

  • 米マイクロソフトは2026年9月22日、攻撃チェーンの全工程で人工知能(AI)を悪用していたフィッシングサービス「EvilTokens」のインフラを解体したと発表した。米バージニア州東部地区連邦地方裁判所の許可を受け、民間セキュリティ企業や業界団体との共同作戦として実施された。本サービスはこれまでに約1万2,000件のアカウント侵害に関与していたことが明らかになっている。

国際的な連携によるインフラ停止と関係者2名の逮捕

今回のテイクダウン(差し押さえ・活動阻止)作戦は、マイクロソフトの主導のもと、Health-ISAC、Cloudflare、Coinbase、OpenAI、Railway、SpyCloud、The Shadowserver Foundation、TRM Labsなどの組織が連携して実施された。マイクロソフトは、EvilTokensの開発および運用サポートを担当していた脅威アクターを「Storm-2992」と呼称して追跡している。

また、インフラの解体に先立ち、英ロンドン警視庁(Metropolitan Police Service)は2026年9月11日、この違法な商用サービスの運用に関与した疑いで32歳と38歳の男2名を逮捕した。マイクロソフトはEvilTokensについて、AIを用いてメールアカウントを侵害し、金銭詐欺の計画を立案する「強力なサイバー犯罪プラットフォーム」であったと位置づけている。

OAuthの認証手順を悪用した「デバイスコードフィッシング」の手口

EvilTokensは、2026年3月にセキュリティ企業Huntressによって初めて報告された「Phishing-as-a-Service(PhaaS:フィッシング攻撃の環境やツールを有料提供する犯罪モデル)」である。その特徴は、入力機能が制限された端末向けの認証手順である「OAuth 2.0 デバイス認可フロー」を悪用する点にある。

攻撃者はフィッシングメールなどを通じて被害者にデバイスコードを提示し、正規の認証用ウェブページ(例:microsoft.com/devicelogin)へアクセスしてそのコードを入力するよう誘導する。被害者が正規の画面でコードを入力して認証を完了すると、認証サーバーから攻撃者側のクライアントに対してアクセストークンやリフレッシュトークンが発行される仕組みだ。

これにより、攻撃者は被害者のパスワードなどの資格情報を直接盗取することなく、被害者本人になりすましてアカウントへ継続的にアクセスできるようになる。奪われたトークンは、メールデータの外部持ち出しや、攻撃の検知を防ぐための悪意ある受信ルールの設定に悪用されていた。さらに一部の事例では、新たなデバイスを被害者のメールボックスに追加登録することで、長期的な不正アクセス経路を維持していたという。

侵入後の詐欺活動を支援するAIチャットボットの統合

EvilTokensの大きな特徴は、単なるアカウント侵害にとどまらず、侵入後の詐欺実行を支援するAI機能が組み込まれていた点にある。

マイクロソフトのデジタル犯罪ユニットでアソシエイト・ゼネラルカウンセル兼ゼネラルマネージャーを務めるSteven Masada氏は、「EvilTokensは犯罪者がメールアカウントに侵入するのを支援するだけでなく、その中心には被害者の受信トレイを分析するAI対話型チャットボットが存在していた」と説明している。このチャットボットは、メールボックス内から信頼関係、支払い承認の流れ、機密性の高い職務内容などを特定し、詐欺が最も成功しやすい状況を攻撃者に提示していたという。さらに、信頼できる関係者になりすましたメッセージの下書きを作成するなど、具体的な詐欺の手順や文案の提案まで行っていた。

プラットフォームには、メールの要約や翻訳、組織内での役職のマッピング、潜在的な標的の推奨といった機能に加え、あらかじめ設定されたプロンプト(指示文)も用意されていた。攻撃者はこれらの機能を利用して、電信送金に関するやりとりの検索、社内で資金移動を承認・実行できる人物の特定、取引先の請求書の発見、なりすましに最適な人物の選定などを簡単に行うことができた。

Telegramでの商用化とビジネスメール詐欺の参入障壁低下

セキュリティ企業Sekoiaが2026年3月下旬に公開した調査結果によると、EvilTokensは2026年2月中旬からTelegram上で「ターンキー(即座に運用可能な完成品)」型のPhaaSとして販売されていた。専用の管理者アカウント(@eviltokensadminなど)や販売用ボット(@EvilTokens_botなど)、公開チャンネルを通じて提供され、利用者は多数のフィッシング用テンプレートや、ビジネスメール詐欺(BEC:取引先や幹部になりすまして送金を指示する詐欺)を自動化するAI機能を利用できた。

ブロックチェーン分析企業TRM Labsは、「EvilTokensはアカウント乗っ取り、AIによるメールボックス分析、詐欺用ツールを単一の商用サービスに統合したことで、かつて大規模なビジネスメール詐欺や請求書詐欺を実行するのに必要だった高度な専門知識のハードルを引き下げた」と指摘している。マイクロソフトも、これまでアイデンティティ攻撃やクラウドシステム、ソーシャルエンジニアリングにまたがる深い知見が必要だった作業が、単一のサービスによって容易に実行できる状態になっていたと述べている。

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