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AWS ML Blog

米Intuit、Amazon Bedrockを活用した障害復旧AIエージェントを開発 属人化を解消し自然言語でのフェイルオーバーを実現

要点

  • 米Intuitが、AWSの生成AIサービス「Amazon Bedrock」を活用した障害復旧支援AIエージェント「EWOK Agent」のアーキテクチャを公開した。

  • 同社は既存の自動化基盤により復旧時間を約20分に短縮していたが、ワークフロー選定や例外対応などの意思決定が経験豊富な技術者の暗黙知に依存していた。

  • 「AIモデルが方針を判断し、エージェントが確定的な手順を実行する」という設計原則のもと、自然言語の指示から安全に復旧を実行する仕組みを構築した。

  • 社内の複数チームにおいて、過去8か月にわたり本番環境のフェイルオーバー運用に活用されている。

  • 米国の金融・会計ソフトウェア大手Intuit(インテュイット)が、Amazon Web Services(AWS)の生成AIプラットフォーム「Amazon Bedrock」を活用し、障害復旧(ディザスタリカバリ:DR)を自律的に支援するAIエージェント「EWOK Agent」を構築したことが明らかになった。AWS公式の技術ブログ「AWS ML Blog」が2026年9月4日付の記事で詳細を公開した。同エージェントはすでにIntuit社内の複数チームにおいて、過去8か月にわたりフェイルオーバー(障害時に予備系へ処理を切り替える仕組み)の実運用に利用されているという。

障害復旧基盤「EWOK」の成果と残されていた判断の属人化

Intuitは「TurboTax」や「QuickBooks」、「Mailchimp」、「Credit Karma」など、数百万規模のユーザーが利用する金融・ビジネス向けクラウドサービスを運営している。これらのサービスは数千のマイクロサービスで構成され、複数のAWSリージョンにまたがって展開されているため、大規模な障害復旧の調整は運用上の大きな課題となっていた。

同社はこれまで、社内の一元的な障害復旧基盤「EWOK(Ecosystem Wide Orchestrator Kit)」を運用してきた。EWOKは、サービス管理者が設定記述言語のYAMLで復旧方針を定義することで、コンピュート、データベース、ネットワーク、キャッシュ、非同期処理にわたるインフラ操作を自動化するシステムである。これにより、対象ワークロードの復旧時間を従来の数時間から約20分へと大幅に短縮していた。

しかし、EWOKが解決したのは復旧手順の「実行」であり、状況に応じた「意思決定」は自動化できていなかった。どの復旧ワークフローを選ぶか、対象リソースの準備状況の確認、復旧途中に発生する例外への対処などは、経験豊富なオンコールエンジニアの暗黙知(個人の経験や知識)に頼っていたという。例えば、確定申告シーズンなど重要期に設定される変更凍結期間(チェンジフリーズ:本番環境への変更を制限する期間)に復旧要求が発生した場合、処理が自動拒否されるため、担当エンジニアが緊急オーバーライド手順の詳細を把握していなければ復旧を進められない課題があった。

「AIが判断し、システムが実行する」EWOK Agentの設計思想

こうした意思決定の属人化を解消するために構築されたのが、Amazon Bedrockを組み込んだ「EWOK Agent」である。

EWOK Agentの設計において同社は、「AIモデルは何をすべきか(What)を判断し、EWOK Agentがどのように行うか(How)を決定論的(常に再現性のある確実な形)に実行する」という境界を厳格に維持している。障害復旧に関する手順やルールを「スキル」としてコード化し、薄いAmazon Bedrockレイヤーを通じて基盤モデルとスキルを接続する構成をとった。

これにより、エンジニアが「本番環境の決済ゲートウェイをフェイルオーバーして(failover payments-gateway in production)」といった自然言語で指示を入力すると、エージェントループが指示内容を解釈し、ポリシーに適合しているかを検証した上で、確定的な復旧処理へと変換して安全に実行する。

Amazon Bedrock採用の理由とセキュリティ要件

推論基盤としてAmazon Bedrockを採用した理由として、単一のAPI経由で多様な基盤モデルにアクセスできる点が挙げられている。これにより、エージェント全体の構造を変更することなく、障害復旧の推論に適したモデルの選定や、運用の変化に応じたモデル切り替えが可能となったという。

また、本番の金融システムを取り扱う上で不可欠なセキュリティとプライバシーの保護も採用の要因となった。「Amazon Bedrock Guardrails」による安全対策に加え、顧客データがモデルの追加学習に使用されないことや、通信時および保存時のデータ暗号化が保証されている。さらに、完全マネージド型サービスであるため、モデルインフラを自前で調達・管理することなく推論レイヤーをEWOK基盤の上に追加できたと説明している。

開発ポータルやIDEから直接操作可能なプラグイン提供

EWOK Agentはプラグイン形式で社内提供されている。エンジニアはIntuitの社内エンジニアリングポータルや、各自が普段利用している統合開発環境(IDE:コード編集やデバッグを行う開発環境)に直接インストールし、使い慣れた作業環境からフェイルオーバーを実行できる体制が整備されている。

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