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The Hacker News

米国の逮捕状でロシア人観光客がアルメニアで拘束、弁護士は「同姓同名の別人」と主張

要点

  • アルメニアの空港でロシア人観光客が、ランサムウェア「REvil」の容疑者に対する米国の逮捕状に基づき拘束された。

  • 弁護士らは、米国側の書類に父称(ミドルネーム)の記載が欠落していたため、自動システムが同姓同名の別人を誤って検出したと主張している。

  • 米国が追う真の容疑者はサイバー攻撃で各国から制裁を受けている人物だが、現在はロシア国内で服役中であり出国できない状態にあるとされる。

  • 拘束された男性はロシア地方都市の元刑務所職員であり、英語も話せずサイバー犯罪とは無関係であると訴えている。

  • アルメニアの空港でロシア人観光客の男性が、米国政府からの身柄引き渡し要求に基づき、国際的なランサムウェア(データを暗号化して身代金を要求する不正プログラム)グループ「REvil(レヴィル)」のメンバー容疑で拘束された。しかし、男性の弁護士や家族は、米国側の手配書類における名前の記載不備から生じた「人違い」であると強く主張している。この拘束劇は、アルメニアのエレバンにある空港で発生し、複数のロシアメディアが報じている。

空港での突然の拘束とミドルネームの相違

報道によると、アルメニア当局は6月28日から、同国を訪れていたロシア人観光客のアレクサンドル・エルマコフ(Aleksandr Ermakov)氏を拘束している。妻のマリア・ユロワ氏によると、エレバンのズヴァルトノッツ空港の出発ロビーにいたところ、国境警備隊員に呼び止められた。隊員はロシアのSNS「VKontakte」から取得したエルマコフ氏のプロフィール写真が映ったスマートフォンを提示し、彼を別室へと連行したという。

しかし弁護士側は、米国が身柄引き渡しを求めている人物と、拘束された男性は完全に別人であると説明している。

米国が追跡しているのは、ロシア国籍の「アレクサンドル・ゲナジエヴィチ・エルマコフ(Aleksandr Gennadievich Ermakov)」容疑者である。同容疑者は、オーストラリアの医療保険大手メディバンク(Medibank Private)から約970万件の顧客レコードを盗み出し、その一部をダークウェブに公開したサイバー攻撃に関与したとされる。この事件を受け、同容疑者は2024年1月にオーストラリア、米国、英国の各国政府から経済制裁の対象に指定されている。

さらに、ロシアの国営通信社TASSなどの報道によると、このハッカーのエルマコフ容疑者は、ロシア国内で懲役2年の判決を受け服役中であり、法的に出国が禁止されている状態にあるという。

一方、アルメニアで拘束されているのは、ロシアのオムスク出身の「アレクサンドル・ユリエヴィチ・エルマコフ(Aleksandr Yuryevich Ermakov)」氏である。弁護士によると、同氏は元刑務所勤務の法律家であり、英語を話すこともできないという。

書類の不備が招いた「システムによる誤認」

ロシア人同士の同姓同名を識別する際、ロシアのパスポートに記載されている「父称(patronymic)」(父の名に由来するミドルネーム)が重要な役割を果たす。オーストラリアや英国の制裁リストには「ゲナジエヴィチ」という父称が明記されているが、米財務省外国資産管理局(OFAC)の制裁対象者リストには父称の記載がなく、「Aleksandr ERMAKOV」とだけ表記されていた。

拘束されたエルマコフ氏の弁護士を務めるディラン・ラジャヴィ氏は、米国が用意した逮捕手続き書類に名と姓しか記載されていなかったため、アルメニア側の自動照合システムが誤って同姓同名の別人を検出したという仮説を立てている。ラジャヴィ氏は、指紋照合や詳細なパスポートデータの確認など、身元を特定するための標準的な手続きは行われておらず、現時点では逮捕状の存在のみで勾留が続いていると指摘した。

真の容疑者であるハッカーとREvilの関連

米国テキサス州北部地区の連邦地裁が発行したとされる起訴状によると、REvilの容疑者であるエルマコフは、2019年4月頃から2021年7月12日にかけて、ランサムウェア「Sodinokibi/REvil」を用いたサイバー攻撃に関与した疑いが持たれている。この攻撃による被害者は、民間企業、法執行機関、政府機関、学校、病院など1000件以上に及び、一部はテキサス州北部地区でも発生している。

また、インターポール(国際刑事警察機構)が発行した赤手配書では、同容疑者がREvilの管理者の一人であり、1370万ドル(約20億円)以上の利益を得ていたとされている。

なお、オーストラリアのメディバンクに対するハッキング事件が発生したのは2022年10月であり、米国の起訴状に記載された活動期間よりも後の出来事である。米国政府はメディバンクの件に関してエルマコフ容疑者を公式に起訴したとは発表していない。また、米財務省は同容疑者を「REvilに関連があると信じられている人物」と位置づけるに留めていたが、インターポールの手配書ではグループの中心人物(管理者)として扱われているなど、各機関の認識にズレもある。

今後の動向と容疑者特定の経緯

本件について、アルメニア当局は公式な発表を行っておらず、米司法省も起訴に関する声明を出していない。報道を行っているロシアのメディア(イズベスチア、REN TV、チャンネル5)はいずれも「ナショナル・メディア・グループ」の傘下にあり、同一の取材ソースに基づいているとみられる。

現在、エルマコフ氏はインターポールの30日間の勾留命令に基づき拘束されており、ロシア政府はアルメニア政府に対し、領事面会の機会を提供するよう要求している。

ハッカーであるエルマコフ容疑者の身元特定には、オーストラリアの連邦警察などが18ヶ月におよぶ「アキーラ作戦(Operation Aquila)」を展開した経緯がある。オーストラリア政府が同容疑者のオンライン上のニックネームを公表したことで、民間セキュリティ企業のIntel 471が過去のフォーラムデータを分析し、同容疑者が「JimJones」や「SHTAZI」といったハンドルネームでマルウェア開発や販売を行っていた実態を突き止めていた。

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