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Anthropic Blog

米資産運用大手BAM、Anthropicの「Claude Fable 5」を実務導入 M&A分析などを大幅迅速化

要点

  • 約380億ドルの資産を運用する米Balyasny Asset Management(BAM)が、AnthropicのAIモデル「Claude Fable 5」の評価結果と実務導入の状況を公表した。

  • 数千件の実金融タスクを用いた社内検証で89.4%の達成率を記録し、従来モデルでは解けなかった高度な経済問題の解決にも成功した。

  • 合併アービトラージの初期分析業務では、従来3〜5日を要していた作業をエージェントが約30分で処理し、1日未満で完了可能になった。

  • 同社は独自開発した基盤「BAMAgent」上で数千のエージェントを常時稼働させる一方、最小権限や人間によるレビューなどの厳格な安全制御を敷いている。

  • 米大手マルチストラテジー投資会社のBalyasny Asset Management(BAM)が、Anthropicのフロンティアモデル「Claude Fable 5」の社内評価および運用状況を明らかにした。Anthropicの公式ブログに掲載された同社最高AI責任者(CAIO)チャーリー・フラナガン氏へのインタビューによると、数千件の実際の金融タスクを用いた検証を経て、自社開発のエージェント基盤「BAMAgent」を通じて投資業務の大幅な効率化を進めているという。

数千件の実業務タスクで検証、達成率89.4%を記録

BAMは約380億ドルの資産を運用し、約2,000名の投資専門家やスタッフを擁するグローバル投資会社だ。同社ではモデル選定において一般的なベンチマークテストや単発のデモに頼るのではなく、株式、マクロ経済、コモディティ(商品先物)などの検証可能な結果を持つ数千件の実際の金融タスクを用いてモデルを評価している。

評価ではモデル単体の性能だけでなく、ユーザーと同じツールやファイル環境を備えたエージェント実行環境下での動作も検証された。具体的には、作業計画の策定、適切なツールの選択と使用、証拠の収集と分析、エラーからの自己復旧、中間成果物のチェック、根拠のある最終成果物の生成といった一連の能力に加え、計算ミスや分析の抜け漏れなどの失敗パターンが検証された。

その結果、関連するタスク群においてClaude Fable 5は89.4%の達成率を記録し、従来の運用モデル(86.1%)を上回った。フラナガン氏によると、特に複雑な計画策定、高度な分析、エージェントとしての自律実行において優れた性能を示したという。また、これまでどのモデルも解くことができなかった一連の経済問題を初めて解決したことも明らかにした。同社では当初、これほどの性能向上を評価システムの不具合ではないかと疑い、タスクや採点ロジックを再確認し、Anthropicとも協議した上で結果が本物であると判断したとしている。現在、Fableはシステマティック運用(数理モデルに基づく運用)やコーディング作業の主力モデルとして活用されている。

M&A分析を3〜5日から1日未満に短縮、「実作業を担うAI」へ転換

フラナガン氏は、2026年におけるAI活用の変化について「検索を行うAIから、実際に業務を遂行するAIへの移行」と表現している。この変化を支えているのが、モデル自体の進化に加え、「Claude Code」をはじめとする実行ハーネス(AIモデルに外部ツールやファイルへのアクセス機能を持たせ、一連の作業を実行させる枠組み)の存在だ。プロンプトへの応答にとどまらず、求める成果物を指定すれば自律的に作業を継続できるようになった点が大きな転換点になったという。

具体的な事例として挙げられているのが、M&A(企業の合併・買収)に伴う価格差を狙って投資を行う「合併アービトラージ」の初期分析だ。案件が発表された際、エージェントが初期分析パッケージの作成を担う。取引の成立確率や完了までの所要期間の予測、法的な契約条件や経済的条件の抽出、前提条件やマイルストーンの特定、投資判断が必要な論点の洗い出しなどを一括して行う。

1年前の技術環境では作業が個別のツールや手作業に分断され、一連の工程を完遂できるエージェントは存在しなかった。従来は3〜5日を要していたこの分析業務が、現在はエージェントの約30分の実行によって生成され、人間によるレビューを経て1日未満で完了するようになったとしている。

独自基盤「BAMAgent」の運用と厳格なガバナンス

BAMではこうしたエージェント活用を組織全体で安全に行うため、社内プラットフォーム「BAMAgent」を6か月間にわたり開発し、運用している。同基盤上では現在、数千もの自律エージェントが24時間365日体制で稼働しているという。

BAMAgentは、従来のチャットツールのような情報要約の支援を超え、数時間から数日間にわたる複数ステップの調査や分析を並行して実行し、人間がレビュー可能な成果物を生成する。企業調査パッケージの構築や維持、決算発表やマクロ経済イベントへの準備、新たな市場材料に基づく財務シナリオの策定などを自律的に処理する。Fableはこの中で、作業の分解や証拠の選別といった重要な計画・分析フェーズの主力モデルとして位置づけられている。

一方でフラナガン氏は、エージェントの自律性が高まるほどガバナンスが不可欠になると強調している。同社ではAIモデル自体を制御機構とみなすのではなく、モデルの周囲に制御システムを構築する方針をとっている。承認されたデータ境界の設定、最小権限の原則(必要最小限の権限のみを付与するセキュリティ原則)の徹底、ツールごとのアクセス権限管理、監査ログと追跡性の確保、重要な成果物に対する人間の承認義務付け、異常時のエスカレーション経路などが導入されている。モデルの推論能力が高まったとしてもアクセス権限が自動的に広がることはなく、投資判断と最終的な説明責任はあくまで人間が保持する運用が維持されている。

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