米資産運用大手T. Rowe Price、投資プロセス全体へAnthropicのAI「Claude」の導入を拡大
要点
- 米資産運用大手のT. Rowe PriceとAnthropicは、投資組織全体においてAI「Claude」の活用を拡大すると発表した。
- ポートフォリオマネージャーやアナリストが「Claude」および「Claude Cowork」をリサーチに導入し、開発者は「Claude Code」で投資ツールを構築する。
- 活用分野は「リサーチ」「複数ステップのプロセス」「ツール構築」の3領域であり、調査のキャパシティを広げて分析や議論への集中を図る。
- 8月に策定したAIリーダーシップモデルに基づき、各事業部門が所有権を持ち、人間の判断と説明責任を中心とした体制で運用される。
- 包括的な人材育成や研修と並行して進められ、資産運用業界におけるAI活用の先導を目指す。
米大手グローバル資産運用会社のT. Rowe Price(ティー・ロウ・プライス)とAI開発企業のAnthropic(アンソロピック)は、現地時間2026年9月10日、T. Rowe Priceの投資組織全体においてAI「Claude」の導入を拡大したことを発表した。同社のポートフォリオマネージャーやアナリストがファンダメンタルズ調査にClaudeおよび「Claude Cowork」を活用するほか、開発者が「Claude Code」を用いて投資・運用業務を支援するツールの開発を進めているという。
導入の背景:アクティブ運用を支えるリサーチ体制の強化
T. Rowe Priceは、独自の調査に基づいて銘柄選定や投資判断を行うアクティブ運用の資産運用会社である。同社の運用判断は自社によるファンダメンタルズ調査(企業の財務状況や事業環境などの基礎的要因を評価する手法)を基盤としており、アナリストやポートフォリオマネージャーは日常的に膨大な量の情報を読み解き、自身の判断を適用して投資見解を導き出している。
今回のClaude導入は、こうした専門職に対して情報処理やリサーチ業務のキャパシティ(処理余力)をより多く提供することを目的としているという。
投資プロセスにおける3つの活用領域
発表によると、同社におけるClaudeの活用は、投資プロセスにおける以下の3つの領域を中心に展開されている。
- リサーチ(調査・分析)
投資のプロフェッショナルがClaude Coworkを活用して複雑な情報を集約・整理する。これにより、資料の確認作業にかかる時間を削減し、市場の分析や投資判断に関する議論により多くの時間を充当できるようにしている。 - 複数ステップのプロセス
一貫した品質と継続的な監視が求められる知識集約型のタスクにおいて、各チームがClaude Coworkと協働しながら一連の業務プロセスを進めている。 - ツール構築
社内の開発者がコーディング支援ツールであるClaude Codeを活用し、投資担当チームや運用業務チームを直接支援するための社内ツールを構築・改善している。
人間の判断を中心におくガバナンスと組織体制
今回のAI活用は、T. Rowe Priceが2026年8月に発表した「AIリーダーシップモデル」に沿って運用されている。この枠組みのもと、投資部門(Investments)およびグローバル・ディストリビューション部門(Global Distribution)の内部にそれぞれAIリーダーが配置されている。
さらに、同社のエンタープライズAIおよびデータ革新の拠点である「T. Rowe Price Labs」が、全社的なAIの評価と展開の拡大を担当している。構築される各アプリケーションは事業部門自身が所有し、同社が定める責任ある利用基準に基づいて統制される。これにより、最終的な顧客の成果に対して、常に人間の判断と説明責任が中心に位置づけられるよう設計されている。
「銘柄選定の現場」からのAI導入と今後の展望
今回の取り組みについて、Anthropicでアセット&ウェルス・マネジメント部門責任者を務めるPeter Nolan(ピーター・ノーラン)氏は、「大半のエンタープライズ向けAI導入はバックオフィス(後方事務)業務から始まるが、T. Rowe Priceは実際に銘柄選定を担う最前線の担当者から導入を開始した」と述べている。
また、T. Rowe Priceの社長、グローバル投資部門共同責任者兼最高投資責任者(CIO)を務めるEric Veiel(エリック・ヴェイエル)氏は、Claudeについて、同社がおよそ90年にわたり顧客に提供してきたリサーチプロセスを拡張するものだと説明。「Claudeにより、当社の投資プロフェッショナルはより広範な領域をカバーし、真に重要な事柄をより深く掘り下げることが可能になる」とコメントしている。
T. Rowe Priceは今後、研修や人材育成、責任ある利用に関するガイダンスの提供を組み合わせた包括的なAI推進策を継続する。従業員が人間の判断と顧客重視の姿勢を最優先に保ちながら、確信を持ってAIを活用できるよう支援していく方針だ。同社は、投資業務、企業運営、顧客サービスの全領域において、資産運用業界におけるAI活用の先導的な立場を確立することを目指している。