米財務省、重要インフラ攻撃に関与したイラン系ハッカー集団に制裁発動――1680万ドル超の暗号資産取引も判明
要点
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米財務省は、米国の重要インフラへの侵入やサイバー窃盗に関与したイラン関連のサイバー脅威アクターに対し、新たな経済制裁を発表した。
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「Operation Economic Outcast」と名付けられた作戦の一環として、核や石油、サイバー、暗号資産など多岐にわたる分野の約60の個人・団体・船舶が指定された。
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制裁対象には、イラン情報治安省(MOIS)傘下で活動する「Mabna Institute」のメンバーらが含まれ、エネルギーや医療、防衛などの重要分野からデータを窃取していたとされる。
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ブロックチェーン分析により、関与したメンバーのウォレットが2018年以降で計約1680万ドルの暗号資産を受け取っていた実態も明らかになった。
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米財務省は2026年8月25日、米国内の重要インフラ企業への大規模な侵入や金銭目的のサイバー攻撃を実行したとして、イラン政府とつながりを持つサイバー攻撃者らに対する制裁措置を発表した。「Operation Economic Outcast(経済的追放作戦)」と銘打たれた政府全体の経済キャンペーンの一環として実施されたもので、イランの国家機関に連なる脅威グループとその関係者が広く名指しされている。
全政府規模の経済キャンペーン「Operation Economic Outcast」
米財務省が打ち出した今回の制裁措置は、イラン政権およびイスラム革命防衛隊(IRGC:イランの体制維持を担う精鋭軍事組織)を支える資金源を断ち切ることを目指している。スコット・ベセント(Scott Bessent)財務長官は「我々は世界中に広がるイランの金融ネットワークに対して経済的な攻勢を開始する。その目的は、テヘランが孤立するまで、この専制体制を維持しているすべての経済的生命線を切断することだ」と表明した。
今回の指定範囲は、核開発、ミサイル、石油、サイバーネットワーク、さらにはデジタル資産(暗号資産)分野にまで及び、約60のイラン関連団体、個人、船舶が制裁対象となった。なかでもサイバー分野においては、イラン情報治安省(MOIS:同国の情報収集と治安活動を統括する機関)の傘下で米国の重要インフラ(エネルギーや医療など社会維持に不可欠な基盤)への侵害や金銭窃盗を重ねてきたグループが標的となっている。財務省は、MOISが米国民に危害を加えることを含む政治的目標の達成に向け、サイバー諜報活動に関与する複数の脅威ネットワークを指揮していると説明している。
米司法省が起訴した「Mabna Institute」関係者ら
今回制裁対象となった人物のうち複数名は、米司法省(DOJ)によって直前の週に起訴されていた。これらの人物はテヘランを拠点とする組織「Mabna Institute」の構成員とされている。
制裁対象として名前が挙げられた主な人物は以下の通りだ。
- ベフザード・メスリ(Behzad Mesri):米テレビ局HBOへのサイバー攻撃と恐喝未遂、および制裁対象企業Net Peygard Samavat Companyの代理活動に関与したとして、米外国資産管理局(OFAC:制裁措置を管轄する米財務省の機関)から2018年3月と2019年2月にも制裁指定を受けている。
- ケイヴァン・ファイヤズ・ガレ・ブラグ(Keyvan Fayyaz Ghareh Blagh)
- サベル・シャハバジ・バルジェ(Saber Shahbazi Balujeh)
- モハマド・レザ・カドホダイ(Mohammad Reza Kadkhoda'i)
- モジタバ・ガレ・クーヒ(Mojtaba Ghal'eh-Kuhi)
- アルマン・カフザディアン(Arman Kahzadian)
米財務省の発表によると、ケイヴァン・ファイヤズ・ガレ・ブラグ、サベル・シャハバジ・バルジェ、モハマド・レザ・カドホダイの3名が、ネットワーク侵入行為の大半を実行していたとされる。彼らは少なくとも2023年後半以降、エネルギー関連企業、防衛請負業者、医療機関、IT企業、金融機関など、米国の重要インフラを構成する多数の企業へ侵入し、データを不正に持ち出した疑いが持たれている。
さらにこの脅威アクターらは、2024年夏には米国の地方自治体、州政府、連邦政府に属する複数の公的機関のオフィスにも侵入したとみられている。
国家任務の傍らで行われた「個人の利益追求」
財務省の発表では、このハッカーグループが国家機関であるMOISのために活動する一方で、構成員個人の金銭的欲望や私腹を肥やす動機にも強く動かされていた特異な実態が明かされている。
一部のメンバーは、MOISに利益をもたらす作戦よりも自分自身の金銭的利益を優先する傾向があり、その結果として自国であるイラン国内の企業を標的にすることさえあったという。具体的な事例として、2025年夏にはモジタバ・ガレ・クーヒとサベル・シャハバジ・バルジェの2名が、イラン国内の電気通信事業者を標的にしてデータの持ち出しを行ったとされている。
また、アルマン・カフザディアンについては暗号資産の窃盗に主力を置いていたとされ、2023年夏には3万ドル相当以上のビットコイン(BTC)を保管していたウォレットを不正に掌握したことが報告されている。
ブロックチェーン分析で判明した1680万ドルの送金実態
ブロックチェーン分析企業TRM Labsの調査によると、Mabna Instituteのメンバー5名に関連する30個の暗号資産ウォレットにおいて、合計約1680万ドルの資金流入が確認されたという。
特にケイヴァン・ファイヤズ・ガレ・ブラグが管理する10個のアドレスには、2018年1月6日から2026年8月20日までの間に合計1550万ドルが送金されており、このネットワーク全体のオンチェーン(ブロックチェーン上に直接記録される取引)取引量の92%を占めていた。
また、過去にも制裁を受けていたベフザード・メスリに関連する15のアドレスには、2019年7月12日から2026年8月22日の間に約120万ドルが送金されていた。現在、確認された30のアドレス全体に残されている残高の合計は、20万2662ドルとなっている。