マイクロソフト、音声認識モデル「Azure AI Speech LLM 2607」を発表 多言語精度向上と最大3倍の高速化を実現
要点
-
米マイクロソフトは、音声認識モデルの最新アップデート「LLM Speech 2607」を発表した。
-
会話途中で言語が切り替わる音声の認識精度が向上したほか、句読点や数値表記の正確性が強化された。
-
前バージョン「2605」と比較して処理遅延が最大3分の1(最大3倍高速)に短縮され、リアルタイム対話への応答性が向上した。
-
専門用語や固有名詞を登録する「フレーズリスト」が刷新され、専用パラメータ経由で2,000語以上を指定可能になった。
-
クラウド側で自動的に適用されるため、利用者はシステム構成を変更することなくそのまま新モデルを利用できる。
-
米マイクロソフトは2026年9月10日、音声入出力AIサービス「Azure AI Speech」の最新モデルアップデートとなる「LLM Speech 2607」を発表した。同社の開発者向けブログ「Microsoft Foundry Blog」において、プロダクトマネージャーのレナ・リュー(Rena Liu)氏が明らかにした。
-
今回のアップデートでは、多言語環境における認識精度の引き上げや、会話中に言語が切り替わる音声への対応力が大幅に強化されたという。また、専門用語を認識させやすくするカスタマイズ機能の簡素化や処理速度の向上も盛り込まれており、開発者は既存のアプリケーション構造を変更することなく、より高精度な音声体験を構築できるようになるとしている。
多言語対応の強化と言語切り替えへの適応
「LLM Speech 2607」における大きな進化点の一つが、多言語認識の品質向上だ。主要言語(Tier 1)および準主要言語(Tier 2)において決定的な品質向上が達成されたほか、対応言語群(Tier 2およびTier 3)における認識精度の底上げが行われ、言語間での品質格差が縮小されたと説明されている。
特に、文章内の大文字・小文字の使い分けや句読点の挿入、数値や数字の書き起こしにおいて堅牢性が向上したという。また、一連の会話の中で話者が話す言語を切り替える「言語混在音声」の認識性能も改善された。これにより、複数の言語が混ざり合う会話環境でも、途切れや誤認識の少ない書き起こしが可能になるとしている。
さらに、ドメインを考慮したエンティティ(固有名詞などの識別要素)や人名の認識性能も高められており、人名や企業ブランド名、各業界の技術用語などを正確に捉えられるようになったと報告されている。
処理遅延を最大3分の1に短縮、応答性を改善
モデル品質の向上と並び、処理速度の面でも大きな改善が加えられた。マイクロソフトの内部評価によると、今回のLLM Speech 2607は、前回の「2605」リリースと比較してレイテンシ(処理遅延時間)が最大3倍高速化(3分の1に短縮)されたという。
処理遅延の大幅な低減は、音声エージェントや対話型アプリケーションのように、リアルタイムでの素早いレスポンスが求められるユースケースにおいて特に効果を発揮するとしている。明瞭で俊敏な応答が可能になることで、より自然な対話体験の実現につながるという。
2,000語以上に対応する専用「フレーズリスト」パラメータを新設
音声認識における一般的な課題として、製品名や業界用語、略語といった専門的な語彙の正確な認識が挙げられる。LLM Speech 2607では、こうした専門用語を認識モデルに伝える「フレーズリスト」機能の利用手順が簡素化された。
従来の方式では、プロンプト全体の中にカスタム語彙を埋め込む必要があったが、新バージョンでは専用のパラメータフィールドが新設された。開発者はこの専用フィールドに直接ヒントとなる語句を指定できるようになり、本番環境における設定やメンテナンスがよりシンプルかつ整理された形で運用できるようになったという。
このフレーズリストには2,000語以上のエンティティを登録することが可能で、モデルが文脈をより深く把握できるようになり、認識精度の向上に寄与するとしている。具体的な用途としては、以下のシナリオが挙げられている。
- 企業独自の社内用語
- 技術的な製品名
- 業界特有の専門用語
- 頭字語や略語
- 顧客側で定義された独自用語
サービス側で自動適用、追加作業なしで利用可能
LLM Speech 2607は、高速な音声書き起こしを実現する「Fast API」経由で提供される。音声エージェントの開発や会議の文字起こしソリューション、コンタクトセンター業務、オンライン会議アプリケーションなど、高い信頼性と処理量が求められるコミュニケーション用途に適していると説明されている。
本アップデートはクラウドのサービス側で自動的に展開されるため、ユーザー側での移行作業やシステムの改修は不要とされている。すでに「Foundry Playground」の管理画面上でテストが可能なほか、REST APIや各種SDKを通じた利用方法についての公式ドキュメントも公開されている。